パイの実はいざ買うと食べない

夜が怖くて、暗闇に入ったらもう二度と出てこれない気がして、トイレの度に背中が丸まった祖父を手招き、ついて来てもらっていた。わたしが用をたし終えるまで、独特の調子でガラス戸を叩いてくれた祖父は耳が遠かったから、わたしがトイレから出てきたのに気づかずリズムを取り続けることもしばしばで、2人でよく笑いあった。小さかった頃の記憶。

一年に何度か、幽霊の存在を信じるときがある。この目で認めたことはないものの、“あの影に息を潜めていて、今にも飛びかかってくるんじゃないか”という疑念、“振り返ってすぐ後ろにいたらどうしよう”という恐怖。想像と現実とか混ざり合い、何が本当で何が嘘かわからなくなる感覚。部屋の軋みがポルターガイストのように思えて、心なしか部屋の四隅が他より暗い気がする。気がするだけだけど。

にしても、日本における幽霊のイメージは至ってシンプル、ワンパターンだ。肌が白い女性で、乱れた長髪、白いロングワンピース。テレビの心霊特集に出てくる幽霊は軒並みこれ。時代は変わりゆくが幽霊のビジュアルは昔も今もこのまま冷凍保存されている。しかしよく考えてみてほしいのは、男性だって幽霊になり得るし、髪型がショートカットの幽霊もいるはずである。せっかくのロングヘアなら、軽く櫛を通すだけでマシになる。幽霊に美意識はないとでも思っているのだろうか。ギャルはたとえ死んでも髪を巻き続ける。これは絶対だ。

今回のまとめ
・幽霊が存在するかは知らないが、いたら怖い
・もし幽霊になっても見た目にはこだわりたい
・夜は早く寝るべき

この時期、羽毛布団はまだ早いことを追記しておく。

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