アートとパリテ

石川優実 #KuToo署名発信者、アクティビスト、フェミニスト

「表現者なら作品で勝負するべきだ」。
これは、表現者によく投げかけられる言葉です。
似たような言葉で、「芸能人が政治的発言をするべきではない」というものもあります。
特に、昨年SNS上でムーブメントが起きた「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを芸能人が使ったとき、このような意見は多く見られました。

この「べき」は、一体誰が決めたのでしょうか。一体誰がその取り締まりをするのでしょうか。
私は、2017年に芸能界で起きた性暴力を#MeTooし、2019年には#KuTooという職場での女性のみに義務付けるヒールやパンプスは女性差別であるとして、男女雇用機会均等法の改正を求める署名活動を行っています。この運動は署名が30000集まり、国会では三度取り上げられ、2019年ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートしました。結果、JALやANA,携帯3社がヒールの義務付けを撤廃しました。私のもとには、「就活でパンプスを履かなくてもいいんだと思えました」などという嬉しい声が届いています。これまで「フォーマルな場では女性はヒールを履くべきだ」、という女性差別的な社会慣例を、一人一人が見直すきっかけになったと思います。

さて、2017年以前、私は舞台や映画に出たりしていたので、「表現者」であったと思います。
では、今の私は表現者ではないのでしょうか?

表現の方法は人それぞれです。それが歌であったり映画であったり写真であったり。それが今の私は署名活動であったりデモであったり、記事を書いたり、SNSで発信することです。それだけの違いです。自分の思いをどう表現するかは、その本人だけが決められることだと思います。

世界では、女性への暴力に反対する運動として「OneBillionRising」というダンスデモが広まっています。抗議の気持ち、暴力に負けないことをお祝いする気持ちを、ダンスで表現するものです。この運動は、アメリカのベストセラー作家V(旧イブ・エンスラー)が始めました。さて、これは表現活動なのでしょうか?社会運動なのでしょうか?そのどちらにもあてはまるのでしょうか?

日本では、アートや表現をすることと政治活動を、きっちりと切り離そうとする動きが見られます。そして、多くの人が自分と社会の問題は関係がないものだと思ってしまっています。特に女性は勝手に「政治の話が苦手」だということにされ、その結果実際に政治の話をする場所も学ぶ場も少なく、自分の問題と繋がらない、政治家になるなんて想像もつかない!そんな女性が多いのではないでしょうか。

アートと政治。女性と政治。これまでいっけん「関係のないもの」「遠くにあるもの」と思ってきた、いえ、思わされてきたことの見直しを今、していきませんか?

自分の中に湧き上がる「こうしたい」、その気持ちをどう表現するかは、あなたの自由です。作品にして沢山の人に届けてもいい、政治家になって直接社会を変えてもいい。
アートの世界も政治の世界も、大御所は男性ばかり。決定権を持っているのはほとんど男性です。どちらも女性が半分になったとき、きっとその世界は大きく変わるでしょう。

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