裁判とパリテ

亀永能布子 (女性差別撤廃条約実現アクション)

私たちが日常生活で差別や暴力の被害を受けた時、いくら被害を訴えても聞き入れられなかった場合、被害からの回復を求めて最後に駆け込めるのは裁判所です。裁判所は人権保障の砦であるはず。しかし、日本の現状はそうなっていません。性暴力犯罪の加害者が立て続けに無罪となったことをきっかけに、各地でフラワーデモが取り組まれるようになったことは周知の事実です。女性差別撤廃条約が判決に適用されたことも一度もありません。裁判の現状は上級審に行くほど、ジェンダー不平等に満ち満ちています。


その原因のひとつは司法分野での女性比率の低さです。裁判官,検察官,弁護士に占める女性の割合は、2020年版内閣府男女共同参画白書によると、裁判官が22.2%(2018年12月現在),検察官が25.0%(2019年3月31日現在),弁護士が18.9%(2019年9月30日現在)となっています。最高裁判事は15人中、女性は2人(2021年3月現在)です。


元最高裁判事の桜井龍子さんは、「性差によって判決の判断が変わるとは思わないが、性差別に根差した事案では、判断基準の違いが出ると感じたことがある。」「最高裁判事の割合は男女同数であるべき」と語っています(東京新聞2021年3月8日)。実際、2015年、選択的夫婦別姓を求める裁判で、最高裁は夫婦同氏を規定する民法750条は合憲との判決を出しましたが、この時、女性判事は全員が民法750条は違憲であるとの意見を付けました。昨年秋に出された非正規労働者への賞与や手当支給の差別是正を求める裁判で最高裁は、差別支給が「不合理ではない」という判決を出し、マタニティ・ハラスメント裁判でも加害会社の言い分を認め、被害者の女性に損害賠償を求めた高裁判決を維持するという驚くべき判決を出しました。こんな現状を変えるには裁判官の女性割合を高めることが必要です。


女性差別撤廃条約実現アクションは、今年3月、92団体の連名で、最高裁判事の5名を女性にすることを求める要望書を、最高裁判事の推薦母体に提出しました。今夏4人の最高裁判事が定年退任します。4人の判事が一度に交代するチャンスはめったにありません。4人の後任が女性になれば、最高裁判事の3分の1が女性になります。とりあえずの目標です。
日本の司法を変えるもう一つの近道は、女性差別撤廃条約選択議定書を批准することです。個人通報制度や調査制度の導入で、日本の司法判断は国際基準でチェックされます。パリテと選択議定書の批准で、ジェンダー不平等の判決が続く司法を変えていきましょう。

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