昔作った怪文書2

半世紀もの付き合いだった私の妻が他界した
急だった

ちょっと前までは家事もして、ご飯を作って、近所のおばさん達とも楽しくおしゃべりもしていた

「母さん、母さん」と呼んでも動かなかった
冷たくなっていた

・・老衰だった
あんなに元気だっただけに信じられなかった
体が弱っているのを隠していたのだ

息子はずっと前に家を出て、二人暮らしだったにも関わらず家事も任せっきりだったせいなのか

昔からそうだった、妻は家事を手伝えと文句は言うが、ほっとけば結局全部やってくれる妻だった

そんな自分に長い長い時間隣にいてくれた

隣にいたのに

妻に自分は何もしてやれなかった
いや、してやらなかった
できなかったまま、
いややらなかったまま全てが終わってしまった

うつむいて涙を流し、母さんを呼び続ける息子をよそに
不思議なことに自分は涙は出なかった

自身の半分、いや魂のほとんどをあの世に吸われてしまったような 枯れ果てた抜け殻のような そんな状態だった

笑顔が消えた
どうしていいか分からなかった
後を追うべきなのかと思った

そんなときだ
街を歩いていたら、声をかけられた
なんとスカウトをしているという、ここは都会でもない 平凡な街
正直うさんくさいと思ったが

どうせ先は短いのだ、少し付き合ってやるかと話を聞くことにした どうやらサムソンビデオという会社に勤務していてドラマの出演者を探しているらしい

詐欺の類いには思えなかったので暇は潰せるかと思いやってみることにした

これが老い先短い人生を大きく変えた

初めての撮影にて
「うん~~…最初はやっぱり痛かったですけど、だんだんと…気持ちよくなってきて…今では『入れてほしいな』って思うようになりました。」

「いや、その経験はない…ですけど一回だけトコロテンしたことあるかなぁ。」

「あっ、ウケやってる時は相手の方が、気持ちよくなってくれれば…満足です」

「えっと、会社…の同僚に襲われて、初めてフェラさせられて…。」


・・楽しかった
先立たれて以来こんなに笑顔になれたのは初めてだ
昔の経験が今に活きているのだ
死ぬまでこの仕事をやろうと決めた

妻も本望だろう

それ以来私は数百を超えるビデオに出演した
数千を超える射精をした

ウレシイ...ウレシイ...と妻の墓前に報告できる日がくるとは思わなかった

妻にわずかながら恩返しができた
遅すぎる しかし これも一つの恩返しの形なのかもしれない

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