ジャンケンババア

以前に大槻ケンヂのラジオに送って読まれた話なので、万が一、もしかしたら、聞いたことがあるかもしれない。ただ、大槻ケンヂにウケたということは、つまりそういう話なので、あまり気負いせずに読んで欲しい。


小学生の頃に住んでいた街は、自然豊かなところだった。住宅街と畑、田んぼが共存する、住みやすい田舎町だった。私の家の近所には、竹林と言うには小さすぎるが、竹林という他ない場所があった。四方は50メートルもないはずだ。隣にはそれなりに大きな屋敷が建っていたが、その竹林がその家の管理なのかは知らない。


その当時に仲が良かった友達は、手癖が悪かった。ノリはよかったが、私をいじめるグループに加担していたし、その上虚言癖もあった。家がほぼ真裏なのでよく遊んでいたが、彼の手癖の悪さのせいで星のカービィウルトラスーパーデラックスを買い直すハメになった。

彼はよく、あそこのアパートにはヤーさんがいるとか、あそこの駄菓子屋にはアタリの商品があるとか、そういう嘘をついて、まだ純粋だった私を騙していた。私もよく騙されたよな、あんな嘘に。
しかし当時の私の名誉のため(自分のためでは?)のために彼を弁護すると、彼はそういう雰囲気のある場所を探すのが上手かった。ヤーさんのいるアパートはずっと太陽が当たらない場所だったし、アタリがあるという駄菓子屋も非常に薄暗く、営業しているかどうか入ってみないとわからない場所だった。

話を戻そう。彼はその竹林に関しても嘘をついていた。内容はこうだ。
「あそこの竹林にはジャンケンババアという妖怪がいて、ジャンケンに負けると死ぬという条件でジャンケンを仕掛けてくる。こないだおれが勝った。」

ジャンケンババア???????????


当時の自分はそれを素直に信じて竹林を通りたがらなくなったが、今考えるといろいろおかしい。

まず、うちの学校から直近で死人が出ていない。病気で亡くなった生徒が以前にいたのだが、そのときは学校全体で非常に丁重に弔った。誰かが死ねばそういう追悼の場が設けられるはずである。もしジャンケンババアがそういうことを本当にする妖怪なのだとしたら、自分が激弱なのにも関わらず、ジャンケンを仕掛けまくる(その上死ぬ)存在になるはずだ。

もし本当にそういう妖怪がいたとして、だ。なぜ小さな小さな竹林にいるのだろうか。近くには山がある、川がある、学校だってある。妖怪からしてみれば天国のような環境だ、そちらに行けばまだ信じてもらえただろうに。

だが待ってほしい、現在のジャンケンのルール「最初はグー」を提唱したのは偉大な西部のジャンケニスト、ケン・シムラであるはずだ。ジャンケンババアは、ババアと言うからには日本青年館にいたか、あるいはそれを中継で見ていたか、そう考えてもおかしくない年齢だ。なんてことだ、これでは妖怪がドリフっ子になってしまう!ジャンケンを扱う妖怪諸君においては、見た目年齢にあわせたプレイングを心がけるよう要請したい。それにしても、妖怪にまでウケていたとは、あな恐ろしや志村けん。

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