メディアで「消される」高齢女性を目に見える存在にしよう!

三木草子(シニア女性映画祭主催者)

「この女性、いくつに見えますか?」10年前にシニア女性映画祭を始めるきっかけになったTVのコマーシャルだ。いまもこのTVコマーシャルは健在だ。高齢女性が女性人口の30%を超え、平均寿命は87歳。65歳以後、20年以上ある女性の高齢期の生き方、社会的地位こそが問題にされなければならない時代に、若く見えることに価値があるかのようなCMは、時代錯誤もはなはだしいと笑いたいところだ。しかし、笑ってなどいられない。それは高齢者以外の女性にも、若く見えることが重要であり、「女は外見」というメッセージを流しつづけているからだ。その一方で高齢者は化粧品とサプリメント会社のいいターゲットにされ、なけなしの年金を奪い取られる。男たちは70歳になっても80歳になっても、しわであれ白髪であれ、ありのままの顔でTVに登場し、「この男性、いくつに見えますか」などと問われることはない。

「年齢より若く見える」ことが重要視される高齢女性は、その結果、テレビから消され、見えない存在にさせられている。それは1976年「容姿の衰えでテレビ映りが悪い」という理由で39歳の女性アナウンサーが降板、異動させられたことを思い出させる。(裁判では勝訴。)いまもテレビ制作が男性中心で、男性の女性に対する「美意識」が変わっていない以上、制度的には改善されたとしても、女性を取り囲む「雰囲気」は脈々と生き続けている。私がこのTVコマーシャルで感じたのは、高齢女性へのリスペクトがない、ということだ。それぞれの顔にはその人の人生がある。若く見えようが見えまいが、そんなことは重要ではない。高齢女性は、生きてきた分だけの知性と尊厳をそなえ、しっかり自分の人生を生きている。だがTVからはその姿が消され、高齢女性の主張も活動も知られることはない。高齢女性は高齢男性と対等・平等な扱いを受けてはいないのだ。(2001年、石原前都知事は「ババァ発言」をし、2021年に森前総理は「女性というにはあまりにもお年」と「高齢男性」政治リーダーが高齢女性を蔑視。20年たっても変わっていない。)

ならば、消された高齢女性の多様な姿を巨大スクリーンで見せようではないか。こうしてシニア女性映画祭は2012年に始まった。目指したのは1)多様なシニア女性の姿を見えるようすること、シニア女性に対する固定イメージを変えること2)ありのままのシニア女性が認められる文化を創造すること3)シニア女性監督に作品上映の機会を提供することである。この目標を掲げてこれまで国内・海外の長編/短編作品49本を上映、女性監督31人を紹介してきた。

女性が年を取ることを恐れず、高齢女性に敬意を表することができる社会を求めて、今年で10周年を迎える。女性の参政権75周年。制度や法律が変わっても、感性が変わらないかぎり、男性社会の女性への視線は変わらない。感性を変えるのは文化の力だ。シニア女性映画祭もパリテの一翼を担っている。URLhttp://sister-waves.fem.jp/bloghttps://sisterwave.exblog.jp/

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