ウィルコ・ケルデルマンは存在しない

2012/6/13

あなたはウィルコ・ケルデルマンについてまだ聞いた事がないかもしれません。それなら、そのままにしてください。このコラムを読むのをすぐにでもやめることを丁重にお勧めします。

Thijs Zonneveld

すでにウィルコ・ケルデルマンのことを聞いたことがあるかもしれません。それならあなたは彼がラボバンクで走っていて先週のクリテリウム・デュ・ドーフィネで新人賞を取ったことをおそらく知っていますね。この少年はまだ21歳ですが、今のベストライダーたちに劣っているところがほとんどありませんでした。
長い距離のタイムトライアルで、彼は何気なく4位でフィニッシュしました。ツール覇者のカデル・エヴァンスのはるか前で。登りでもほとんどタイムを失いませんでした。ウィルコは上手く走りませんでした、恐ろしいほど上手く走りました。彼のやったことはまさしく不可能なことです。
21歳の少年はグルペットで時間内に戻ってこれたら目を丸くして喜ぶべきであって、ミニツール・ド・フランスの総合トップテンにいるべきではないのです。


ヨーロッパのどこかでサッカーの試合が行われていた(*1)のは良いことでした。そうでなければ、私たち全員が飛び上がり、ウィルコは将来のツール勝者として爆撃されたでしょう。期待は膨らみます、それは私たちがオランダで得意なことです。
結果として、タイムトライアルと登坂力に優れたライダーが現れるとすぐに、私たちは数年以内に彼がパリの表彰台に登っていることを求めます。私たちは、自らが信じようとしていることを大声で叫びます、そしてそれがわかる前に、そんな若いライダーたちは期待の沼に溺れていくのです。

ランマート・ウィーリンガ(*2)の場合。半人半獣の。2003年のドーフィネで彼は突如として世界のトップライダーとして現れ、その年ツールのメンバーに選ばれました。
大失敗に終わりました。ランマート(それはその自転車選手の本当の名前ではないが)(*3)は、幻想し、戻ってくることはないでしょう。彼はのちにプロトンが怖かったということを認めました、これはサイクリストとしては致命的なハンディキャップでした。

ピーター・ウェーニング(*4)の場合。バート・ワーゲンドルプ(*5)が文学の実験として彼を将来のツールの勝者として書くことを決めた時、彼はまだプロのプロトンでの冒険を始める前でした。
大きな楽しみ、誰もが真剣に考え始めるまでは。ツール優勝ほど、ピーターに期待されていたものはありません。ある時点で、ウェーニングは「全てを片付けて」アシストとしての仕事に満足しました。

トーマス・デッケル

トーマス・デッケル(*6)の場合。だれかがすべきなら、それは彼でした。彼は完全に同意していました。しかし、トーマスは徐々に成長するための忍耐に集中できませんでした。彼はマイヨジョーヌを求めて注射器を使い、捕まりました。


しかし、ウィルコ・ケルデルマンはランマート・ウェイーリンガでもピーター・ウェーニングでもトマス・デッケルではありません。彼はロバート・ヘーシンクやバウケ・モレマでもありません。彼の未熟な身体には信じられないほどの馬力を持ったエンジンが隠されています。1月の実験データでは彼はラボバンクチームの中で、もっとも高い値を記録しました。

彼のメンタルの強さも問題ありません。ボルタ・ア・カタルーニャの落車で頭を強く打った後、チームドクターは次のレースに出ることを禁じました。ウィルコは激怒しました。彼は頭痛について何か気にしていましたか?彼はレースをしたかったのです!

おそらく、ウィルコ・ケルデルマンはいつの日かツールを勝つでしょう、全てがうまくいけば。しかし、わたしたちは暫くの間、それを秘密にしておくほうがよいでしょう。彼への興味とプレッシャーが少なければ少ないほど、彼は近づく可能性が高くなります。だから、このコラムを読んではいけません。ウィルコ・ケルデルマンは存在しません。

いまだに。

Wilco Kelderman bestaat niet


2020ジロ18ステージ終了後のコラム著者のツイート

ウィルコ・ケルデルマンはジロの新しいマリアローザです。彼は存在します、みなさん。彼は、存在します。
証明 #ウィルコケルデルマンは存在する

有望な若手選手に期待をかけすぎないで、潰さないで、ということなんだろうけど、タイトルも大胆。このコラムから8年、ケルデルマンは本当に色々とありました。まだジロは終わっていませんが、このマリアローザはウィルコの不屈の意志への贈り物、というのは正しいかな、と深く頷いております。

今日Thijs Zonneveldは新しいコラムを書きました。

Deze Giro is nog niet beslist, maar hier kun je niet meer omheen: Wilco Kelderman bestaat

このジロはまだ決まっていないが、もはや無視することはできません。ウィルコ・ケルデルマンは存在します。

ウィルコ・ケルデルマンに幸ありますように



(*1) ポーランドとウクライナで行われたユーロ2012、オランダは2010W杯準優勝の流れで期待を持ってのぞんだ大会で、ドイツポルトガルと同組の死のグループになり1勝も出来ずグループリーグ敗退、だったんだよね。自転車レースどころではなかったはず。https://ja.wikipedia.org/wiki/UEFA_EURO_2012

(*2) Remmert Wielinga https://nl.wikipedia.org/wiki/Remmert_Wielinga

(*3)上記wikiにReinbert Cornelis ("Remmert") Wielinga とあるので、そのことを指すのかと思われる

(*4) Pieter Weening プロコン生活が長かったのに、39歳にして再びワールドチーム(トレック)と契約出来たのは素晴らしいと思います、ジロは残念ながらリタイアしてしまったけど、オランダ代表として世界選手権も走りました。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0

(*5) Bert Wagendorp オランダ人ジャーナリスト https://nl.wikipedia.org/wiki/Bert_Wagendorp

(*6)Thomas Dekker  2007年にはツールにも出てる、コンタドールが初優勝するツールですが、途中ヴィノクロフやラスムッセンが陽性やら居場所届出違反やらで途中で帰っちゃったツールでもあります。デッケルはラスムッセンのアシストとして走ってた。引退後、このコラムを書いたZonneveld さんと自伝を出している。https://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Dekker_(cyclist)


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