見出し画像

お22話・女の子におんぶしてもらいたい男子~泣き震えながら女の子がおんぶしてくれた

 ボクを10分近くもおんぶしてくれた女の子の腰が心配になってきたので、フロアー壁際に座り込む彼女の隣にボクも座り込んだ。轟音ライブ演奏下ということもあり、会話は聞こえづらいのでせず、無言で2人でたたずんで。
 演奏が数曲終わってトークになったので、女の子に話しかけた。
「腰痛くしちゃった? ボクのワガママでごめんなさい・・]
「腰は痛くないです。他も体は大丈夫です」
「限界までおんぶさせて、疲れさせちゃって、ゴメン・・・」
「それも大丈夫、ただ、なんで私は、男の人おんぶして汗まみれクタクタになってんだろ、って思うと・・・・」
 バンドメンバーたちがトークで「次で最後の曲です~」と。
ボクは女の子に
「次で最後だって。立てる? 元気になれそう?」
「うん大丈夫」と笑顔で立ち上がってくれた。
「大丈夫ならよかった。じゃあ乗るよ」と声をかけて、彼女の両肩にボクの両手を乗せると
「えええーっ、またおんぶですかぁ、ふらふらです」と女の子。
「最後の1曲ぶんだけでいいから、おねがい」と飛び乗ったら、ちゃんと支えてくれた。
 しかし、場所が悪くて、ステージ上のメンバーが見えない。ボクは女の子に、左の方へ移動して、と指示。「おんぶ重いよ、歩きたくないのに」とボソッつぶやいたものの、ボクをおんぶしたまま女の子は良い位置まで行ってくれた。すると、おんぶしなくても観れるポジションがあり彼女から「見えるでしょ、降りて」と言われてしまった。
 ボクは正直に言った。
「実は、見えるかどうかが問題ではなく、かわいい女の子におんぶしてもらってライブを見れる最高の特等席であることが大切なんだよ、女の子のおんぶでって、ホントに夢心地なんだよ、だからしばらく頑張っててほしい」
彼女は
「あなたが夢心地になるのを、下で女の子が苦しみに耐えててライブ見れないんですよ。ああ、なんでワタシ、こんなことしてんだろ。推しバンドを見てほしいというファン心理なのかな、なんか悲しい」と、涙が出てしまったが、すでに汗でびしょ濡れだったので、そこに涙が混じってることは本人以外にはわからないだろう。
 しかし、微妙な身体の震えから、上に乗ってるボクには
「もしかしたら、女の子は泣きながらボクをおんぶしつづけてくれてる?」と感じ取ることができてしまった。
 「泣いてるの?ごめん」と降りるべきか、気づいてないふりして、彼女の上で、イェーイ、と盛り上がってるふりすべきか・・。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?