ココロのスキマ

突然、ものすごく久しぶりにジェイムス・ブラントのYou're Beautifulが聴きたくなってYouTubeで検索したらジェイムス・ブラントが悪天候の中で歌いながら身につけているものをどんどん取っていき、極寒の海に飛び込んでいった。

きれいな曲なのに絵力がありすぎてずっと笑ってしまったが、歌詞を調べたらめちゃくちゃ「キミはきれいだ」って褒めた後に「でもキミとは絶対一緒になれないんだ」で終わる曲だった。

本当に大好きな人と一緒になれない世界に絶望して死にたくなったとしても、そんな死に方すんなよ、って思った。

でも、なぜ私はこの曲を聴きたくなったのか。
私は心に寂しさを抱えているのだ。

トモダチが欲しい。

去年の秋、転職に伴い茨城から埼玉へと引っ越した。
茨城にいたころは近くに友達がたくさんいたし、休みの日は友人と会う予定ばかりだったので、友達の少ない妻がよく不機嫌そうにしていた。

私はそんな妻に「キミも友達と遊んだらいい。好きに過ごしたらいい」と言った。

今思うと、これは大変残酷なことを言っていた。

現在、埼玉に住んでいるが勤務地は東京で、仕事はリモートなので同僚と直接会うことはほとんどない。
ましてコロナ禍で東京で同僚と会おうというのも気が引けるので埼玉での友達が全くできない。

私は今、気軽に会える友達がいないのだ。

妻はこっちにきてから職業訓練校に通い、その学校での同窓生と仲良くなってご近所でお食事会をしたり、ラインで近況を報告しあったりしている。
私はそんな妻の後ろ姿を「キーッ!!!」と言いながらハンカチを噛んで羨望のまなざしで見つめている。

たぶん今の私が喪黒福造に会ったらまんまと怪しいグッズをもらって、注意事項を無視した使い方して「ドーン!」されることだろう。

そのくらいココロのスキマができて、すでに中国の子供が4人くらい挟まって『世界まる見え!テレビ特捜部』のテレビクルーが撮りに来てる。

しかし、そんな危険な状態だった私のココロを救う存在が現れた。

私は仕事で西武線を利用するのだが、椅子に座れないときはボーッと車内モニターを眺めている。

すると定期的に堀田真由さんが秩父に行く西武鉄道のCMが流れるのだ。

これがもうめちゃくちゃかわいい。

疲れている私のココロはいつも癒され、堀田真由と行く秩父の旅に想いをはせることで地獄みたいな通勤時間の負担を軽くすることができる。

これが流れるとあまりに食い入るように観てしまうので、「もしかして誰か俺のことを『キモッ!』って感じで見てるんじゃないか」と疑心暗鬼になりハッとしてあたりを見渡すと、誰も私なんぞ見ずにスマホを見ていた。

そして、またこれはこれでムカつくのだ。
なぜ世のお疲れサラリーマンたちはこんな癒し効果ある動画見ずに死んだ顔でスマホ見てるんだ!?どうかしてんのか!?
たぶん動画史上初のマイナスイオン出てる映像だぞ、これ!

そんなことを思いつつ周囲を改めてみると、ひとりだけ、40代後半くらいのくたびれサラリーマンが私同様に車内のモニターを眺めていた。

私は彼を「トモダチ」と呼ぶことにした。

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