寝たフリのファーストキス

 初めての恋人と、
初めてキスした時、
あの時は、

「観覧車乗る?」と
言われたその時点から、
そうなるんだろうなと直感していて

でも、だからと言って
観覧車に乗ったはいいものの、
経験もないものだから
どうすればいいかわからなくて、

どんな顔していれば
いいのかもわからなくて

どうしておけば、
変な感じにならないのか
(そうなのだろうと察して待ってる、
みたいなのもちょっと恥ずかしくて)

全然わからなくて、
まして、はじめて男性と、
男性として恋人として手を繋いだ日で、

全然わからないけど、
観覧車だもん、きっとそうだよな、
たぶん、キスするよね
くらいの察しは、
鈍感な私にも一応あって、

結局わたしは、
ちょっとうたた寝したフリをした。

観覧車に乗って、てっぺん近くまでは
景色に没頭しているようにして
そのまま反対側の席で景色を見ている
彼を確認してから彼に背を向けた状態で
スッと目を閉じた。

彼が横に来たのも気づいてて
「ゆかまる
(実際は本名だけど)ちゃん?
寝ちゃった?」と
呟いたのもしっかり耳に届いていて

でも、絶対今目を開けちゃいけない、
と思っていた。

目閉じてしまったタイミングで
今開いたらきっとうまくいかなくなる
多分、そうだもん。

 想定していた通り、彼が
眠っている(フリをしている)私に
キスして、
 わたしはそのタイミングで目を開けて
恥ずかしそうに笑った。
(いや実際テレてはいたのだけど)

 
 これが、ファーストキスの思い出。

なんとなくそうなんだろうという
流れを察していながら
初めての彼だったから、
 その察しが違ったら嫌だなという
気持ちもあったし、
 察していることに気づかれてはいけないと思っていたし、
 それに、、、

 わたしは、その彼が、
「まだ元カノに未練がある。
 彼女のことが好きだけど
忘れたいから付き合って欲しい」
と言って告白してきたのを了承して
付き合い始めたから。

そして、そのファーストキスは、
付き合い始めて2週間経たずに
きたから。

 私が付き合い始めた時には
すでに彼のことを、
もう1年くらい、好きだったけれど

「前の彼女を忘れるために私と
付き合うのだから忘れたらきっと
捨てられる。だから踏み込みすぎない」

 告白された時に心に決めていた。

だからこその、
初めての恋人、初めてのキスだったのに
謎に演出できたのかもしれない。

 今考えればあれが
恋愛における諸悪の根源で、
自分自身でそれを作ってしまったのだ
と思う。

 初めてベッドを共にした人も、
その人だった。

 私は、今もお胸が小さいけれど
その当時は今より2カップくらい
小さくて、
(思春期に伸びたのは身長だけで、
生理もまともにくるようになったのは
24〜25歳で、お胸も
大きくなり始めたのは24歳くらいで、
それとストレスですぐ萎む)

男の人は、
お胸が大きい方がお好みの方が
多い?のも認知していて、
たぶんに漏れず彼もそうで


今だったら、もう少し
上手く立ち回るけど、
今ほどまだ私は強くなかったから
とにかく自信もなかったし、
それに恋人となると一気にわたしは
言いたいことや文句を言えなくなる。
(これは今も変わらない)

それで、そもそも、その彼には
「この人は私じゃない子が好きで、
その子のことを
忘れるために私と付き合っていて、
わたしは、
そういう思いでいる彼のことも
丸ごと好きにならないと
彼を好き、とは言えないんだ」

と謎の使命感を持っていて

だから、彼の考えや想いも
すべてを抱擁しようとしていた。
まだハタチだったのに。

でも、そううまくはいかない。
あんなに、彼と付き合っても、
踏み込みすぎないと決めていたのに、
デートを重ねて、
夜を共にすることになって、ついに
いろんなことが不安になった。

カラダが成熟してないことも
前の彼女のことを想っていることも
いつか捨てられるんだと
わかってることもそして、
はじめて、だったということも。

全部が相まって、彼に触れられた時、
彼が入ってくる時、
身体に力が入ったことだけは、
すごく覚えている。

 そう思った時すぐに
「怖い?」と聞かれた。

 その時は初めてだったから、
ああ、これは確かに、怖い、
という感情なのかもしれないと思って
「うん。」とこたえた。


その後、

 その彼と付き合っている間に、
色々とあった。
 ストーカーはネトストと
直スト合わせて、
同時期に7人ほどいたり
夜道じゃなくても知らない男の人に
声かけられたり追いかけられたり、
キャッチにもよく捕まったし、
だから変な宗教から、
モデルスカウト事務所とかいう人から
本当にただ「お茶しようよ」という人からよくわからないけど、
無駄に"モテ”た(=ナメられていた
という意味であって決して
良いことではない)

決して嬉しくないし、
今なら自分はどれだけ
ぼーっと歩いているのだ、と思う。

そして、
その時期はそれらの人とは別に
告白されることも多かったし、
しかも告白が重なった時
ちょうど付き合っている彼が忙しくて
私は私で就活に必死だった時期で
2人がすれ違っていた時で、

その、「好きだ」と言ってくる人に
襲われかけたり、
最寄駅から家までの道中で
追いかけられたり、

本当に色々あった。

(この話はもう完全に過去で、
書いても話しても何も思わないし、
顔も出てこないから書くことにした)

 そんなこんなの間に、
彼とはすれ違いすぎて
でも上手に頼れず甘えられず話せず
彼に全てをぶちまけたときには
重い、と言われ、
どうして頼ってくれないの?
と言われて結局は
別れることとなった。

 その後も色々あった。



本当に色々あって、時が流れて
間に別の人も少し付き合って
その初めての彼から5年経って私は
また別の人とお付き合いをした。

テキーラなどを飲んだ酔った勢いで、
初めて出会った日に、
その出会った彼に
過去のトラウマとか、
それでちょっと恋愛にも
臆病になっていることをぽろっと
溢してしまっていた。
(うん、お酒の勢いで
話してしまうなら
お酒は飲まないほうがいい。)

それに、キスだって全然初めて
じゃないから、だからその彼と
初めてキスしたときは
私が少し、緊張していたくらいで
でも、怖い感情はなかった。

そう、怖い、
という感情はなかったけれど、
久しぶりの恋愛だというのもあって
緊張していたのだと思う。

緊張で力が入ったのか
震えていたらしい。

でも、自分でも緊張していることも、
震えていることも、
気付いていなかった。

 だから、彼に初めてキスされたとき
その過去の話をきっと気遣ってくれて「怖い?」と聞かれた。



「怖くはないよ」と私は答えて、
「でも、震えてるよ。
無理しなくていいよ」と言われた。

そしてその時私は、
 しまった、うまく、
スムースに運べなかったかも…と
思った。

当時25歳も終わりの方。
もっと上手な運びを想定していた。

 震えてるよと言われた、
そうか、怖いと思っているのかしら…

そんな風に思っている間の、
微妙な間と、怖い?と
彼が聞いた直後から
すぐに気を遣ってか
私に触れなくなったことに、
寂しさと苦しさが混ざり合って
私は焦った。

なんで怖いと思ってるのか、
言葉に出した方がいいかな…
これ、このまま黙ってたら、
彼に遠慮される?
なんとなくそんな感じがして
逡巡した挙句、私は彼に

かいつまんでだが
過去の恋愛や
ストーカーなどを話すことにした。
(今考えるとこれもタイミングを
間違えている)
(はぁ…どれだけ
不器用でアホなんだか…)


彼には少し話しすぎた。

 初めての恋人の時、
相手は私のこと好きじゃないのに、
私と付き合っていたから、
いつ振られるのか
ずっと怖かったこと、それで
様子をいつも伺っていたこと。

そのあと、ストーカーや痴漢や
それに付随するような経験がいくつか
あったこと。

もう思い出す、ほどじゃないけれど
でも、それが消えたわけでもなくて。


こういうのを言わなくていいと
わかっていたけど後から

「けがれてる」と思われたくないこと

好きな人と、ちゃんと
お互い好きだとわかった状態で
付き合えた事がないから、

今まで自分が好きな人が
自分を好きになったことはないから、

もうその段階から、本当は
恋愛が全部怖いということ、
嫌われたくないこと。。。

とにかく嫌われるのが怖いこと。

彼が歳上なのをいいことに、
いいやと思って、私は甘えて
ずいぶんと話した気がする。

他にも、

 「甘えそうな女の子」とか
「甘えて可愛い」って顔のつくりでも、表向きのキャラも、
そういう感じでもないから、
お酒を飲んで酔った時か、

頭の中の甘えるスイッチを入れないと
そういう可愛い甘え方ができないこと、

逆にスイッチを入れれば誰にだって
甘えようと思えばできるだろうこと。

 一度その人に甘えられるようになると
甘えた顔以外の時はどう接していいか
わからなくなるということ、

 なんか、色々話した気がする。

ずいぶんと話し過ぎた。

 本当は、甘えたい気持ちも、
そうじゃない時の私も、そのままに
生きていたいこと。

 彼は、それをそのまま、
受け入れてくれていた(と思う…?)

 それで、「素のままで、そのままで
無理したりつくったりしないでね」

と言ってくれた。(そのときは。)

 実際、その彼と付き合っている間に
今までにないほど
素の状態を出せていた(と思う)

はじめの頃は。

 でもそれが仇だったのかもしれない。

素を少し出せるようになったことで、
彼にだけは、甘えているときの自分、
みたいなものを出せるようになって、

彼にばかり甘えて、

そして、逆にだんだんと、

甘えていない時の自分、
仕事をしている時の自分、
本当はかなりタイトスケジュールのなか
頑張っている自分、
病気して体調を崩していて、
でもいわゆる恋愛的な甘え方じゃない
頼りたい自分

そういう素のわたしは全部、
彼にだけ見せられなくなった。

甘えてる部分だけ、
寄り掛かりたい部分だけが
彼と接している私、だった。

そして誰にも言えなくなっていった。

どういう風に、彼に
そういう別の部分を出していいのか
わからなかった。


さらに、

 彼は歳上で、彼は正社員で
私は年下で、アルバイトで、

 そういう、
自信のなさもあいまった。

それに、彼は物知りで、
いろんなことを知っていて、
私の知らないことも知っていて
(客観的に考えれば、
歳上で、お互い別の大学院だけど、
専門でやってきたことがあって、
彼はもう就職して4年目になるのだし
私と育ってきた環境も違うのだから、
彼が知っていることを私が知らなかったとしてそれだけで、彼が上、彼はすごいというのもどうか、とおもうのだが)

とにかく私はもともと、
自分は頭良くない、という自覚だけは
とてもあって、だから、
知識豊富な彼には、届かない。
いつも少し下がったところにいた、、

 甘えるのも、頼るのも下手すぎるな

アラサーになってきてこんなん、
痛いな、今なら自分でも思う。

 直近で付き合っていた彼のおかげで
エッチも怖くなくなったし、
過去のストーカー等のことも
頭から消えたし、
20代前半より素の自分で
いられるようになった。

もう、初めてのキスをするとなっても
そんな、目を瞑って寝た振りをして
なんて小細工考えなくても、
多分、自然にできるようになったし、

エッチ自体が好きなことも、
甘えたいんだ、ということも
うまく伝わっているかは別として
口には出せるようになった。

あとは、無駄に相手が忙しいだとか、
私より相手の方が大変だとか、
私は頑張らなきゃ愛されなくなるとか

そういう、自己肯定感の低さからくる
自分を安くしてしまう
気持ちをなくすこと、なのかもしれない。

 


小さい頃から
あまり家族にも友人にも、
自分を主張してこなかったし、
これが嫌とか、これはやめてほしいと
言えないまま30に近づいた。

 怒るとかキレる、とか
そういう感情をあまり
経験しないできた私は、
イライラすることや
感情的になることはあっても、


嫌なことをされたり、
嫌なことを言われたり、
とにかく負の感情は
涙でしか表現できない。

自分がもう本当に無理になって
抱えきれなくなって
爆発するまで怒りも悲しさも
嫌だと思っていることも
自覚できない。

これは嫌だとか
こうして欲しくないとかも
言えずにきた。

今までずっとそうだった。

 だから、きっと、歳上の彼には、
言いたいことを言ってみたい、
ベタベタに甘えるような顔してないのも
わかっているけど甘えたい時は
甘えたい。そう思っていた。


けれど、結局うまく
ぶつけられなかったのかもしれない。

 結果、彼に限らず、主張しない、
嫌と言わないことで、
大切にしてほしい人に大切に
されなくなるという経験を
繰り返し、大切にしてくれない人と、
関係を切れずにきたと思う。

 そして結局、自尊心のなさが、
不安となり、相手にさらに
尊重されなくなり、
だんだんどうでも
良いと思われるのだろう。

 本当は、
無理して合わせるようになっていても、
自分が大変な時でも、

 平気な顔をしようと努めて、
嫌だと言わずに、寛容に…となった。

彼とあっていないときに、
どんなにきつい状況になっていても、
話さない、言わない、
上手に甘えることも頼ることも、
できないまま、

いつだって、
彼の方が忙しいだろう、
と思うようになった。

やっと、彼を頼りたいなと思う頃には
もう心がくたくたで、急に甘えだすと
「自分のやることちゃんとやりなよ」
と言われて甘えられなくなる。
そして、それでも大丈夫といって
気を張っていると重いと思われる。

初めての彼氏から5年以上経って、
結局私は、人と形を変えて
おんなじような恋愛を繰り返して、
自分で自分を追い込んでいるな、

と思った。

くだらないな、私。。。

20代後半にもなったら、
キスする時くらいあんな小細工せずに
甘えるようになったけれど、

 観覧車に乗ったとき、
いま目瞑った方がキスするの
スムーズかな、と思った20歳の私は、

形を変えて遠慮と甘えを行き来して
結局今も同じようなことを繰り返して
最終的には自分を抑え込みすぎて
ダメになってゆく。

次に、恋愛するときは、
いやその前に友人や家族にも、


察してちょっと演じるとか、
我慢するとか、
気を張りすぎて思い詰めている
あの緊張の糸のようなものが、
ピーンと常に張っているとか、

しないで生きてみたいな……

そんな風におもった。

それから、同じ世代の皆は、
いや年下の世代の皆だって
しっかり一人前に生きている。

半人前以下の私は、やはり、
社会的に立ってゆくために、
自分の感情に、自分の気持ちに、
想いにもう少し敏感にならなくては
いけない。

#くだらない恋愛話

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