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お26話・女の子におんぶしてもらいたい男子~小柄で元気な女の子のおんぶ

 仕事関係でなんとなくボクのことを尊敬してくれる雰囲気になった小柄で元気な女性リツコとの初デートで食事をした後、ちょっと離れたJR駅に向かって歩いていた。2人で並んで歩いていると、小柄なリツコは歩幅が狭い関係でボクの歩調から遅れそうになるのを取り戻そうと、小走りになったりしていた。
 ボクが「あっゴメン、ゆっくり歩こう」と足を止めると、リツコは
「あっ、いいんです、私ついていきますので」と。
リツコは、海外一人旅などもしていて、歩くことは好きだから、と。
 ここでボクはアイデアを思いつき、リツコに提案してみることにした。
「ボクたち2人が絶対に同じ速度で行ける方法を思いついたんだけど」
「えっ、どんな方法ですか?」
「リツコさんの歩くペースに合わせるんでいいよね」
「ハイ」
「リツコさんがボクをおんぶして、キミの好きなペースで歩いてくれれば」
「えっ、おんぶですか? ハイ、わかりました、やってみます」
 ボクはリツコの背中に飛び乗ると、リツコは小柄なわりには安定していて、乗り心地がよい。
「男の人おんぶしたの初めてです。思っていたより重いので、どこまでできるか・・」
 安定したおんぶで歩いてくれてるが、もともとは、ボクの歩くペースについてくるのに苦労していた女の子。小走りについてこようとしてムリしていた女の子に、おんぶさせて、ボクは上に乗って楽させてもらっているという状況、リツコがボクをちょっと尊敬してくれている、という上下関係。
 リツコの背中に汗がにじみ始めた。ずり落ちたボクの身体を、立ち止まってポンと持ち上げてくれたときの「はぁぁ」というため息にボクは感じてしまった。そこから数歩いったところから急に、リツコの歩みが遅くなった。また「はぁぁ」と色っぽい溜息、そして、リツコの腕にも汗が。
 ボクは、リツコの頭に手を乗せてみると、おでこのあたりが、汗びっしょりだった。体調不良とかも心配になったので
「どうしたの、さっきまで元気だったのに大丈夫?」と訊くと
「上り坂なんですよ・・・」とかすれる声で。
「そうなんだ、ボク乗ってていい?」
「はい、もう少し頑張ってみます」
 ボクは汗まみれのリツコに乗りながら・・、さすがのボクも、乗ってていいのだろうか、と迷った。結果的にJR駅までおんぶしてくれ、元気なかわいい声で
「貴重な経験をありがとう」と言ってくれたものの、2度と会ってくれることはないまま、メールや電話のやり取りでは「貴重な経験をありがとう」なのだ。
 女の子の心を察することのできない、こんなボクでゴメン。

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