リハビリテーションにおけるメタ理論体系

今回の記事はこちらの本から着想を得ています。

こちらの本では近年二流学問として扱われがちだった教育学を再度役に立つ学問にするために、教育の本来の意義、実証方法、実践方法について改めて考え直しメタ理論体系として整理したものになります。

自分は大学院にて人間健康科学という分野の研究をしていたのですが、教育学における現状と少し似た印象を感じていて「そもそもこの研究は何の役に立つの?」「この実証方法は本当に再現性・信頼性があるの?」「研究結果を実践に活かすにはどうしたらいいの?」というような疑問を感じることもしばしばあったので、自分の専門としている分野にも応用できるんじゃないか、という印象を受けたんですよね。

「メタ理論」とはさまざまな個別理論をより上位で包摂する理論のことで、学問としての教育学の書籍ではメタ理論Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの分類がなされており、以下のような形で示されています。

メタ理論Ⅰ: 哲学部門 - よい教育とは何か
メタ理論Ⅱ: 実証部門 - 教育学はいかに科学たりうるか
メタ理論Ⅲ: 実践部門 - 有効な実践理論・方法をいかに開発するか

前回の記事でも問題提起したんですが、エビデンスレベル至上主義における課題を考えたときにまさにこのメタ理論体系のような個別理論を包摂するような上位の概念を整理しなおすことで今起こっている課題をある程度解決に近づけるんじゃないかと感じました。

リハビリテーションにおいては実践理論・方法はさまざまなものが提唱されていますし、実証方法についてもさまざまな手法が用いられていますが、個人的には書籍の中でも紹介されている現象学の考えを用いると実証方法がさらにブラッシュアップされるんじゃないかと考えています。

そもそも科学とはということだったり、既存で用いられている手法について書いていくと膨大になりそうなのでいったん今回は割愛しますが、現象学は世の中に客観的な実在のようなものは存在せず、あくまで主観的な確信・信憑のような現象があるのみである、というようなことを言っています。

これだけでは分かりにくいと思いますが、例えば一般的にエビデンスレベルの高いと言われるRCTで検証された結果やシステマティックレビューやメタアナリシスで示された結果はある問いに対する真理であると受け取られがちですが、それに対していくらでも批判的な指摘をすることもできるし、またその結果に対する確信・信憑を持つかどうかによって意義も変わってくる、という感じでしょうか。

自分もまだ勉強中なので正確な説明はまだできないものの、現象学の考えを参照することでエビデンスレベルに対する認識も変わるし、現場に近いところで得られた症例研究のような知見も包含して科学性を担保するきっかけになると考えています。

またメタ理論Ⅰにおいて教育学では「自由」「自由の相互承認」「一般福祉」という3つの原理を意識することが重要という提言がなされていますが、おそらくリハビリテーションにおいても哲学的に重要な根本原理のようなものがあるはずです。

そこに関しては自分もまだ考えきれていないので、今後深めていけたらと思いますが、とにかくこのようなメタ理論体系を意識することでリハビリテーションにおける現場と研究の繋がり、そして根本的な全体の方向性が整理されると思うので参考にしていただけたらと思います。

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