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ある清掃員の美しき日々

役所広司さんがカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞して話題になっている作品を観ました。ヴィム・ヴェンダース監督が渋谷区の公衆トイレの清掃員の日常を、ドキュメンタリーのように撮った『PERFECT DAYS』。寡黙な男の日々がとても豊かで美しく、感動しました。これは名作です。

PERFECT DAYS

朝起きて、空を見上げ、缶コーヒーを買って、渋谷の公衆トイレに向かう。車内で聞くのはカセットテープでアニマルズ「朝日のあたる家」。仕事場に着くと、黙々と手際よくトイレ内を掃除する。一ヵ所が終わるとまた次へ。昼食は小さな神社の境内で、パンと牛乳。帰宅すると銭湯へ行き、居酒屋でビール。夜は古本屋で買った本を読んで眠る。その繰り返し。

古本屋にて

ルーティンから外れない。必要ないから喋らない。孤高の哲学者のようなミニマルな生活。といっても人嫌いではなく、いつも優しい笑顔を絶やさない。そんな淡々とした彼の日常にも小さな出来事は起こる。しかし、さざ波に揺られようとも自分のスタイルは変えない。空を見上げ、木漏れ日を眺め、小さな幸せに満ち足りた現在の人生。ポスターに「こんな風に生きていけたら」とあるように、今を生きたい。しがらみから超越して。

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