#性教育とパリテ

シオリーヌさん(助産師/YouTuber)

「性教育」と聞いて、皆さんはどんな内容を思い浮かべるでしょうか。妊娠の仕組みや性感染症のこと、コンドームの使い方などを学ぶのが性教育だと考えられる方が多いかもしれません。もちろんこれらの内容も大切な性教育の一部ですが、ごくごく一部にすぎません。
ユネスコの作成した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」という性教育のマニュアル的なものを参照すると、性教育として伝えられるべきとされるトピックスとして「人間関係」「価値観、人権、文化、セクシュアリティ」「ジェンダーの理解」「暴力と安全確保」「健康と幸福のためのスキル」「人間のからだと発達」「セクシュアリティと性的行動」「性と生殖に関する健康」という8つが挙げられています。つまり性教育とは妊娠出産に関連する知識を学ぶものであるだけでなく、自分の身体の仕組みと性のあり方をよく知り、この社会で健康に安全に生きるために必要な知識・スキルを学ぶものなのです。
そんな大切な性教育ですが、この日本では学ぶ機会が十分に保障されているものではありません。文部科学省の定める学習指導要領では、中学生に対して妊娠に至る経過(つまり性行為のこと)は教えないこととされています。一方で日本の性交同意年齢(性行為の意味を理解し自分の意思でするかしないかを判断し責任を負う能力があるとされる年齢)は 13 歳。教えないのに責任は問う。そんな大きな矛盾を抱え子どもたちに負担を背負わせている社会をどうにかしたいという思いで、私は性の知識の情報発信や政治家へのロビーイング活動を行なっています。
性教育について熱心に考え、子どもたちに必要な情報を届けようとアクションを起こしている方にはなぜか女性が多い、というのは性教育をしている者たちの共通認識です。親御さん向けの性教育について学ぶイベントに訪れるのも母親が多く、また問題意識をもち声をあげる政治家も女性議員が多い。これは何故なのだろうと考えた末に一つの仮説に辿り着きました。それは「男性中心のコミュニティで生きてきた人ほど“下ネタ”的な性の話しか聞いたことない」という説です。
もちろん個人差はあると思いますが、今の大人世代が受けてきた性教育といえば男子・女子でグループ分けをして女子にだけ生理の話をこっそり伝えていくスタイル。自分の望む時期に子どもを産み育てるための家族計画についても、母親学級で女性にだけひっそり伝えられていたようです。真面目な性の話に触れる機会は与えられず、アダルトコンテンツや下ネタには自分で望む望まないに関わらず触れやすい環境がある。もしかすると男性にたいして性の話を真面目に、大切な話として伝えてくれる場はそうそうなかったのではないかと想像できます。だとすれば「性の話=エロ」という印象を持って、子どもに教えるのには抵抗があるという人がいることも不思議ではありません。
男性中心の政治の世界で、性教育の必要性を理解してもらうことは可能なのだろうか。日々の活動の中でこの疑問にぶつからない日はありません。声を上げ続けても、必要性を訴え続けても変わらないのではないか。そんなふうに絶望しそうになる日もあります。だからこそ、私はパリテが実現してほしいと願うのです。多様な背景をもつ政治家が集まれば、多様な人々が生きやすい社会を作ることができます。日本全国どの場所に生まれた子にも、どの学校に通う子にも本当に必要な性教育を届けたいと思ったら、政治を動かさなければなりません。子どもたちが安心して、自分のままで生きられる社会を残すために、大人が頑張らなくてはならない時なのだと感じています。私も私にできることを、地道にやります。

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