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病理医を探しに

さて、まずは病理医を探しに行きましょう。病理医はどこにいるでしょうか。

ほぼすべての病院には医局という部屋があります。大学病院であれば、「白い巨塔」と言われる一大組織のイメージですね。民間病院では、よほどの大病院でないかぎり、医局はとてもほのぼのした空間です。束の間の休憩に、仮眠をしている医師もいれば、ネットサーフィンをしている医師もいます。食事をとっている医師もいれば、雑談だってしています。要は、病棟とは別の場所に医師専用の半私的な空間が病院にはあるわけです。そこには、病院に所属する全医師のデスクが用意されています。

では、医局を訪問すれば病理医に会えるでしょうか。まあ、会えるかもしれません。しかし、その確率はかなり低いでしょう。病理医が医局にいることはほとんどないからです。

実は、病理医には病理医室という全く別の空間も用意されていて、病理医は一日の98%くらいをそこで過ごしています。病理医室というのは、病理医のための顕微鏡、パソコン、電子カルテ、各種専門書が用意された特別な部屋です。病理医はここで診断をしたり、臨床医からの質問に答えたり、調べ物をしたりします。ここには病理医に必要なすべてが揃っています。病理医はここでないと仕事ができないのです。

そういうわけで病理医が医局にいることは滅多にありません。もちろん書類を取りに行ったり、色んな事務手続きをしにいったりすることはあります。ありますが、それはほんの少しの時間です。

だから、病理医の医局のデスクは時折、他の先生に占領されていることがあります。物置と化していたりもします。デスクの両隣の先生の荷物がどんどん増えて、ちょうど真ん中あたりで勢力の均衡を保っているときもあります。悪気があってしているわけではありません。みんな忙しいので、色んな荷物とか本とかをゆっくりと整理する時間が惜しいのです。隣の人いないし、ちょっとだけ置かせてもらおうって感じです。いいですよ。どんどん置いてもらって構いません。

もうひとつ部屋があるからね。

病理医室には結構人が出入りします。多くは臨床医です。気になる病変の説明がもっと詳しく聞きたい。レポートのこの言い回しがよくわからないから直接見ながら説明してほしい。学会で発表するので写真撮影をお願いしたい、などなど。みんなとても勉強熱心です。すごい熱量です。臨床医とのディスカッション、そう、これこそ病理医の醍醐味の一つですね。これについては、また、別の機会に詳しく話します。

他にも検査技師さんがやってきます。「切り出し」のときとか、「迅速」のときとか呼びにきてくれます。「細胞診」の気になるやつを一緒に見たりもします。「切り出し」、「迅速」、「細胞診」これもよくわからない言葉ですね。そのうち話しますからね。

つまるところ、病理医室はかなりオープンな空間で、お客さんがふらっと立ち寄るカフェみたいな感じです。そこでお客さんの対応をするのが大事な仕事です。病理医は決して病理医室にひっそりとこもってじーっと顕微鏡をみているだけではありません。顕微鏡を見ながらも、お客さんがくれば必ず気軽に対応します。

ただし、病理医室は一般の方が立ち寄れる場所にはないかもしれません。立ち入り禁止区域になってる場所のこともあります。なにせ検査室とか病理室って危険な薬品の宝庫ですし、一般の方を危険にさらすわけにはいきませんからね。だから、病理医は一般の方にとてもなじみが薄いんですね。颯爽と外来や病棟を駆け回るなんてありませんから。カフェの店員がお店を空けたままにして、外をふらつきまわることはありませんよね。それと一緒です。

図書館のバックヤードツアーがありますが、病院もバックヤードツアーをやると意外と楽しいかもしれません。個人情報保護の観点から難しいでしょうけれど・・・

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