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細胞の応答

細胞の応答
細胞レベルでみた場合、病気によって起きる変化は5つしかないという話を前々回書きました。5つのそれぞれをこれからお話しすることとなるわけですが、今日まで準備が続きます。今回はストレスや刺激に対する細胞の応答について話をしましょう。

細胞が集まって一定の働きをするようになったものを組織といいます。細胞だけで話をするよりも、それよりちょっと大きい組織という単位で捉えた方が考えやすいことがあるので、細胞と組織という言葉を知っておいてください。

病気というのは、細胞にストレスや刺激が加わることです。ストレスに対して細胞は色々な応答をします。そして、その応答は細胞や組織の形の変化として現れます。細胞というのは基本的にはがんばり屋です。何かあるとまずはそれに必死で対応して、平和を維持しようとします。なんとも健気です。平和維持の仕方には4つあります。それは、肥大過形成萎縮化生です。イメージで理解しましょう。

左上に向かう矢印、これが肥大です。細胞が大きくなっていますね。肥大とは1個1個の細胞が大きくなることです。右上に向かう矢印、これが過形成です。過形成とは細胞の数が増えることです。左下に向かう矢印、これが萎縮です。萎縮とは細胞が小さくなり、数も減ることです。右下に向かう矢印、これが化生です。ちょっと理解しづらいかもしれませんが、細胞自体が変化しています。ふつう、組織はいったん成熟すると一生その姿のままですが、ストレスが持続すると自分の姿を変えて別の組織に変化し、ストレスに対応しようとします。この現象を化生といいます。

でも、がんばってもどうしようもない場合がありますね。そのようなときはどうなるか。残念ながら細胞は死んでしまいます。これを細胞死といいます。細胞死には2種類あって、ネクローシスアポトーシスに分けられます。イメージはこんな風です。

ネクローシスは核がちぎれたり、細胞自体が破裂したりして、中のものが外にどんどん飛び出します。周りにも迷惑がかかります。周囲にどんどんダメージが波及していきます。派手な死に方です。もうひとつの死に方がアポトーシスです。細胞が小さくなっていますね。そして、核がすごく濃くなっています。アポトーシスは大人しい死に方です。周りに迷惑をかけずにひっそりと死んでいきます。これはがんなどの場合に起こります。がんになってしまった細胞はひっそりと自分だけの孤独な死を選びます。僕らの身体の中では、実は日に何万という数のがん細胞ができているのですが、アポトーシスによって、大きいがんにならないうちにひっそりと細胞は死んでいるのです。

死んだ後はどうなるでしょう。そのままでしょうか。いやいや、そんなことはありません。新しい細胞が生み出され、そこには再びもとと同じ組織が作られます。これが再生です。しかし、あまりにもダメージが大きいとどうしても元通りにはならない場合もあります。元通りにできないときはしょうがないので、線維芽(せんいが)細胞という細胞がどんどん集まってきて、線維組織でそこを埋めます。これを線維化といいます。

以上が病気に対する細胞の応答です。すべての段階で形の変化が現れます。したがって、細胞や組織の形を見れば、今どの段階にいるのかがわかります。そして、それは病気の進行具合を反映したものとなるはずです。また、この応答は病気の種類や身体の部位によりません。だから、身体のどこの病気であっても、同じような変化をみることができます。

簡単にまとめておきます。
病気によって、細胞にストレスがかかると、細胞は基本的にがんばる。ストレスにどうしても勝てない場合は、細胞死に陥いる。その後は、細胞や組織が再生し元にもどるが、できない場合は線維化が生じる。これは病気の種類や身体の部位によらない普遍的な応答様式である。


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