見出し画像

今年のナポリを表す漢字一文字は「変」であることに気付かされたリヴァプール戦 その5

前編はこちら

10月24日に行われたザルツブルグ戦で勝利を収めたナポリ。
そして12月8日にこのエントリーを書いているので凡そ45日間に亘る長いトンネルに迷い込んでしまったナポリ。
そのトンネルの入り口に当たる10月27日のSPAL戦にスポットを当て振り返ってみる。

画像1

ザルツブルグ戦の先発メンバーから6人を入れ替えターンオーバーを敷いたナポリ。
先発に再びミリクが復帰。
シーズン前からこれまで離脱を繰り返し、一部の報道ではオーバートレーニング症候群ではないかと疑われていた。
先日ようやく故障の理由がグロインペイン症候群、いわゆる恥骨痛と判明したことで今後とも様子を見ながら騙し騙し使っていくしかない状態。
コンスタントに使えないことが今の得点力の低下、決定力不足に悩むナポリの状況に大きな影響を与えている一因。
シーズン前にイカルディの移籍が噂されてた時にもずっとカルロはナポリのCFはミリクであり続けると明言し信頼を寄せていることからも
今季はミリクを主軸にして前線の青写真を描いていたはずであり、得点の量産を期待されたミリクを蝕む怪我がナポリにとって大きな誤算となっているのは言うまでもない。

試合は立ち上がりからホームのSPALが攻勢を仕掛ける
前半6分にペターニャの放ったFKがクロスバーに当たって救われるなど
激戦だったCL明けで動きの鈍いナポリはまた苦戦を強いられることを覚悟しなければならないと思った矢先
前半9分にミリクの先制ゴールがあっさりと決まる。

しかし試合のペースは相変わらずSPALが握っていて
ミリクのゴールから僅か7分後
SPAL側の右サイドでインシーニェの軽い守備からパロスキにあっさり突破を許し、折り返したクロスをPA内に走り込んできたクルティッチに決められあっさり同点にされる。
あっさり点を取り、あっさり点を取られる。
この淡白さこそが今季ナポリの低迷の謎を解く鍵であることだと自分は思っている。
王者の座を目指すならばゲーム中一瞬たりとも気を抜くことは許されない。
得点したクルティッチのケアはエリア的にエルマスの担当であったが、この失点場面は完全に集中を欠いてマークを疎かにしていた。

カルロはシーズン前のインタビューで複数のポジションをこなせるプレイヤーがターンオーバーを敷けるトップレベルのチームには不可欠であると説いている。
その良い例が攻撃的MFから守備的MFへのガエターノのコンバートであったり、カジェホンの多岐にわたるタスク、ディ・ロレンツォのユーティリティ性などに見て取れる。
またファビアン、ジエリンスキの左右の配置を変えたり、今回のエルマスもカジェホンのようなポリバレントな選手に育てる方針に則った起用法の一環であった。

サッリの犯した固定メンバーに拘り疲労蓄積によるシーズン終盤の失速、控えメンバーとレギュラーの実力差が選手層の薄さに繋がってきたことを踏まえればカルロの方針に間違いはない。
ただ毎試合ネコの目のように【変わる】ポジションに選手の頭が追い付かない状況がチームとしてのコンビネーション不足として現れ、ただ味方の足元に無難なパスを繋ぐだけの単調な攻撃になり相手守備網を破れない元凶なのではないだろうか。
サッリ時代にあった選手間の阿吽の呼吸、ここに誰かが走り込んでくれているはずという信頼感からパスは面白いようにダイレクトで繋がっていった場面をこのゲームでも単発ながら垣間見ることがあったのだが。

結局ゲームはこのままスコアが動くことなく1-1で引き分けに終わる

たった3日前、ザルツブルグ戦で見せた一致団結し勝利したナポリとこれが同じチームなのか?
試合終了のホイッスルを聞き、引き分けの結果に一番疑心暗鬼になったのはファンでも選手でもコーチ陣でもなく
デ・ラウレンティス会長だったのではないか。
その疑心がSPAL戦以降膨らみ続け後の合宿令へ繋がったと考えるの普通だろう。
選手も監督も時間が経ち負傷している選手が戦列復帰さえすれば解決できるものだとこの時点では考えていたフシがある。


ナポリに内在する様々な問題が浮き彫りになったSPAL戦
負傷交代したマルクィの膝前十字靭帯断裂による長期離脱も野戦病院化したBK陣に追い打ちをかけ、招集されながらマルクィ負傷後に交代出場しなかったグラムのコンディションが深刻な状況にあることも露呈した。

この頃から昨季までナポリのメディカルチームを12年間率いてきたデ・ニコラ博士の勇退をADLが引き止めなかったことを批判する意見がメディアを賑わせるようになる。
一説によればデ・ニコラ博士の勇退は現在のテクニカルチームとメディカルチームの間で意見の相違が目立つようになってきたからとされているが真相は定かではない。
デ・ニコラ博士がインタビューで語った中に、カルロ体制になってからのテクニカルチームとメディカルチームの間に軋轢があったかのような間接的な表現があったことが自分はとても気になっている。

このテクニカルチームはおそらくカルロ体制以前のものを指している
昨季、今年3月の自分のつぶやきからもテクニカルチームが変わったことが影響しているようなものを感じ取っていた。

そしてアンチェロッティ自身が選手の怪我が多かったことはトレーニングで負荷を掛けすぎていたと、過ちであったことをリヴァプール戦の試合前日会見で認めた。


カンピオナートでは(怪我人多発により)選手の入れ替えが激しかったこともあり不安定な戦いを強いられ引き分けが多すぎた。
この傾向を改善し怪我人が出ないよう選手への負荷を掛けすぎないようする。


ADL体制になってから現在のナポリの地位を築いてきた大きな要因に選手に筋肉系の怪我が少なかったことが挙げられる。
それを長年支えてきたのは最先端のスポーツ医学に精通したデ・ニコラ博士のメディカルチームだったのである。

度重なる怪我による選手の離脱はADLがデ・ニコラ博士を辞めさせたのが原因だ!

マルクィの長期離脱を受けTwitter上のナポリっ子はこんな画像でナポリの野戦病院化を表現した。

会長はこうした批判に晒されよほど面白くなかったのだろう、手術したばかりのマルクィの病室を選手、監督、新任のメディカル担当カノニコ博士と一緒に見舞いに訪れ、チームは一枚岩であることをアピールする。

画像2


SPAL戦から3日後、昨季3位に食い込みセリエに旋風を巻き起こし、今季もカンピオナートでは上位に付け好調を維持するアタランタをホームに迎えるナポリ。
カンピオナートでのお互いの立ち位置、チームとしての格付けをはっきりさせなければならない一戦。
アタランタはCLでの不甲斐なさを、ナポリはカンピオナートでの不振を払拭するためのモチベーションが高まっている。
上位争いする権利を懸けたシーズン序盤の大一番になることが予想された。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?