映画観た:真夜中の弥次さん喜多さん

Twitterに呟いてたけどnoteでまとめることとしました。

真夜中の弥次さん喜多さん
監督 脚本:宮藤官九郎
原作:しりあがり寿「真夜中の弥次さん喜多さん」
公開:2005/4/2
出演:長瀬智也 / 中村七之助

Netflixザッピングしてたら不意に現れた映画。たぶん前に「Too Young Too Die」観たからそれの関連で出てきたんだろうと思う。

10年前くらいにアメブロやってたんだけど、そのときに仲良くしてた人が「腐女子の目覚めはやじきた」といってたのを思い出してなんとなく興味を持って観始めた(ただし鑑賞後2時間くらい経ってからこの作品ではなく「やじきた学園道中記」だったことに気づく)。

あらすじとしては恋人同士のワイルドな弥次さんと薬物中毒で大量に薬物を持ち歩いている喜多さんがお伊勢参りに出る話。
みんな大好きクドカンなので、まあはずれはないコメディだろうと思って観た。けど、内容をいざ見てみたらずっとずっと「キマってる」コントが繰り広げられるだけ。なんなら薄ら寒さと恐ろしさすらある。

箱根の関所を超えるためには面白いことをして笑わせなきゃいけない、とか。

ある峠では「清水次郎長喜び組」と言っている女子高生たちが清水次郎長に会う日を夢見てたりとか。

富士山のふもとの町ではきれいな富士山の風景を見るために歌を歌わないといけない町があるだとか。

なぜかアーサー王の剣を抜けるものを募っており、とろろ汁をふるまう場所があったり。

ただちょっと滑り倒しているような不思議なコントがずっと繰り広げられる。「これで腐女子になったとか、レベルが高すぎないか??」と思って観ていた。ただし、残り40分近くでその認識が一気に変わる。

前述した歌の町で音痴のお幸ちゃんがおり、その子が音痴であることをコンプレックスに思っていた。
喜多さんはその子の音痴を治してやろうと思い立ち、弥次さんに「彼女のためにディナーショーをしよう」という。なぜか自分たちのCDを出して、オリコン3週連続1位になれるほどに有名になり、お幸ちゃんには喜多さんが直々に歌の稽古をつける。
次第に喜多さんはお幸ちゃんのことをいとおしく思うようになり、「お幸ちゃんのことが好きだ」と弥次さんに告白する。それからお幸ちゃん本人にも喜多さんは好きだと告白する。
だがお幸ちゃんは弥次さんのことが好きなのだ、と喜多さんへ言う。また、弥次さんへは自分のお手製の弥次さんグッズを渡し、「あなたが喜多さんと付き合っているのはしっている。だがあなたが好きなのでディナーショーでデュエットしてくれ」と喜多さんの告白前にこっそり弥次さんへ告げるのだ。

振られたすっかり喜多さんは憔悴しきり、挙句二人がデュエットしているディナーショーに乱入、そしてなぜか二人の腕が一本につながる(この時点でだいぶもう気持ち悪い)。

そのあと町を出た二人はアーサー王のところでケンカになり、喜多さんは弥次さんを剣で喜多さんを刺し殺す…というシーンを映画館で一人で見ているのだ。

映画館の管理人?であろう女性に「こんなの見たくないからちょっとシーンを巻き戻してくれ」とリクエストし、もう一度お幸ちゃんのシーンから見始めて、満足そうにしていると、場面転換し、暗闇の宿で自分が弥次さんの首を絞め始める。

「おい、さっきと映像が違うじゃないか。俺はさっきのを巻き戻せと言ったんだ」
「何言ってるんだ。お前が弥次郎兵衛を殺したんだろ。…お前は薬でとんでいたんだろうが」

その発言に動揺した喜多さんは「こんなのリアルじゃない」と言い、懐に手を入れて薬を使おうとする。…が、中に入っていたのは薬ではなく弥次さんの草履。そこでやっと今までうすら寒いコントの意味がわかる。

これ、コメディじゃない。

全部、全部、薬物による幻覚で妄想。

要は全部薬で飛んでた内容だからずっとうすら寒いし直感的に「怖いな」と思う。
話の展開の仕方がよく学校の授業で見ていた薬物乱用防止啓発用の映像にある幻覚の例みたいな感じの雰囲気と似てるんだなって思う。

あと二人のバックグラウンド。

弥次さんはもともと所帯持ちだったが、喜多さんに恋に落ちてしまい、奥さんとそのことでケンカになり、半ば事故だが奥さんを刺し殺してしまう。

喜多さんはもともと陰間で役者崩れ。子供のころに男に抱かれる経験をしているからおそらく薬物に逃げるようになったのだろうと思う。

そんな二人が急に「喜多さんの薬物中毒を治すために伊勢へ行こう。お伊勢参りしよう」と「薄っぺらな」江戸から逃げるように伊勢への旅を敢行するのだ。

いや、完全に居場所がなくなったから現実から逃げて旅に出てるだけやんか。そして何よりこいつら完全にぐずぐずに共依存してる。

や、闇~~~!!

しかもこれ、幻覚だってわかってしまったからなんだかんだずっと弥次さんの生死がわからない。

どこまでが現実?どこから弥次さんが殺されてるの??

いや、歌のところで殺してるからそこまでは生きてるだろ、って思う自分もいるんだけど、もう箱根の関所の時点でだいぶ狂気を抱えている。
なんなら最初の15分はモノクロ。旅に出ると決めてからカラーになる。

てことはもしかして最初の15分までが現実???あとは幻覚???

もうずっとそんな感じで混乱する。

しかも最終的に喜多さんは森の中に突然現れたバーでバーテンにふるまわれたおそらく麻薬の入っているだろうカクテルを飲んだ幻覚でうそでいいので、弥次さんを生き返らせようとする。
しかもそのバーにはきのこの生えた女がいて、バーテンに「私はすでに死んでいるが、妻がこの酒を飲むことによって生きながらえているのだ」なんて言われる。

ウワアアアアアアアアここにも薬中がいる!!!!

その後三途の川からなんだかんだ奥さんと和解して生き返ったらしい弥次さんと合流、涙涙の再開をするんだけど、弥次さんはそこで幻覚きのこを食べ、ピンクのぞうさまに二人で乗って旅を再開する、みたいなエンド。

こんなん情報が多すぎて混乱する。

これ、殺したと思っていた弥次さんが実は生きていて、喜多さんを必死に追いかけてきたんだろうか。ポジティブに終わってるけど、これなんだかんだ弥次さんも喜多さんも薬漬けで、最終的に中毒死のメリバエンドじゃないか????(ここは私のただの妄想)

途中映画のレビュー見て高評価付けてる人の見てみたら「原作の雰囲気を映像化してる」って言っている人がいたので、これ原作もこんな感じなのか、って思いながら見てたけどこんなエンドになるとは思ってなかったし、もう、すごく救いがないな???????????????

なんというか、ドラッグネタが終始一貫してあるのでめっちゃ人に勧められるかと言われたらそうではない作品だし、個人的にも「見なくていい」って言ってしまう気がする。でも「見なくていいから語らせて」というただのプレゼンをしたくなる作品だなって思った。何より2周したらまた見方が全然変わるんだろうなって。

「ほの暗いぐずぐずの関係のふたり」というのが好きな人はたぶん好きだと思います。

[追記]てかそもそも原作が夜逃げからお伊勢参りなのね……。それ考えると結構そんなでもないアレンジなんだろうか……。いやでも別に薬中じゃないだろうし…教養が浅すぎてもうよくわかんなくなってきたな…。

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