散文詩:青空列席

東日本大震災の発生時刻である14時46分に黙祷を捧げつつ、
黙祷そのものの意味を問い直して散文詩を著しました。

静かに祈りを捧げる時間の中では
慎ましく心に込み入る慈悲よりも
風が運ぶ不明な手がかりに
鋭く耳の注意をそばだてて
助かりうる無言と人影が呑む息を
そっと聴き取ってみて

知られた時刻を一律な記念碑に仕立てて
微かな生命線を一緒に黙らせはしないよ
応答が不明なままの交信に
同じ終わりが見え透こうとも
かき消さず個々に秘めた高まりを
しかと見知り置いて

共にした非常口は暗く狭く逸る細道で
共にしたい日常は明るい世界の広場だ
追憶も青々と際立つ日射しと風通しは
暗黒に封じたい無常の扉へ問いかける
全国の皆の呼吸を合わせなくても
両目を閉じ各自が合わせる両手は
無数の声と通じ合う蓄音機
思い思い返し縫いの映画館

公園の噴水と鐘の音の門出

静かに祈りを捧げて過去を偲ぶなら
逞しく育まれる命の未来も願い拍手して
何者か不明な手探りの名乗りにも
確かに挨拶を交わす存命者が
その使命感を自ら
名付け直せますように
出遅れた始まりでも

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