パリテは、平和を築く礎

安田 菜津紀(フォトジャーナリスト)

フォトジャーナリズムという限られた業界の中でも、この数年だけで性暴力やパワハラの告発が相次ぎました。写真界はいまだ、男性が圧倒的に多いフィールとです。告発の背景には、「NO」といえない構造的な問題があったことも指摘されています。信念を持ってこの仕事を目指したとしても、「数」とその力に抗うことは、決して容易なことではありません。

けれども、こうした問題を、受け止めて改革をしようという大きな動きには残念ながらつながっていません。誰かが思い切って声をあげたとしても、再び「数」の壁に阻まれてしまうのです。

こうした力の不均衡は、写真の世界やメディアだけの問題ではなりません。私が取材をさせてもらってきた、紛争下に生きる人々にとっても根深い問題として残されています。

避難生活を送る人々の中には、「家計の負担を減らすためだ」と10代前半で結婚をさせられる少女たちがいました。過激派勢力によって、奴隷として売買されていた女性たちがいました。劣悪な環境のテントで、苛立つ夫の暴力にただ耐えるしかない母親たちがいました。

戦争やその混乱は常に、本来は争いとは全く関係がないはずの人々を犠牲にし続けます。とりわけ女性と子どもたちが、生活の術さえ奪われていく姿を目の当たりにしてきました。どんな人々がより、戦火のあおりを受けるのか、その声が意思決定を下す側に反映されていれば、世界は違った方向に舵を切れるかもしれないのです。

この社会には、多様なルーツ、様々なセクシャリティーで生きる人々がいます。けれども政治にその声が届いていなければ、互いを尊重する社会を築くことはできません。パリテは、よりよい未来を目指すとともに、平和を築く意思を示すための礎となるはずです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?