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今年のナポリを表す漢字一文字は「変」であることに気付かされたリヴァプール戦 その4

前編はこちら

ヘンク戦を終えたナポリは休む間もなくトリノ戦を迎える。
前試合で覇気の無さを理由にベンチ外という憂き目にあったインシーニェが先発に復帰し、マスコミを賑わせていたアンチェロッティとの確執は噂に過ぎないことを証明しなくてはならないゲームとなった。

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このゲームでナポリはこれまでの4-4-2を【変更】して4-3-3の布陣を採用
一説にはインシーニェの不満は自分やロサーノのようなラテラルを持ち場とする選手が活きないのは4-4-2に依ることであり、ヘンク戦後に首脳陣へ直談判をし、かつてサッリが採用して成功を収めてきたメルテンスを偽9番とするフォーメーションを採用するよう要求したと伝えられている。
ユヴェントス戦以来得点から離れ、評価を下げていたロサーノにとっても適正ポジションで起用されたからには結果を出さなければならない試合となった。

ゲームは立ち上がりからナポリが主導権を握りホームのトリノを自陣に押し込む展開に。
しかし前半25分にヒサイにアクシデントが発生。
このヒサイが負傷交代するインターバルにインシーニェとアンチェロッティの間で現在のナポリを象徴する出来事が起きていた。

体調が万全ではないグラムを投入したのを契機に攻撃が単調なものになり両チームともなかなかチャンスを作ることができず膠着状態に。
結局フォーメーションを【変更】したところで良い処方箋とは成りえなかった。
サッリ時代の4-3-3はハムシクとグラムとインシーニェによる左サイドのオートマティズムが生命線であったことを改めて証明するゲームとなった。
チームの【変調】をヘンク戦で感じ取っていた監督は主将ら主力選手の希望を受け入れ【変化】を求めた実験は失敗に終わり、スコアレスドローという結果に。

そしてアンチェロッティとインシーニェの間にわだかまりが残ったまま代表ウィークに突入。
この代表ウィークの2週間は下降線を辿るチームにとっては救いになり、アンチェロッティが問題点を洗い出し立て直せるはずだと、この時点ではまだまだ楽観ムードが漂っていた。

そして代表ウィーク明けのヴェローナ戦
インシーニェとユネスの併用という新たな試み
ポーランド代表で得点したことなどで復活の兆しがあったことで先発復帰を果たしたミリクのドッピエッタで2-0の勝利

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スコアこそ2-0だったものの試合全体の内容はけして褒められたものではなかった。
被シュート数が20というのがそれを証明。
前半メレトのあの3連続セーブがなく先制されていればおそらく負けていてもおかしくない内容。

勝つには勝ったけれど上位を走るチームのような安定感を感じさせることはなく、2週間のインターバルでチームを立て直せたのか半信半疑になるような試合内容だった。

ヴェローナ戦の低調な試合内容から敵地で迎えるザルツブルグ戦はナポリにとって大きな試練であり、大方が苦戦すると予想した。
アンフィールドで派手な撃ち合いをしチャンピオンチームに惜敗したもののザルツブルグの若い選手たちは手応えを掴んでいるのは間違いない。
ナポリはリヴァプール戦で見せた強いチームとヘンク戦やカンピオナートで格下に見せるチームどちらが本物のナポリであるのか?
アンチェロッティはこのザルツブルゲ戦で証明を迫られていた。

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若くて勢いのあるチームに抗するにはどうするか?
答えは老獪さである。
ホームの大声援を受けたザルツブルグの選手たちはゲーム立ち上がりから攻勢を仕掛けて主導権を握ることは容易に想像できた。
地力のないチームであれば守勢一方になり、そのまま押し切られてしまう。
欧州戦での戦いを知り尽くしているアンチェロッティはチームに魔法を再びかける。

大人の戦いをし機先を制するのだと

ゲーム序盤からナポリはインテンシティを上げ相手の勢いを殺しにかかる
ザルツブルグの選手たちは動揺の色を隠せない。
それはつまり自分たちが思い描いていたゲームプランとは違っていることを意味していた。
ここ最近のチーム状態からナポリは守りを固めてくる
そう予想してたはず、しかし蓋を開ければ果敢に攻めてくるではないか。

ナポリの積極策はメルテンスの先制点を生みだし
ザルツブルグの選手たちやサポーターはようやく自分たちが対峙しているチームが経験豊富な格上のチームであることを悟る。

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ここから両チームは持てる力を存分に発揮しザルツブルグがアンフィールドで起こしたような撃ち合いに。
試合は一進一退の好ゲームでカンピオナートで見せるような低調なナポリの姿はそこにはなかった。
あるのは開幕節のリヴァプール戦で見せた強いナポリの姿そのものだ。
前半の終盤PKで追いつかれ折返した後半
64分にメルテンスが再び突き放すゴール

そしてアンチェロッティとの確執が連日報じられ、この試合も先発から外されたインシーニェが疲れの見えるロサーノに代わり65分にピッチに入る。
守りを固めるのではなく攻め続けなさいというアンチェロッティからのメッセージ。


72分にホランドに同点ゴールを決められた直後の73分
そのインシーニェがこの試合の決勝点を奪う。

そして一目散にベンチへ向かいアンチェロッティの下へ

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控え選手、スタッフを含むチーム全員が作った歓喜の輪、その中心にあるインシーニェとアンチェロッティの熱い抱擁。
誰しもがナポリは力強く復活を遂げたと確信した感動的なシーン。

インシーニェとアンチェロッティの試合後の談話が2人に確執があったことが事実であること
そしてこのゴールによって終止符が打たれたことを知る。


難敵を敵地で下したアンチェロッティのナポリはチャンピオンズリーグでグループ首位に立ち、チーム内の不協和音も解消され再び上昇気流に乗る。

この一戦はそのきっかけとなるはずだった。

しかし…。


つづく

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