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患者数の人口数比化と定点観測・1

    厚労省のコロナ患者数報告は続きます。週ごとの都道府県患者数は、人口数比を保ち、似たような一桁数字は都道府県地図を埋め尽くし、患者数ゼロの都道府県は現われる気配がありません。人口数比化した患者数が当分続きそうですが、それでもコロナ衰退を確かに感じます。コロナ終焉は如何なる時と形で訪れるのかに関心は向かいます。

 本論の基調となる「定点観測」と「患者数が人口数比化」との定点数と平均患者数の関係を、一覧に供した表1を示します。前回に比べかなり変わりましたが、中味は少しずつ進歩しているつもりです。
 各項目の説明はキャプションに記しましたのでご覧頂ければ幸いです。

   表1:定点観測(B)と提言(A、C)に基づく定点数と平均患者数

*表1はエクセル表計算表をベースにし、最左上端がA!、最右下端がL50となります。
*”患者数”は、2024/2/19~2024/2/25の都道府県ホームページから求めたものです。
    *B平均患者数は患者数報告によるもので、B定点数は”患者数”をB平均患者数で徐したもの、
*A定点数は,患者数の人口数比化を前提にして、東京都定点数419を各都道府県に応分し、
*C定点数、平均患者数は、A定点総数3940を、5000に補正した方法と結果を示します。
  

平均患者数について

 初心に戻って、今日は表1赤字欄の定点観測の平均患者数を検討課題とします。平均患者数は、定点観測で使われ始め、現在でもその結果を表し、ネットや紙上で屡々見かけるフレーズになりました。当シリーズとしては、この平均なる文字に、日常的意味合いと統計学的意味の混在を感じていたのですが、整理せずに過ごして来た気がしています。
 今日は平均患者数について、当シリーズの見解を述べることになります。

 厚労省の患者数報告による平均患者数は、患者数を定点数で除した(=割った)ことを意味し、一週間に確認された一医療機関の感染者数の平均値なる説明を付け加えています。簡単な追加説明文の所為か、これで理解しろと言われても、説明をさらに説明してくれないと、正直なところ何を言いたいのかと理解に苦しみます。分かり易く説明するには統計学的な説明も必要で、避けたらなお分かりづらくなりそうな気がします。厚労省にしてみれば、一般向け報告に専門的な説明は必要ないとしたのかもしれません。
 
 当シリーズが理解する平均患者数について述べることになりますが、まずはその大基になる患者数の算定について述べます。
 異なる二つの現象の相関を求めるには、散布図グラフを利用する方法があります。散布図を理解して頂く例として、表1の都道府県人口数と”患者数”を引用し、相関関係を求めますと図1左となります。Y軸は患者数、X軸は人口数を表します。感染者数が人口数比化するとあれば、当シリーズとしては、引用例は両者の強い相関を期待していましたが、図1左の右方上がりプロットはその相関を推測することは可能ですが、期待したほどの相関度を表すものでないのに気づきます。原因は、図1左の東京都、大阪府、兵庫県の3患者数群の三連星の位置が、他の道府県の患者数群と明らかな異なっていることにあると推測されました。3都府県の患者数を補正した結果が図1右で、ほぼ期待通りの相関結果を示すものになりました。

         図1:都道府県の人口数と”患者数”

*左図患者数は、2024年8週目のもので、当シリーズが各都道府県のホームページから得たものです。

 厚労省の患者数報告は、図左を基にして定点数、患者数を求めていることになりますので、散布図を理解する例として挙げたつもりの図1左は、生憎と3都府県患者数の補正という重要な別問題を提起することになってしまいました。図1左右の違いは、定点数、平均患者数に影響することは必至ですから、両者併せて検討を進める以外にありません。3都府県患者数補正の詳細は後述します。         

 平均患者数は、患者数を定点数で除する(=割る)ことで得られます。厚労省による都道府県への定点数配分が、何を基準にしたものか不明ですが、厚労省唯一の報告である平均患者数で、2024/2/19~2024/2/25の”患者数”を除しますと、定点数は図2左となり、同定点数で”患者数”を除した平均患者数は図2右となります。定点数は図2左の如く、東京都、大阪府、兵庫県の定点数がばらつきを生み出しているのを示しています。それでも、図2左の平均患者数は白実線の水平化が示す平均患者数を認めます。但し、図2左を基にして、厚労省が図2右をどのようにして求めたのかの説明はありません。

   図2:図1左の”患者数”を基にしたB定点数と平均患者数

*左図のB定点数で、白実線の上方に東京都、大阪府、兵庫県が位置しているのにご注意。
*定点数は図1左を基にしたもので、白実線の上に位置する上記3都府県の位置に注目されます。

 平均患者数は、図2右が示すように、全都道府県の総平均患者数(中央の白実線)が人口数に拘わらず一定傾向の水平位となった時の、各都道府県患者数を表すものと思われます。総平均患者数を示す白実線は、時に左方上がり、あるいは右方上がりとなるのが”患者数”ですが、表1のB平均患者数値列は、総平均患者数が水平位となった時の各都道府県患者数を表すものと、当シリーズは理解しています。ということは、平均患者数なるものは、患者数を定点数で割った全てを意味するものではないことになります。患者数を定点数で除した平均患者数は、本来定点患者数として理解されるべきもので、図2右の如き白実線が水平位となった時の定点患者数が平均患者数と定義されていると、当シリーズは考えます。厚労省も、おそらく同じ見解ではなかろうかと推測しています。
 問題は、図2右で示される平均患者数は、図1左の補正されるべき3都府県を含めた患者数で成り立つ平均患者数であることです。

 別問題ながら、計らずして検討課題となった図1左の東京都、大阪府、兵庫県の患者数の補正について述べます。
 大阪府、兵庫県の患者数は、2021年3~4月、感染者数算定方法変更を自治体が報告しているのは広く知られています。けれども、図1左に見る東京都の位置について、この散布図を見るまで当シリーズも知らなかったことでした。迂闊だったという以外にありません。
 念のため、オープンデータ終了直前と直後の5ケ月間の東京都と神奈川県の患者数比を求めますと、オープンデータ直前の東京都:神奈川県=3573:2279だったのに対し、定点観測直後の同比は5.74:6.50なのです。感染状況に変化が生じてないのに患者数比は大きく逆転しているのは理解に苦しみます。東京都は患者数算定方法を、2023/5/9の定点観測を契機にして大阪府等に倣って変えたと推測する以外にありません。何故東京都は算定方法を変えたのかは、東京都が過去の大阪府同様に説明するべきことですが、厚労省がこの変更を承知していたのは当然と思われます。都のご都合次第による患者数算定方法変更に対し、厚労省は対応を周知せず黙認するのは当たり前なことなのでしょうか。

 補正は表1の人口数比1で行うことになりますが、その結果、東京都の”患者数”は2221→3750となり、大阪府と兵庫県の患者数は提言前ですが、同様の補正で1541→2452、1023→1583となります。その結果が図1右の患者数となり、それによる定点数と平均患者数を求めると図3となります。そして図3では、図2で得られたB平均患者数を表す白実線の水平位は、右方上がりに変わり、当然平均患者数も右方上がりであろうことを示しています。つまり、図2の白実線で得られた水平位(=平均患者数)は、問題である3都府県の補正以前の患者数によって得られた結果を示していることになります。

                 図3:3都府県患者数補正後の患者数と定点数

*図2で示された定点数のばらつきは解消され人口数と”患者数”に相関を認めますが、
*図2で示されたB定点数の水平位(=平均患者数)は右方上がりとなります。

 図3右の平均患者数に関しては、他の週間患者数による都道府県定点数もしくは患者数との比較検討が必要になりますが、報告義務のある平均患者数は記録保存されているでしょうけれど、患者数もしくは定点数が保存されているかは当シリーズは知る由もないのです。

 東京都の患者数算定法変更は、当シリーズをして Thou Too Tokyo と嘆かせ、それを厚労省も放置して認めたとあれば、日本国は一体どうなっているのかと思わざる得ません。
 定点観測なるものが有効であることは、経験的に確かめられているものと推測します。但し、元データが信頼に耐え得るものであることが定点観測には必要と推測します。当シリーズも初体験の感染状況判断手技ですから、未経験故に知らねばならぬことは山ほどあり、経験を重ねる必要を感じています。

 次回は、患者数が人口数比化した状況での平均患者数(=表1青文字欄と緑文字欄)について述べる予定です。

                   2024/7/1 精神科 木暮龍雄






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