盛夏の雑記

小学生の頃、インフルエンザの待機期間にお母さんが「non-no」を買ってきてくれた。
たぶん、わたしはそのとき初めて雑誌を手にしたと思う。
サーモンピンクのギンガムチェックワンピースを纏うモデルさんが雑誌の中で華やかに微笑む。
わたしは、素直にその薄い紙の上のキラキラ輝く世界に憧れた。

それから、関西ガールズスタイルとかチョキチョキガールズ(懐かしすぎる。)とか、もう少し経ってからはBRUTUSとかPOPEYEとか、relaxとか。あらゆる雑誌を集めては読んだ。

高校生ぐらいから、なんとなく雑誌の編集者に憧れ、まさかとは思いながらも心の中でずっと夢見た。でも就活の時、怖くて挑まぬまま諦めて、わたしは仲居になった。

そして今、校了を終えてキンキンに冷えたビール(ほんとは麦茶)を欲する夏がやってきた。
わたしは編集者になれた。いや、編集者にならせてもらった。

仲居を辞めてから、出版社へアルバイトへ行き、はじめは簡単な雑用をしたりして過ごしていたが、暑い夏がやってくる頃、はじめてページを持つことになった。

編集の仕事は想像の何十倍も大変で、終電で帰る日は酔っ払いのおじさんを見つめて涙を堪えたし(いや、泣いてたし)、休みの日は疲労で放心状態となった。
たかが、4ページ。誰かにとってはたった数秒で通り過ぎてしまうような、なんでもないページだが、されど4ページ。あらゆる方々に手伝ってもらったり、迷惑をかけながら駆け抜けた一ヶ月。

編集という仕事の、奥の深さにゾッとするが、「本をつくる」という骨折り仕事を目の当たりにし、「本」というものの価値がやっとわかる。

ひとつ夢が叶い、ほっとしている自分と、緊張に押しつぶされそうな自分が交互にくる。

グダっとした盆前の連休に、今の自分を整理してみると、そのありがたさに背筋がピンとする。
わたしを強くするのはいつだって「本」で、大好きな「雑誌」なのだ。
本が紙でなくても読めてしまう時代に、紙の本がなくならないのは、とっても尊いこと。

そんなことを考えているうちに、ビール(…ほんとは麦茶)はぬるくなり、夏が終わる。

また次の目標に向かって、悩んだり、笑ったりしながらわたしはわたしのペースで一生懸命やればいい。

まだまだ暑いから、どうぞご自愛くださいね。

PE

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