写真10

ライブアートブックス × 田中チームの製本

皆様、はじめまして。 東京都板橋区にある箔押し印刷工房 有限会社コスモテックの前田瑠璃です。今回、加工を担当させていただきました。

コスモテックは今回、篠原紙工の篠原社長からお声をかけて頂き、 「 Print House Session 」 ライブアートブックス様 × 田中義久さんチームの制作で加工のお手伝いをさせて頂きました。

この度コスモテックでお手伝いさせていただいた加工は、箔押しの機械を使って、全ページロウ引き加工された印刷物を 『 加熱型押し 』 により、綴じるというものです。

今まで経験したことのない加工方法に、箔押し加工は 「 印刷加工 」 という意識がついてしまっていた私は、 「 製本 」 という別の加工も箔押しの機械でできてしまう可能性に衝撃を受け、ムクムクと挑戦欲がわいてきました。

そんな衝撃の加工方法は、箔材を使用せず金属製の版のみを使用します。
通常、 『 加熱型押し 』 と呼ばれる加工ですが、今回の加工物は全ページにあらかじめロウがしみ込ませてある 「 ロウ引き 」 という加工がされています。箔押し機でこのロウ引きされた紙の束に高温の熱と圧力をかけてプレスし、熱で溶けたロウが冷えて固まることでロウが接着剤となり冊子状に綴じられるという仕組みです。

加工の立ち会いを行う数日前に行なったテスト押しの段階ではなかなか上手に接着することができず、何度も何度も調整を加え実験を繰り返しました。限界ギリギリの圧力を加えていた矢先、パコンっ!というすごい音が… 「 あ、、やりすぎた。 」

恐る恐る取り出してみると版が紙を貫通し、背の部分が文字が読めないほどボロボロ状態に( ボロボロではあるものの紙同士がうまくくっつき、なんとか綴じることはできた )。

しかし、この通常 「 不良 」 とされるような、偶然できたやり過ぎた産物が、なんと本番でも採用していただけることに!

本番では田中義久さん、ライブアートブックス様の方々が加工に立ち会ってくださいました。
採用していただいたボロボロ案からさらに繰り出されるアイデアを形にすべく、押す位置、温度や圧の具合、圧をかけている時間、など試行錯誤を繰り返しました。最終的に、表面は冊子の背の真ん中部分のみをボロボロ表現にし、両端の文字は真ん中よりも圧力を弱めて適度に接着させ、裏面は表面で使用された文字を可読できるギリギリ程度の圧力で熱型押しする表現です。

特に難しかったのは、偶然にできたボロボロ具合を再現すること、そしてそのボロボロ表現を真ん中部分にのみ集中させ、両端の文字は適度に接着されている状態を均一的に継続させることです。

熱や圧力の調整だけでは真ん中のみをボロボロにすることはできないため、両端の文字の押し具合の状態も確認しながら、ボロボロにしたい真ん中部分の下に1枚1枚薄い紙を挟み込んで高さを出し、圧が強く集中するように調整します。そしてイメージ通りの仕上がりになるまでその調整を繰り返していきます。

また、加工ではかなりの圧力がかかっているため、繰り返し加工する中で土台にも影響が出てきます。徐々に土台が摩耗し凹みが変化すれば、仕上がりの品質も変わってしまうため、その都度土台の交換も行います。

こうして試行錯誤のすえ出来上がったのが今回の写真集です。

経験のない、予想もできない驚きの加工に挑戦できたこと、田中義久さん、ライブアートブックス様の方々からの驚きのアイデアを伺いながら作品を形にしていくことは、まさに"Session"! とても勉強になりました。この度はお手伝いさせていただき本当にありがとうございました!また、今回このような機会を与えて下さった、篠原紙工の篠原社長に改めて感謝申し上げます。

文 : 前田瑠璃( コスモテック )
写真 : コスモテック

コスモテックブログ : http://blog.livedoor.jp/cosmotech_no1/
コスモテックツイッター : https://twitter.com/cosmotech_no1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?