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どうして嘘に騙されてしまうのか? -騙されない為の10の技術-


姉妹編-騙される仕組み-

↑では人が騙されやすい状況になる過程を書きました。「じゃあどうすればいいのか?」という疑問に応えたのがこちらのnoteです。

(1)因果と相関を間違えない

詐欺師「君がお金持ちになれ無いのは理由がある」

「雨が降ったから傘の売上が増える」は正しいですが、
「傘の売上が増えたから雨が降る」は間違いです。
後者は因果関係を取り違えています。

また有名な例として「ニコラス・ケイジとプール死者数の擬似相関」というものがあります。
下図の通りアメリカのプールの死者数とニコラス・ケイジの出演映画数には相関関係があるように見えます。しかしプール死者数を減らす為にケイジの映画人生を終わらせようとする人はいないでしょう。
全く無関係の数値なのですから。

出典 http://www.tylervigen.com/spurious-correlations

一見関係性があるようでも無関係だったり、
全く無関係のものが数字では関係があるかのように見えたりします。

詐欺師はこの点を巧みに利用してあなたを誤解させます。

詐欺師「その理由はこの本を買っていないから
    弁護士や記者はこの本を買っているよ」

(2)見えない糸を見ない

詐欺師「この件の裏には自民党(共産党)がいる」


何か事件があった時に「背後で〇〇が糸を引いているに違いない」と安易に考えるべきではありません。
仮定から事実を導き出す時は

「あらゆる可能性を考えてた上でその理由でしか説明が出来ないとき」

に初めて説得力を持ちます。複数の可能性を提示できる事の可能性の中の一つをさも事実かのように語ることは真っ当な陰謀論です。

詐欺師「やつらの闇は深い」

(3)敵の敵は味方じゃない

詐欺師「あなたが憎む敵を私も許せない」

共通の敵がいる事と相手が信頼できるかは全く別の問題です。例えば大阪で自民党と共産党は「維新」という共通の敵がいるので組んでいましたがお互いに全く信頼していないのは明らかで本人たちも自覚しています

ところがSNS上では共通の敵を持つという点でしか繋がりが無い人同士が比較的強固に見える信頼関係を形成しているシーンが散見されます。
大阪の例を見れば分かる通り、共通の敵がいると水と油のような関係性でも偽りの一体感を持つ事ができます。しかしその一体感はきわめて危ういものです。そのフォロー&フォロワーの相手は本当に大丈夫ですか?

詐欺師「同じ志を持つあなたに会えて嬉しい」


(4)伝聞を疑う

詐欺師「友人の看護師の子供の話です」

上司との面談での語りが実体験からではなく「本で読んだ話なんだけど」「知人の話なんだけど」で始まるストーリーばかりだったらシラける人がほとんどでしょう。

ところがSNSでは「知人から聞いたのですが…」から始まるスキャンダルなストーリーがさも事実かのように拡まり、そのスピードはスキャンダラスであればあるほど速まります。
この話法の良いところは突っ込まれても「聞いた話だから詳細は答えられない」と交わす事が出来て、仮に有り得ない嘘だとバレても「知人に事実を確認しておきます」と本人はノーダメージで切り抜けられる所です。詐欺師は嘘をつきなれてるのでバレた時のダメージコントロールも巧みです。

本人の実体験風の嘘がありふれている時代です。「知人から聞いた」という枕詞を見た瞬間に最大レベルの警戒をして話半分に聞きましょう。

詐欺師「知人の友人の同僚の母の話なんですが」

(5)自分の頭で考えない

詐欺師「私を信じないで。あなたが決めて」

世間はとても広く現実でもSNSでも知らない世界への扉がたくさんあります。
そこには自分の考えと異なる意見もたくさんありますがそれに対して

「常識的に考えてそれは無い」
「そんな事は誰が考えても分かること」

などと言ったりするのはやめましょう。
個人の常識が他人の常識であるとは限りません。
当たり前が当たり前じゃ無いかもしれません。

違和感を覚えたらいきなり頭で考えて結論を出さず、まずは本や文献をあたって調べましょう。そこで知識や知見を得てから初めて自分の頭で考えても遅くはありません。詐欺師は調べようとしない不勉強さを狙ってきます。

※「調べる」といってもテクニックが必要なのでいきなりは難しいかもしれません。とりあえずスマホをポチポチしただけとか、YouTubeで探そうとするのはやめてください。

詐欺師「あなたが自分で決めたんですよ?」

(6)発言者の属性を確認する

詐欺師「◻️◻️◻️◻️◻️◻️」

世の中には言葉を一切聞き入れる必要がない輩が存在します。そのような相手の情報は一切遮断するしかありません。なるべく多様な意見は取り入れるべきなのでハードルは超高めに設定します。どのような相手かと言うと

「情報操作のために自覚的に嘘をついている」

人物です。
例えば「宗 文洲」さん。
中国は情報閉鎖の為にTwitterを全面禁止にしているのですが何故かこの方は中国共産党からお目こぼしを貰って中国からツイートをしています。

内部の人なので日本にいては知れない興味深いツイートもあるでしょう。しかし実態は中国共産党のスポークスマンであり、その中から本当と嘘を見分ける事など徒労以外の何ものでもありません。
このような人物のツイートは見るべきではありませんしRTなどしようものならリテラシーの低さをひけらかすようなものなので絶対にやめましょう。

またくれぐれも「このひと嫌いだから意見を聞く価値がない」などとは思わないようにしてください。遮断のハードル設定は高めに。

詐欺師「検閲済検閲済」

(7)反対側の意見も確認する

詐欺師「みんな同じ事を考えてるね」

「エコーチェンバー」という言葉をご存知でしょうか。笠原(2018)によると以下のように定義されます。

ソーシャルメディアを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくるという状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえたものである
笠原和俊『フェイクニュースを科学する』

つまり、好きな人同士で繋がれる特性を持つSNSでは自然と同じ意見ばかりが集まるようになる、ということです。

実生活において「対話」「相互理解」が重要である事は言うまでもありませんがSNSでも同じです。自分と異なる信条、政治思想、価値観を持つ人をフォローしろとまでは言いませんが1日1回ぐらいその属性を持つひとの中で1番話が分かりそうな人のツイートを見てみる…ぐらいをしておきましょう。
すると視野が広がり、

"その世界にどっぷり浸かってる人じゃないと信じないような話"

という詐欺師の手口を疑えるようになれます。

よく聞いた事があるのではないでしょうか。

被害者「いまとなっては信じられないんですけど…
あの時は本当だと思ってたんです」

(8)正義と悪を肥大化させない

詐欺師「私の人生を懸けて悪を倒します」

勧善懲悪のストーリーはいつ何時どの時代でも好まれてきました。私自身も大好きです。

ただしこれは娯楽として受け入れやすいエンタメの世界の話です。現実世界に単純な勧善懲悪はありません。少し歴史を紐解けば悪政を敷いた政権を引き摺り下ろした英雄が次の悪政を敷いた例がわんさか出てきます。

"正義側"の人が全てにおいて清い事はありません
"悪側"の人が全てにおいて汚い事はありません

あの人の事だから違和感はあるけど信じられる
あいつの事だから悪い事をしてるに違いない

詐欺師はみんなが大好きな勧善懲悪の楽しい世界観を用意してくれます。そこであなたは詐欺師が販売するチケットを買う事で悪を打ち倒すフィクションの一員になる事が出来ます。
例え"正義"も"悪"も存在しなくても。

詐欺師「私と契約して正義勇者になってよ!」

(9)情報ソースを確認する

詐欺師「アメリカの研究によるとこの薬は毒です」

フェイクニュースの手口は年々巧妙になっており、
初期のものはぱっと見で分かる虚報でしたが昨今は見抜く事が難しくなってます。またいま起こっている戦争でのフェイクニュース合戦を完全に見抜く事は素人には現時点では不可能です。
しかし詐欺師がよく使う手段はあるので紹介します。

・「海外の研究所が発表した」といって要約をツイートするがその記事は存在しない。〇〇はほぼ海外のサイト

・本物の研究所や報道機関の英文記事URLを記載した上でその和訳を掲載するもその和訳が嘘、もしくは強引な解釈

・「ある学校で大事件が起きたが隠蔽されている」と言うも当該地域の学校で生徒から保護者に至るまで一切その問題を口にしていない
(親はともかく子供の口を完全に塞ぐのは幼稚園でもないかぎり不可能。モンペの口を塞ぐのはもっと不可能)

どれも情報源を自分で探れば真偽が分かる問題です。海外の情報でもChromeやDeepLで翻訳してくれるので大丈夫です。
「おっ!興味深い情報!」とシェアしたくなったらその興味レベルが高いほど「好奇心を狙い撃ちしたフェイクニュースでは?」と疑う気持ちを持って情報ソースを調べましょう。


詐欺師「信じてくれる人が信じてくれればいい」

(10)断言の連発を疑う

詐欺師「そんな事は当然言うまでない。断言します」

「分かる」という言葉の意味は物事を「分ける」事です。それは「分からない領域」と「分かる領域」を区別できる事でもあります。

どんな専門家でも担当している分野を全て理解している事はありません。そこで専門家が不明の領域について「分からない」と答えると不安を覚える人がいます。しかしそれは分かっているからこそ言える誠実な答えなのです。

しかし、詐欺師は違います。
大多数の人間は断言する人を信じてしまうのを理解しており、かつ自分が分かっていないので「分からない」と答える事ができません。分からない事に対しては適当な予測で断言します。

なんでも分かった風に断言する人は分かっていない事を分かっていない可能性が高いです

詐欺師「当たり前の事は説明しません。勉強しろ」

終わりに


まとめます
(1)因果と相関を間違えない
(2)見えない糸を見ない
(3)敵の敵は味方じゃない
(4)伝聞を疑う
(5)自分の頭で考えない
(6)発言者の属性を確認する
(7)反対側の意見も確認する
(8)正義と悪を肥大化させない
(9)情報ソースを確認する
(10)断言の連発を疑う

以上が私が実際に実践している騙されない為の技術です。

一つ一つは当たり前の事ですが全てを一通り行えばそうそうSNSの嘘に騙される事はなくなるはずです。
なんでこんな知識あるかって?
いっぱい騙されたからですよ!私が!!!
仕組み編の主人公は私です

最後に私が大好きな「情報」に関するスピーチを紹て終わりにします。

2015年 東京大学 教養学部 学位記伝達式での石井洋二郎学長の式辞です。

本当に学びが多いスピーチかつ美文なのですらすら読めるので是非!!

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