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炎症①

炎症 その1
細胞レベルでみたとき、病気によって起こる変化は5つしかないと言いました。もう一度、その5つをここに書いておきます。

① 炎症・免疫、② 循環障害、③ 代謝障害、④ 先天異常(奇形)、⑤ 腫瘍

前回は、これらの変化に対して、細胞や組織がどのように応答するのかを話しました。今日からいよいよ病気による変化をみていきましょう。まずは炎症・免疫のお話をしていきます。炎症は日常生活でも比較的なじみがあるものですね。たとえば、蚊に刺されてぷくっと腫れた。あれが炎症です。見た目の変化もわかりやすいので、大昔から炎症については、よく調べられています。炎症には有名な4徴というのがあります。発赤・腫脹・熱感・疼痛をいいます。これもよくわかりますね。「赤く、ぷくっと膨れて、熱をもって、かゆくなったり痛くなったり」すると、そこに炎症が起こっているのだなということがわかります。

炎症・免疫とひとくくりにしてあるように、これらは切っても切り離せないものです。免疫とは、体内に生じた有害因子を無害化する反応ですが、この結果として生じるのが炎症です。
炎症とは、免疫によって細胞レベルに現れる変化といってもよいでしょう。

有害因子には、病原微生物(細菌、ウイルス、寄生虫など)、物理的因子(熱いものに触れた、感電したなど)、化学的因子(薬品に触れた、ムカデに噛まれたなど)、アレルギー(花粉症、アナフィラキシーなど)があります。しかし、原因が何であれ、体内で起こる変化は同じです。その仕組みを話す前に、炎症反応の担い手たちを紹介しましょう。それらは炎症細胞と呼ばれています。

まずは、好中球。炎症の最初に出現する細胞です。病原菌や壊死した物質などを貪食します。細菌感染では特に活躍します。

次は好酸球。アレルギー反応や寄生虫感染で出現します。

3番目は、肥満細胞。炎症性化学物質(ケミカルメディエーター)であるヒスタミンなどを放出します。血中のものは好塩基球とも呼ばれます。

4番目は、リンパ球。ウイルス感染や長引く炎症のときに出てくる細胞です。

5番目は、形質細胞。リンパ球の一種であるBリンパ球がさらに変化してできます。抗体という物質を作ります

6番目は、マクロファージ。組織球とも呼ばれる場合があります。好中球と同じで貪食を活発に行いますが、それに加え、Tリンパ球というリンパ球に抗原提示を行い、免疫の発動に関係します。

7番目は、巨細胞。マクロファージが融合したもので、肉芽腫(にくげしゅ)というものの形成に関係しています。

病理診断の際には、提出された組織を顕微鏡でみて、これらの細胞がいるかいないかを確かめることは重要です。好中球がいれば、いままさにこの組織は炎症が出現した初期段階なのだなということがわかりますし、好酸球がたくさんいれば、アレルギー反応が起きているのではないかと推測できます。これらの細胞は多くの情報を病理医に教えてくれます。

次回は、炎症のプロセスと種類についてお話します。

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