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第三代パピーモダン王決定戦カバレージ

By Tsutomu Date


第三代パピーモダン王決定戦は、『モダンホライゾン3』の発売から2週間後の6/30(日)に行われた。
前回、第二代パピー王モダン決定戦は昨年の11月なので実に7ヶ月ぶりとなる。

第二代優勝者、つまり第二代パピーモダン王はマーフォークの「澤田 遼」。

そして奇しくも本日は、オランダ・アムステルダムでプロツアー・モダンホライゾン3の決勝トーナメントが進行中だ。
プロツアーTOP8はナドゥ系デッキが半数以上を占め、まさに『ナドゥの夏』とも言われるモダン環境、果たして第三代パピーモダン王決定戦の様相などのようなものだろうか。


参加者29名のデッキ分布は以下となっている。

4 ナドゥ
3 ボロス、マルドゥエネルギー
2 ジェスカイコントロール
2 ライブラリーアウト
2 御霊シュート

以下各1
4色オムナス
アイユーラコンボ
エルドラージトロン
エルドラージブリーチ
クラガンウィックシュート
グルール果敢
ドメインカスケード
ボロスコントロール
ボロスミッドレンジ
マーフォーク
ラクドス想起
ルビーストーム
黒単
青単トロン
赤単果敢
霊気池の驚異

多くのプレイヤーが予想している通り、上位にはナドゥ系デッキ、ボロス系のエネルギーデッキ、ジェスカイコントロールが顔を見せ、意外なところではライブラリーアウトと《御霊の復讐》デッキが。
それ以外は愛知のメタゲームらしく、各々が愛用しているデッキを持ち込んでいる印象だ。



スイスラウンド5回戦を勝ち抜いたプレイヤー達のプロフィールと使用デッキについてはこちらを御覧いただきたい。

TOP8ブラケット

そしてシングルイリミネーションの2ラウンドを終えた最終戦、第三代パピーモダン王に王手をかけるのは…

澤田 遼(マーフォーク)

クロダ ケンタロウ(ボロスエネルギー)
だ。

澤田 遼

マーフォークと言えば澤田、彼のプレイマットやスリーブに見覚えがあるプレイヤーも多いはず

冒頭で前回の第二代モダンパピー王決定戦について触れたが、現モダンパピー王…そう、王自らが連覇に王手をかけたのだ。

澤田遼と言えばマーフォーク
東海でモダンをプレイしているものなら、彼を会場で見かけ…そして上位入賞しているのを幾度となく目にしていることだろう。
マーフォークをこよなく愛し続け、デッキの使い込みはなんと10年以上になるそうだ。
東海のみならず、日本…いや世界でもこれほどマーフォークを使い続けているプレイヤーはいないのではないか。
勿論その実力は折り紙付きで、2週前の『関西帝王戦』でTOP8、先週の晴れる屋モダン杯で優勝、と当然のように実績を重ねている。

「モダンをやっていればどこにでも行きますよ」

実績は勿論、デッキ愛についても他の追随を許さない。
なぜ彼はそこまでマーフォークを愛しているのか。

理由なんてもうないですね…そこにマーフォークがあるから

彼のプレイマットやスリーブは既製品ではない。
自分の好みに合わせて作成したそうだ。
当初はデッキに合うスリーブやプレイマットを探していたそうだが、なかなかしっくりくるものがなかった、ならばいっそ自分で…という。

決勝戦についてはどのように考えているのだろうか。
別卓で準決勝の対戦が行われる中、先に決勝進出を決めた澤田にマッチアップを聞くと、

「LO相手なら余裕ですが、エネルギーが勝ち上がってきたらわからないですね。
先手勝負なところがあるし、まだ2,3回しか当たっていないので場数が足りていないと思っています。
相手は飛行を持っているし《色めき立つ猛竜》や《ナカティルの最下層民、アジャニ》がつらいかな」

と冷静だ。

決勝に臨む澤田はモダン環境自体の魅力についても語ってくれた。

「世界的なメタゲームはともかく、愛知のモダンは好きなデッキを使い続けている人たちが多く、とても好ましい環境だと思っています。
マーフォークはクリーチャーを並べるデッキではありますが、使い続けていれば勝てることを証明したいですね」

澤田は連覇だけでなく、マーフォークの存在意義をもかけて決勝に臨むのだ。


クロダ ケンタロウ

素顔を隠すクロダのプレイはどのようなものだろうか

一方、その顔の一切を見せることのないクロダ。
聞けばクロダは様々なフォーマットをプレイするオールラウンダーとのこと。
スタンダードからパイオニア、モダン、レガシー、そして統率者戦。
ヴィンテージ以外は一通りデッキを持っているそうだ。

「最近一番好きなのは統率者戦ですね。
《有翼の叡智、ナドゥ》も好きです。
始めに統率者を見せると集中攻撃されるんですよね。あいつから◯すぞ、って(笑)」

ストイックにモダンの道を示してくれた澤田とは対照的に、枠に囚われない奔放さがクロダからは感じられる
この自由さが彼を決勝まで連れてきたのだろうか。

クロダのマジック歴は長い。

「復帰したのは『霊気紛争』からですが、初めて買ったパックは『第5版』でした。引いたレア今でも覚えてますよ。《アクロンの軍団兵》!
『テンペスト』の構築済みも買いました。白緑で《魔の魅惑》が入っているやつ(The Swarm)。」

ともに1997年発売のセットだ。
途中休止期間を挟んだと言うが、クロダは人生の半分以上をマジックと歩んできたと言える。

そして現在はモダンデッキの最先端、ボロスエネルギー…クリーチャーやスペルの半分以上が『モダンホライゾン3』でカードと限定構築かと錯覚するほどの新生デッキ…の力を借りて決勝卓に座している。

「先週はジェスカイエネルギーを使って勝たせて貰いました。
とは言え、ちょっとデッキとしては微妙に感じたので、今回は比較的強くて扱いやすいこれを選びました。
おかげでここまで想定通りに回ってくれましたね」

クロダは自分で回した感触やメタゲームによって、柔軟に使用デッキを変えるプレイヤーのようだ。

「メジャーなカードは発売直後に揃えてますし、高騰すると信じたカードは多めに買うこともあって、巷のデッキは大体組めますね

決勝戦、澤田のマーフォークに対してはどう考えているのだろうか。

「マッチアップはちょっとまだわからないですね…除去はあるのでうまく当てられれば。
こちらのデッキの構成が軽いのは有利に働くかもしれないですね。
先行なら若干有利だけど、後攻だとどうでしょうね」

クロダが用意した、見事にボロスエネルギーを表現した「基本闘エネルギー」

「あ、あと、パピー弥富店のイベントにみんな来よう!

クロダは最後に、自らの勝敗でなく、コミュニティの発展を気遣う嬉しい一言を付け加えてくれた。


最終戦は奇しくも、古から存在するマーフォークの澤田と、たった2週間前に産声を上げたボロスエネルギーのクロダとの対戦となった。
澤田の連覇はなるのか?クロダが新たな王となるのか?
本日最後の戦いを見守ろう。

第三代モダンパピー王決定戦、決勝戦の幕が切って落とされた

決勝戦

Game1

先手は澤田。
《霊気の薬瓶》を初手に含んだ先手としてまずまず、といった初手をキープ。

対する後手のクロダは、こちらも一見良好な初手に思えるが、マリガンを選択。
後手で除去が《火の怒りのタイタン、フレージ》では遅いと判断したか。

マリガン後のハンドも除去はないが、ダブルマリガンのリスクは高い。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》をボトムに送ってキープ。

マーフォークの理想と言える《島》から《霊気の薬瓶》プレイで返す澤田に対し、クロダは《乾燥台地》から《聖なる鋳造所》ショックインで《オセロットの群れ》。

そして澤田の2ターン目の《アトランティスの王》に対し、クロダは《色めき立つ猛竜》…からめくれたのは《静牢》

先手と後手をひっくり返すこのアクションに対し、

澤田「強いなあそれ…ちょっと考えさせて…ハンドがこれで4枚か」

澤田「いや、このマッチは切り得だろう」

と《否定の力》をピッチでプレイし《アトランティスの王》を守る(コスト《朦朧への没入》)。
このマッチでは、非クリーチャー呪文限定へのカウンターを撃つタイミングが限られていること、盤面を維持することが重要、との判断か。

ターンが返った澤田、3枚目の土地をプレイするが

澤田「かと言ってこっちも辛いぞ…」

と土地を立てたままターンエンド。
3マナを立てたマーフォークとアクションと言えば…。

クロダは《ナカティルの最下層民、アジャニ》をプレイするが、澤田はその誘発型能力に《ティシャーナの潮縛り》、と天秤が傾くことを許さない。

クロダ「ええと、これとこれのサイズは…?」

と慎重にアンタップ状態の《アトランティスの王》と《ティシャーナの潮縛り》がそれぞれ2/2と4/3であることを確認したクロダは2/1先制攻撃である《色めき立つ猛竜》でアタック。

何もなければ4/3の《ティシャーナの潮縛り》でブロックするのが常套であるが、火力を読んだ澤田は「うーん、大人しく受けよう」とスルー。

そしてエンドを宣言するクロダに対し、澤田は《霊気の薬瓶》を起動。
《真珠三叉矛の達人》を出すが、それには読み通りのクロダの《稲妻》が刺さる。

ここで手札を消費しきった澤田、対してクロダはまだ手札を2枚温存している。
天秤は大きくクロダに傾いたか

しかしそこで澤田はトップから引いてきた《銀エラの達人》を《霊気の薬瓶》で即戦場に出すと、そのドローが招いたのは…なんと《海の先駆け》

澤田の愛に応えるかのような完璧な2枚が盤面に降り立つと、クロダは自分がコントロールする3枚の土地が全て《島》となったことを確認し、第二ゲームの準備を始めた。

澤田 1-0 クロダ


クロダ「このまま終わっちゃいそう…サイドから入れるカードないんですよね…あ、これ入れてみようかな…でも抜くカードがない、これは重いから抜くか。でもこれ効くのかな本当に」

思考を口に出しながらプランを整理するクロダ。
特別にマーフォークに効果的なサイドボードは用意していない。
速度と横並びを阻害できれば中盤以降は有利に進められそうだが…

クロダ「試してみるか、お試しでね」

と、アドバンテージは取れるが速度に劣る《不安定な護符》の一部をサイドアウトし、クリーチャーの頭数を補充するためか《過酷な指導者》をサイドインした。

一本取って余裕ができた澤田だが、デッキ使い込みからかイン・アウトが素早い。
カウンターを6枚アウトして、盤面に直接影響を与えるカードをインした。


Game2

ともに7枚の初手をキープ。

先手を取ったクロダは初手からテンポ動いていけるハンドを迷わずキープ。

澤田は先程の《霊気の薬瓶》こそないものの、こちらも1ターン目から動いていけるハンド。
サイドインしたカードも複数含まれている。

先手のクロダはフェッチランドから《平地》をサーチ。
先程の《海の先駆け》をケアした1枚だ。

クロダ「平地が大事だと思います

自分に言い聞かせるように呟いて《魂の導き手》をプレイ。

返す澤田は初手からの《激浪の形成師》をプレイ。

クロダは《山》から《ナカティルの最下層民、アジャニ》(と呼び出したトークン)で盤面を広げつつ、エネルギーとライフを獲得していく。

澤田はクロダの《山》にサイドインした《広がりゆく海》を貼り付けて赤マナを潰して《激浪の形成師》を強化。
自らのクリーチャーの展開よりもクロダの展開を阻害する狙いか。

しかしクロダの展開は止まらない
《オセロットの群れ》を呼び出して《魂の導き手》の能力を誘発させ、エネルギーとライフを確保、これでターン終了時のトークン生成も約束された。
《魂の導き手》を3/4飛行に強化しながらアタックし、諜報土地こと《優雅な談話室》でトップを見てそのままに。

対処に回る澤田だが、《潮流の先駆け》で《魂の導き手》をバウンスするも、

澤田「戻したとはいっても攻めれんな…」

とそのままターンエンド。3枚目の土地を置くこともできない。

クロダは一度手札に返された《魂の導き手》を再度呼び出し、《火の怒りのタイタン、フレージ》…モダンホライゾン3最強カードの一角でもある…で《潮流の先駆け》除去し、2/1の猫トークンアタック、そして《オセロットの群れ》の能力でエンドに1/1猫トークンを出す。
このターンの2アクションだけでみるみるライフが回復し、エネルギーも蓄積されていく

澤田「土地引かんのよなあ」

3枚目の土地を引けない澤田は《アトランティスの王》を出すが《電気放出》で除去され、更にクリーチャーを展開されたところで、

澤田「よし、次行こう」

と最終ゲームに向けて盤面を畳始めた。

一方のクロダは(初めて見るカードがあったけど)「覚えました」とクロダらしい前向きな姿勢を取り戻した。

澤田 1-1 クロダ


澤田「もう一枚《島》があればなんとかなったんだがな…」

と呟く澤田のサイドボーディングはなし。

クロダ「よくわかんないけど、これを更に入れます」と更に《過酷な指導者》を追加し、残っていた《不安定な護符》をアウト。

Game3

「先手ならキープ」と澤田。
先程の1,2Gameとは違い初動は2ターン目だが、《銀エラの達人》が含まれているのは頼もしい。

後手のクロダは、土地1枚と除去が5枚、《過酷な指導者》と判断が難しい初手だが、これは即断する。

クロダ「やりましょうかね…キープで!」

本日で一番力強いキープ宣言が決勝卓に響き渡る。
アグロ色の強いボロスエネルギーだが、最終ゲームはコントロールとして振る舞うことを決意したようだ。

ファーストアクションは澤田の2ターン目の《銀エラの達人》から。

エンドにクロダは抜け目なくフェッチランドから《山》を持ってくると、惜しげなく《銀エラの達人》に《電気放出》。

そしてフェッチランドから《平地》経由で「どれだけ効くのかわかりませんが…」と3ゲーム目にして初めて姿を見せる《過酷な指導者》を展開。

3マナを構えたままエンドする澤田。
そのままクロダの3枚目のフェッチランド起動を《ティシャーナの潮縛り》で打ち消すが、クロダは構わず《敏捷なこそ泥、ラガバン》を疾駆でプレイし、2体でアタック。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》は《ティシャーナの潮縛り》で相打ちを取られるが、クロダとしては消耗戦は望むところ、か。

ターンの返った澤田はクロダの手札の枚数を確認すると、
「一度返ってもらうか」
と《潮流の先駆け》で《過酷な指導者》をバウンス。

盤面は一進一退の状況の中、土地が2枚で止まってしまったクロダだが、デッキの軽さがそれを問題としていない
《魂の導き手》を出すと、《過酷な指導者》を再展開。

澤田は《ヴォーデイリアの呪詛抑え》から《銀エラの達人》、《海の先駆け》とプレイしていくが、クロダは初手から持つ大量の除去カードを浴びせていく。

その間にも3/4飛行となった《魂の導き手》は着実にダメージを与えていき…澤田は《焦熱島嶼域》を生贄に捧げてドローを進めるが、マーフォーク達は駆けつけるものの、飛行クリーチャーへの回答が用意できない

クロダ「これはいったか…!?

ついには5/6飛行となった《魂の導き手》のアタックに対し、澤田はなすすべなく…最後の攻撃宣言でクロダは現モダンパピー王の澤田から王の座を奪い取った。

澤田 1-2 クロダ


対戦を終えて

王の防衛ならず!
新たなモダンパピー王、第三代モダンパピー王となったのは…クロダケンタロウ!
おめでとう!

見事優勝商品の《Plateau》を手にする新モダン王クロダ
王の逆鱗に触れた撮影者に錫杖で襲いかかるクロダ
助けて

次回の第四代モダンパピー王決定戦で、この暴君を玉座から引きずり下ろすのは、あなたかもしれない!

ご参加お待ちしています!
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