【FP1級実技対策】米国不動産の相続について
FP1級実技試験(面接)2022年2月19日 PartI の設例中にあった米国不動産の相続に関して、回答する上でのポイントをざっくりとまとめてみました。
そもそも海外不動産の相続は、各国の税制が絡むとても専門的な領域であり、にわかに必要十分な知識を得ることは難しいと感じています。
あくまでも以下は、FP1級実技対策の参考に、私がウェブ等で得た知識の概要をメモした程度のものにすぎません。
より正確かつ詳細な知見については、国際税務・税法に詳しい税理士さんや弁護士さんのウェブ上のコラム等を参照されることをお勧めします
【2022年2月19日 PartI 設例概要】
主人公Aさんが親会社勤務時代に購入し、ニューヨーク州に所有している賃貸アパート(一棟)の一室に長女Dさんが無償で居住している。
Aさんの所有財産(相続税評価額)は総額2億8,000万円、うち海外資産である米国賃貸アパートは6,000万円。
このニューヨーク州に所有している賃貸アパートについて、仮に今、相続が発生した場合の取り扱いはどうなるか?
※設例全体はこちら(金財サイト)
日本及び米国での申告が必要
Aさんは日本在住だが、米国に所有している不動産については、日本及び米国での申告が必要となる。
米国では、日本の相続税に該当するものとして、連邦遺産税(国税)と州遺産税(地方税)がある。(州遺産税がなかったり、州相続税を定める州もある)
遺産税は、被相続人に課せられ、遺産総額から支払われる。
連邦遺産税の税率は18~40%(累進課税)。ニューヨーク州の州遺産税の税率は16%。
米国では、被相続人の財産を相続人に分割する場合、まず裁判所のプロベート(遺言検認手続き)を経て遺言執行者が選任される。(遺言がない場合も、同じような手続を得て、財産管理人が選任される)
従って、米国の弁護士に依頼する必要があり、費用も時間もかなりかかることになる。
プロベートを避けるためには、財産を共同名義にしたり、「トラスト(信託)に財産をいれる、自分が死んだ場合の財産の行き先を決めた証書を作っておく」(『失敗事例から学ぶ 事業承継対策・相続対策』P223)等の方法がある。
連邦遺産税はかからない
米国の連邦遺産税には基礎控除額があり、米国非居住者の場合は6万ドル(約780万円※)だが、日本国籍で日本に居住している人は、日米租税条約の適用によって、基礎控除額が拡大される。
※1ドル=130円
計算式は以下の通り。
1206万ドル(約15憶6780万円)※×米国遺産税課税対象財産額 / 全世界遺産総額
※1206万ドルは2022年度の額
Aさんの控除額を計算すると、
15憶6780万円×6000万円 / 28000万円=3億3595万円
となるので、Aさんの場合は連邦遺産税はかからないことになる。(但し、州の遺産税については各州で扱いが異なる)
この基礎控除の適用を受けるには、相続開始から9か月以内に連邦遺産税の申告をする必要がある。(申請により6ヶ月の延長が可能)
海外不動産への小規模宅地等の特例の適用
日本の相続税においては、海外不動産についても小規模宅地等の特例の対象となる。
Aさんの米国不動産(賃貸アパート一棟、一室に長女が居住)については、要件を満たせば貸付事業用宅地等、または特定居住用宅地等(同一生計の親族が居住)の適用を受けられる可能性がある。
面接を乗り切るためのお勧め本
といっても、いきなり米国不動産の相続について聞かれて、満足に答えられた受検生はほとんどいなかったでしょう。
私もそうでした。
ただ、「日本と米国で課税され、米国の相続は手続きが複雑で時間がかかる」ということについては、『失敗事例から学ぶ 事業承継対策・相続対策』という本に記載があったことをぼんやりと覚えていたお陰で、質問に対して無言のまま終わることを何とか避けることができました。
今回の海外不動産の相続のように、今後もFP1級実技面接では、過去問ではほとんど出会ったことがない新しい事項が出題される可能性があるかもしれません。
その事項が見たことも聞いたこともないと、審査員の助け舟にも乘れず、無言となってしまうリスクがあり得ます。
あれはどこかで読んだ。あれはどこかで見た。
ぼんやりでも、薄っぺらでも、断片や一部でも、何でもいいので、新たな知識にできるだけたくさん触れて、記憶に残しておくことは、実技面接対策として案外重要なのではないかと感じています。
この本は、実務であった事例について、過去問にないような事項も含んでいて(もちろん過去問にある事項もたくさん含んでおり、その確認にもなる)、FP1級実技受検生の方であれば、ストレスなくサクサクと読む進めることができます。
「従業員に自社株を渡して節税を、でも「行きはよいよい、帰りは怖い」「株主名簿に幽霊が」「「黄金株」は「黄金」ではない」等、60の事例コラムについた見出しも興味をそそります。
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