大学スポーツと奨学金とジェンダー

堀口悦子(明治大学教員)

スポーツとジェンダーを考えるとき、女性選手の指導者が男性である場合が、いまだに多いが、セクハラやパワハラなどの問題は起こり続けている。
ここで考えたいのが、大学スポーツである。日本の大学スポーツの花形は、団体競技が多いが、東京六大学野球などの野球、ラグビー、箱根駅伝などは男性選手中心である。
今年の箱根駅伝では、駒澤大学の監督が「男だろ。」と言って男性選手を叱咤激励したことが大きく取り上げられたことは記憶に新しい。このお正月の出来事が、オリパラの森発言に、女性たちが声を上げたことなどにつながっているのではないだろうか。
アメリカでは、1964年に公民権法第7編(タイトル7)ができて、同法により性差別禁止が規定されたことは日本でも有名だが、1972年に教育改正法第9編(タイトル9)ができ、高校や大学のスポーツプログラムへの女性の参加が飛躍的に伸びたのである。
実は、ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク(WWN)の支援者である、ハワイ州最高裁判所裁判官のサブリナ・シズエ・マッケナが、このタイトル9の最初の受益者の一人で、同法によりバスケットボールの奨学金でハワイ大学に進学した。父がアメリカ人で、母が日本人で日本で育ったが、父が10代で死亡したので、この法律がなければ、大学に進学して、現在の裁判官の彼女はいなかったかも、と言うお話をご本人から伺ったことがある。
サブリナさんのお話から、果たして、日本の大学スポーツの奨学金や特別入学枠に関して、男女の数のバランスが取れているかどうかということが、ほとんど日本では問題になって来なかったことに思い当たる。日本のメディアは、アメリカのタイトル9を知っているのだろうか。知っているのだったら、きちんと記事にすべきである。現在の日本は格差社会になっていて、子どもの6人に1人が貧困と言われている。女性がスポーツで、それがたとえ、マイナーなスポーツであっても、大学の奨学金を受けて、大学でスポーツをする権利を正当に行使できているのかどうかを、検証して行く必要がある。

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