何度も読みたい!「ピューと吹く!ジャガー」おすすめ3笛

私は物心がついた頃からうすた京介作品が大好きでした。

かつてジャンプのギャグ漫画界の歴史を変えたと言われる「すごいよ‼︎マサルさん」、伝説の問題作「武士沢レシーブ」はもちろんのこと、うすた京介短編集「チクサクコール」も何度も何度も読み返しました。

そんなうすた作品でも最長の連載期間を誇った作品が「ピューと吹く!ジャガー」です。

「ピューと吹く!ジャガー」は普通のギター青年・酒留清彦(ピヨ彦)が謎の笛吹き・ジャガージュン市と出会うことで完全に運命が狂わされ、めちゃくちゃな登場人物に囲まれながら訳の分からない生活を送る音楽(?)ギャグ漫画で、読者アンケートの評価によって掲載順が変動する少年ジャンプにおいて必ず巻末で他の漫画の半分くらいのページ数で書かれるという独自すぎる地位を確立していた作品でした。
連載が開始した時は「あのうすた先生が連載始める!!」と興奮したのを覚えています。

通常、漫画ではそれぞれの話の単位として「第〇〇話」という単位を使いますが、「ピューと吹く!ジャガー」では「第〇〇笛」という単位を使用しています。
今回は全435笛の中から私が何度も読んでしまうおすすめの3笛を紹介します。

第41笛 夏祭りがっかりイリュージョン

近所の夏祭りにやってきたふえ課の面々。
突然ジャガーはピヨ彦に「たこ焼きを買ってきて」と頼みます。
文句を言いながらピヨ彦が戻ってくると、ジャガーはテントを出し「がっかりイリュージョン」という入場料600円の謎の出し物(テントからジャガーの顔だけが外に出ているので、中でどんなことが行われるかは分からない)を展開していたのです。

このがっかりイリュージョンを体験した人たちの、出てきた後のなんとも言えない顔に「何してんの!?」という興味がどんどんそそられ、ピヨ彦はジャガーに「たこ焼きおごるからがっかりイリュージョンを見せてほしい」と打診します。

しかし、ジャガーは「それだと中途半端に面白いイリュージョンになる。ちゃんと600円を払えば最高に面白くないイリュージョンを見せてやる」と答え、ピヨ彦はちゃんと600円を払うことを選択します。
果たしてがっかりイリュージョンとはどんなイリュージョンなのか…

この話のいいところは、がっかりイリュージョンの内容はもちろんですが、やっぱりピヨ彦が中途半端に面白いイリュージョンよりも、高いお金を払ってでも最高に面白くないイリュージョンを選んでしまうという、時に非合理的な判断を敢えてしてしまう人間存在の面白さが現れているところです。
おそらく私も同じ2択を迫られたら600円のがっかりイリュージョンを選んでしまうと思います。

第334笛 ニズムを内包した前衛芸術

幾多もの迷走を経て、ある表現に到達した天才ベーシスト・ポギーからショーに招待されたピヨ彦。会場に着くとそこには「ワタル・ポギィの暗黒コンテンポラリー・ポエジーダンス&ベースショー」の文字が。

難解な内容かと不安に思うピヨ彦だったが、司会のテンポは軽いものなので、そんな小難しいものではないのかもと安心したのも束の間、始まるとやはりコンテンポラリーダンスと訳の分からないポエムを組み合わせたパフォーマンスが始まります。

ひととおり見おわって、ポギーに感想を聞かれたピヨ彦は魔法の言葉でなんとか乗り切るのでした。

これはもう、ただ「ニズム」と「アンチテーゼ」をゴリ押しする観客の感想合戦を楽しむのと、知り合いに誘われて見に来たショーが小難しいと困るよね、っていう「あるある」に共感笑いができる、大好きな話です。

第394笛 肉ボクシング大会

これについてはもうあらすじとかないです。タイトルのまま。すごいバカバカしい話です。

要はボクシングしながら会話の中で肉体の部位を焼肉の部位の名前で言い合うみたいなことで、なんか囲碁将棋の漫才を見ているみたいな気持ちになります。大好き。

おわりに

この記事を書くためにざっと読み返したけど、やっぱりジャガーは面白いです。正直イマイチな話もあるけど、単行本全体で見るとそのイマイチなのも外しの笑いというか、裏に入ってる感じで楽しめます。

時間があるけど何もしたくないし何も考えたくない、そんな時はピューと吹く!ジャガーを手に取ってください。

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