まばゆい光

つまらない人生を送っていたおじさんの私にも一つだけ話せるような話がある。
あれは定年を迎える前、まだ警官だったころ
私は皆勤賞でね表彰されたんだよ。
「もう30年も経つのか」
皆勤賞の礼を貰ってからふとそんなことを考えていた。今から30年ほど前バブルの末期ごろ、私は警察官になった。固定給のため恩恵を受けおらず大学の同級生がシャネルとかグッチとか付けてるのを見て妬んだりした。私はいろんなことがそれなりにはできて、いろんな感覚が優れていて、特に目はアホみたいに良くてとか愚痴を漏らしていたりもしていた。崩壊後はそんな同期たちをざまあみろという目で見ていたのもそんな昔の話かと懐かしむ。
30年この街の交番に勤めているわけで、この街のことなら何でも知っているレベルだ。この街は元々貧相でつまらない街だったが、4,5年くらい前に再開発でニュータウン化され、ビルとかも立ち並ぶようになった。それでもつまらない街なのは変わりなく、都会の割にはかなり平和で景観の割には退屈で、でもそれに心地よさすら覚えていた。昔は気性も荒く、事件が起こるたびワクワクしていたが、今はもう老いぼれでそんな余裕すらなくただひたすらに日常を過ごしていた。
「今日もこのつまらない時間が過ぎるのか」
そんなことをポツリと呟いていた。
その時私の目の前を二人の男たちが通り過ぎた
自転車に乗っている二人...あれはクマムシの二人だろうか?自転車に乗っている、それはいいのだが何故彼らは尻を丸出しにしまるでアクメ自転車のようになっているのだろうか?
私は追いかけてビンタした。轢かれながらだ。
痛かった。だがおかしい。手が痛い。手が痛すぎる。
「なぜ尻を丸出しにしながら自転車に乗る?」
私は尋ねた。すると彼らは電池で動くタイプの首を振ってくる花のおもちゃみたいなやつを出した。電池は入っていないようだ。そして彼らはそれを右手で持った。すると次の瞬間、その花が動き始めたのだ。 
あり得ない。あの花には電池が入っていない。そうなると彼らが電池となりあの花を動かしているということになる。試しに携帯の充電ケーブルを彼らに刺してみた。尻に刺すのは嫌で嫌で仕方なかったがやるしかなかった。
すると携帯は充電し始めた。充電したと思った次の瞬間、携帯は爆発した。そこでようやく気づいたのだが普通に動いていたと思っていたおもちゃの花は残像で音速を超える速度で首を振り続けていたのだ!!その証拠として今その花が折れ猛スピードで飛んでいき通行人の首を刎ねている。
私は事件の予感にワクワクしていた。
久々にこんなすごいところを目撃している!
そんな高揚感で胸が躍った。
私は近くにある廃線の列車に彼らを繋いだ。
「尻は大丈夫か?」と聞くと
「イロモネアとおはすたで鍛えられたので」と答えていた。
ちなみに彼らが出ていた記憶はない。
しかし電極を刺しても何も動かない。電車が動き始めたりするかな?と思っていたが何も起こらない...とその時、電車が光り始めた。
「電力はパレードだ」ウォルトディズニーのそんな言葉を思い出した。
そうこうしてるうちに人がたくさん来た。首がない人もいる。ああ、刎ねられてたっけな。
そして人々は続々と電極を繋ぎ始めた。
すると彼らは自転車に乗り始めた。一人一人やっていては埒があかない。やがて彼らは坂を漕ぎ始めた。こう語ると青春のようだがその様子はさながらアクメ自転車である。
走りつづける、走りつづける。それはシンガポールを超え、香港を超え、アフリカにたどり着いた。アフリカは電気に困っている。
そこで彼らはアフリカを照らす光になると決意した。
と、そこまで確認できたのだがね私も老いぼれの老眼だ。これ以上のことはわからない。
まあまあ、詐欺とか言わないでほしい。全ての話にオチがついてるわけじゃない。ただ一つ言えることはあの日からアフリカのあたりが明るく照らされている、そんな気がするということはわかる。信じられないって?おじさん昔から目はよかったんだよ

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