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キース・へリングが戦ったもの

1958年にペンシルベニア州で生まれ、1990年エイズにより31歳で亡くなる。キース・へリングは1980年代のわずか10年ほどの活動期間だったが、NYを中心に世界のカルチャーシーンを牽引したスーパースターでした。彼がいちばん輝いていた時代を思い出させてくれる展覧会へ行ってきました。

兵庫県立美術館のキース・へリンゴグ展

彼の出世作はNYの地下鉄構内にあるポスター展示スペースの黒い空き枠に、チョークで描いたシリーズ。「アートはみんなのために」の信念で富裕層や知識人だけのものだった美術を、誰もが目にすることができる地下鉄構内やストリートに拡散したのです。そのおかげで現代のアート状況があります。

チョークで描いたサブウェイ・ドローイング 1981

明るくポップなイメージの裏に、社会への強いメッセージ込められているのも、彼の作品が持つ大きな特徴です。HIV・エイズへの偏見。人種やジェンダーに対する差別。世界の底流にある暴力。資本主義が生む格差。これらは40年前の社会課題かもしれないですが、今も強く心に響いてきます。

ウォーホールと資本主義をパロディにした「アンディ・マウス」1986

キース・へリングは芸術界の旧い体質やシステムと戦った。彼の言葉です。
「アートとは何か 何を意味しているのか それは永遠の議論
 アートの意味は アーティストのものじゃなくて
 それを見る人が感じるもの ある意味 鑑賞者もアーティストなんだ」

『スウィート・サタデー・ナイト』のための舞台セット 1985

キース・へリングは偏見、差別、暴力、不公平とアートの力で戦った。そして子どもたちに未来の希望を託しました。多くの人の目に触れるパブリックアートを世界数十ヵ所の都市で制作しましたが、主に小児病棟、孤児院、公園などを選んで設置。子どもたちがアートを身近に感じられるように。

みんなに親しまれている『イコンズ』1990

彼が生み出した代表的なキャラクターである赤ん坊や、吠える犬、天使などを、強い輪郭線と鮮明な色で表現した『イコンズ』は、象徴的な作品です。
「アートは不滅だ 人は死ぬ 僕だって死ぬ でも本当に死ぬわけじゃない
だって 僕のアートはみんなの中に生きているから」

キース・へリング展 アートをストリートへ
2024年4月27日(土)~6月27日(日)
兵庫県立美術館

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