それぞれの意志と定義や理想違っても / THE JET BOY BANGERZ 『TEN』について

現状を打破するには、圧倒的な力が必要だということはすぐに想像がつく。
前に向かおうと思う意志、ひとりじゃなく仲間がいることへの信頼感、今の環境を変える勇気。これらは「圧倒的な力」という言葉に内包されるだろう。

そういう勇敢な曲に触れていると、たまに疲れてしまうことがある。
前を向くよりももっと前の段階、立っているだけで足が震えてしまうようなことは、我が身にとっては日常的に発生する身近な出来事だ。
なんとか頑張ってこらえて立ち続けているが、バランスを崩すことだってある。気付けば立っていたはずの地面がぬかるんでいて、転んだあとどう立てばいいかわからなくなり、途方に暮れてしまうときもある。

THE JET BOY BANGERZ from EXILE TRIBEというボーイズグループの、『TEN』という曲がある。

彼らはEXILEが率いるLDHの一番新しいグループで、メンバーは10人いる。
これだけの情報だけでも、彼らが「陽キャ集団」で「上昇への意向が強い」「勢いがある」「10人もいる」「怖そう」という印象を持つ人は少なからずいるだろう。

しかもその印象はだいたい合っている。

『TEN』だってそうだ。
さあっと聞いただけではよくある所信表明曲に聞こえるかもしれない。
MVを一瞬再生してすぐに止めてみる。雰囲気を見てみよう。
ケンカ映画の抗争シーンで使われていそうなコンテナが背景にあるし、彼らは真っ赤な衣装を身に着けている。彼らは戦闘態勢だ。

再生ボタンを押す。

こっからDestinyぶち壊して Write my history

THE JET BOY BANGERZ from EXILE TRIBE 『TEN』


全員での荒々しいラップだ。
夢に対して、大いなる意思を持った若者たちの前進への表明。
自分がぬかるみにいるとき、なにも知らずここだけをピックアップしたら、きっと少しだけ疲れるだろう。

だが曲を少しだけ聞き続けていると、少し耳に引っかかるようなフレーズがあることに気付く。

それぞれの意志と定義や理想違っても
十人十色 重なるSoulはBrightness

THE JET BOY BANGERZ from EXILE TRIBE 『TEN』


サビの歌い出し、ここはボーカルチームの宇原雄飛くんの担当の箇所だ。

自分の元気がないとき、「みんな社会をまっとうしていて偉い」「今いち馴染めない自分はなんてダメなんだろう」とか、そういう思い込みに飲まれてしまって、世界がモノクロになってしまうことがある。
また、芸能の世界にいる人(その中でもグループでアーティスト活動をしている人)について、「メンバー全員が同じ目標を抱き、グループとして邁進する」ことを掲げている印象が強い。
これはLDHに関わらずそういう思い込みがあるが、LDHという事務所では特にその傾向が強いような偏見がある。

でも宇原くんは、TJBBは、この箇所で、

それぞれの意志と定義や理想違っても

THE JET BOY BANGERZ from EXILE TRIBE 『TEN』


と、メンバーそれぞれが、自分の信念、パフォーマンスに込めた前提、変えたい世界のあり方が違うことを歌っている。

これは、見えている景色が10人分あって、それらを重ねても魂は輝くこと、異なった者同士を重ねるからこそ10倍や100倍、1000倍となる、というふうに受け取ってもいいだろう。
(メンバーの中に濁った色はいないと思うけど)社会においてどれだけ濁った色がいたとしても、鮮烈に輝くことができる。そういう方法を取ることだってできるのだ。

曲の中盤、歌いだしにあった全員でのラップのパートが入る。
歌いだしでのこのフレーズの印象と、曲の中盤での印象はかなり異なるように感じる。
この『TEN』という曲が「大いなる意思を持った若者たちの前進への表明」であることは間違いないけれど、<それぞれの意志や定義や理想違っても>メンバーのバックグラウンドが多様であることを明らかにしたところで、リフレインされた歌詞とその先まで目を向けてみる。

T,J,B,B,yea bring it on! 騒ぐDNAは未だ覚醒中
T,J,B,B,yea bring it on! ここからDestiny ぶち壊して Write my history

THE JET BOY BANGERZ from EXILE TRIBE 『TEN』


圧巻のDTを挟み、終盤のスリーボーカルパート。

「強さ」それだけが(答えじゃない)
「弱さ」も全部 打ち明ける その先のPower

THE JET BOY BANGERZ from EXILE TRIBE 『TEN』

これは個人の感覚でしかない。
でも、圧倒的な力やまばゆい光の中にも光の色はある。
彼らはそのひとつひとつの光の色を尊重しながら――「グループは常に思想や定義が同じでなければならないという偏見」「団結はしているけど完全一致ではないことを”弱さ”とする偏見」を壊して彼らの道を歩んでいく、という力強い表明のように思えてならない。
それぞれの背景や在り方を否定したりしない、「信頼」を描いているのだ。

そして曲中で「弱さ」に触れたからこそ、この曲から発される光が鮮烈なものだけではなく、優しい光も内包されていることがわかる。
ぬかるみの中にいて途方に暮れている”私”にも、この曲の光は届いている。


9/23のNEO EXILE SPECIAL LIVEに向けて、直しすらしてない文章だけど、
『TEN』がすごく大好きなのでライブ開催記念に書いた。
紹介というにはメンバーの情報が薄かったりバランスが歪な文章になってしまったけど、とにかく今残しておきたかった。
もっとパフォーマンスのこととか衣装のこととか……書くべきことがたくさんあるのは理解しています。が、とにかく今残しておきたかった!

TJBBは『光』をテーマにしたダンスパフォーマンスを行ったこともあります(みんな知ってるやつ)!

それじゃあライブ行ってきます!

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