國學院大學文学部史学科総合型選抜小論文予想問題
次の文章A・Bは、農村の階層分化や百姓一揆に関する文章の一部である。この文章の概要を全体で三〇〇字程度にまとめ、あなたの考えを二〇〇字程度にまとめなさい。(全体で五〇〇字を超えないこと。)
A「すべて村内にても、上田といへるよき地所はみな福有等が所持となり、下田にして実入り悪しき地所のみ所持いたし、また国所によりて、その地所に従来付き来たる所の石高を差引いたし、外へ譲る田畑へは高を少し付けて直段よく売り渡し、その高をあとに残す地所へ課して所持する故、福有なるものはひたものよき地所を高少なくして買ひ取り、困窮人悪田に多分の高を負ひて、年貢も格外に出だし、諸役も余分に勤むる故に、損に損を重ぬるなり。またその悪田をも取り失ひし族は小作のみを致し、高持百姓の下に付きて稼ぎ尽し、作りたる米はみな地主へ納むれば、その身は秕籾・糟糠・藁のみ得て、年中頭の上がる瀬なく、息を継ぐ間さへ得ざるなり。依つて盛んなるものは次第に栄えておひおひ田地を取り込み、次男三男をも分家いたし、いづれも大造に構へ、また衰へたるは次第に衰へて田地に離れ、居屋敷を売り、あるいは老若男女散々になりて困窮に沈み果つるなり。当世かくの如く貧福偏り勝劣甚だしく出来て、有徳人一人あればその辺に困窮の百姓二十人も三十人も出来、たとへば大木の傍に草木の生ひ立ちかぬる如く、大家の傍らには百姓も野立ちかね、自然と福有の威に吸ひ取られ、困窮のものあまた出来るなり。福有はその大勢の徳分を吸ひ取りて一人の結構となし、右の如く栄花を尽し、あるいは他所までも財宝を費える程の猶予出来るなり。…百姓の一揆徒党など発る場所は、極めて右体の福有人と困窮人と偏りたるなり。百姓の騒動するは、領主・地頭の責め誣いたぐる事のみにはあるべからず。必ずその土地に有余のものあつて、大勢の小前を貪るゆゑ、苦痛に迫りて一揆など企つるなり。」
(武陽隠士『世事見聞録』より)
B 「百姓町人、大勢徒党して、強訴濫放する事は、昔は治平の世には、おさおさ承り及ばぬ事也。近世に成りても、先年はいと稀なる事なりしに、近年は所々にこれ有て、めずらしからぬ事になれり。これ武士にあづからず、畢竟百姓町人の事なれば、何程の事にもあらず。小事なるには、似たれども、小事にあらず、甚大切の事也。いづれも困窮に迫りて、せんかたなきより起るとはいへ共、詮ずる所、上を恐れざるより起れり。下民の上を恐れざるは、乱の本にて、甚容易ならざる事にて、先づ第一、その領主の耻辱、是に過らるはなし。されば、仮令聊の事にもせよ、此筋あらば、其のおこる所の本を、委細に能々吟味して、是非を糺し、下の非あらば、其の張本の僕を、重く刑し給ふべきは、勿論の事、又上の非あらば、其の非を行へる役人を、おもく罰し給ふべき也。抑々此事の起るを考るに、いづれ下の非はなくして、皆上の非なるより起れり。今の世、百姓町人の心もあしく成りたりとはいへども、能々堪へがたきに至らざれば此事はおこる物にあらず。…然るに近年此事の所々に多きは、他国は例を聞て、いよいよ百姓の心も動き、又役人の取りはからひもいよいよ非なることも多く、困窮も甚だしきが故に、一致しやすきなるべし。…近年たやすく一致し、固まりて此事の起りやすきは、畢竟これ人為にはあらず、上たる人、深く遠慮をめぐらさるべき也。然りとて、いか程おこらぬようのかねての防ぎ、工夫をなすとも、末をふせぐ計にては止がたかるべし。兎角その因て起る本を直さずばあるべからず。基本を直すといふは、非理の計ひをやめて、民をいたはる是也。仮令いか程困窮はしても、上の計ひだによろしければ、この事は起るものにあらず。…さて又近来此騒動多きにきて、其時の上よりのあしらひも、やゝきびしく成て、もし手ごはければ、飛道具などをも用ふる事になれり。これによりて下よりのかまへも、又先年とは事長じて、或は竹槍などをもち、飛道具などをも持出でて、惣体のふるまひ次第に増長する様子也。」
(本居宣長『秘本玉くしげ』より)
【答案】
(1)
問題前半について、文章Aは、農村の階層分化による格差の実態を述べている。すなわち、富農が良田を独占し地主が田を集積する一方、一般農民は悪
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