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音楽の趣味が変わった

この記事について

私事だが、昨年5月にSpotify Premiumを利用し始めて一年と少しになる。この一年で従来の自分と比べると随分広範な音楽を聞くようになり、自分の趣味が変質したことを実感しているので、この辺で一度きちんとした記録をつけてみる。

従来の音楽の趣味について

変化を話題にするには、変化する以前の状態についても説明しておく必要があるだろう。
自分の音楽の趣味の原点は、スピッツにある。中学校に通った三年の間に聞いた音楽のうち、半分以上はスピッツによるものだった。端的な言葉にすると、スピッツのバンドサウンドと、草野マサムネの書く繊細な詞が自分の趣味の根底にあると言えるだろう。

次に自分の音楽の趣味に影響を与えたのは、ボーカロイドに纏わる音楽シーンだ。自分がボーカロイドに凝った時期は主として2016年から2019年の四年間、年齢としては中学三年生から高校三年生にあたる時期である。当時を代表する"ボカロP"としては、DECO*27、ナユタン星人辺りを挙げるのが妥当だろうか。

最後に、大学に入ってからの音楽体験を総括すると、やはり大きな地位を占めてくるのがアイドルマスターだ。入学初年にうっかりアイドルマスターシャイニーカラーズという謎のゲームに手を出して以来、本当に色々な経験をした。プロジェクト全体の曲数が大体1500曲程度だそうで、少なめに見積もってもその半分、800曲ほどの全く新しい音楽に2年程度で触れたことになると思う。

ラップについて

大学に入ってから得た新しい人間関係の中で、人生で初めてヒップホップや、ラップというものに触れた。初めてそれがヒップホップというジャンルの音楽であるということを意識して耳にした曲は、友人がカラオケで歌っていたCreepy Nutsの『バレる!』である。多分。
初めて聞いた時の感覚はぼんやりとしか覚えていないが、とにかく相当な抵抗感があったのは確かだ。音楽に関する語彙が乏しいのではっきりと言葉にすることはできないが、とにかくメロディに沿わずに歌詞、と言うかリリックを連ねるということ自体に違和感があった、と言えば伝わるだろうか。
更に言えば、ヒップホップのリリックに使われる言葉遣いにも大きな抵抗感を覚えていた。カウンターカルチャーとしての歴史的経緯から、相手へのディスが文化として重要な地位を占めている(と理解している)ヒップホップのリリックは、スピッツで育った自分にはなかなか馴染みのないものだったのだ。
だから、この記事の主題である「音楽の趣味が変わった」というのは、ヒップホップやラップに全く縁のなかった人間が、徐々にそれらの音楽を好み、積極的に聞くようになった、ということを意味している。

「受容」について

この記事を書くに至った根底にある事情として、2022年の自分はSpotifyを利用するにあたって、「様々な音楽に触れよう、音楽の趣味を拡げよう」という目的意識を明確に持っていた、という話がある。
出来るだけ未知の音楽に触れようとすることは前提として、その中であまり自分の趣味には合わないと感じた曲でも、少しでも好きになれる部分はないか、他人はこの曲のどのような部分を高く評価しているのかを探ろうとする姿勢を出来るだけ持つようにしていた。その中で、初めは好みに合わないと感じていた曲を段々と好きになる、良いと思えるようになるという変化が数回見られた。この記事では、このような変化のことを「受容」と呼んでいる。自分の趣味の埒外にあった音楽を、自分の趣味の一部として受け容れる、というような意味合いだ。

お気に入り曲に見る2022年度

漸く本題に入る。ここからは、Spotifyのお気に入りの曲機能から、自分がどの時期にどんな音楽と出会い、「受容」したのかを月ごとに振り返っていく。

2022年5月

DiverDivaの『Eternal Light』。DiverDivaは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会内のユニットの一つで、朝香果林と宮下愛の2人により構成される。楽曲の方向性はEDM系からバラードまで幅広いが、殆どの楽曲に宮下愛によるラップが挿入されることが大きな特徴だ。
Spotifyの導入を決めた大きな理由として、5月14日、15日に行われたバンナムフェス2ndで、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会や電音部に触れたことが挙げられる。というわけで、初めのうちは虹ヶ咲や電音部の音楽に多く触れていた。

2022年6月

電音部の『いただきバベル』。電音部に関する説明はここでは割愛する。この曲はトラックメイカーのケンモチヒデフミが手掛けている、黒鉄たまのソロ楽曲。

2022年7月

nyankobrq & yacaの『twinkle night feat.somunia』。nyankobrqとyacaはそれぞれがトラックメイカーやラッパーとして活動している人物で、somuniaは楽曲制作を中心に活動する、所謂バーチャルシンガー。この曲はYoutube上で700万回再生を記録した、Vシンガーにまつわる音楽シーンを代表する楽曲の一つである。
この時期からこうした、Vtuberの文脈を持つ音楽に凝り始めた。

2022年8月

KMNZの『WE ARE BACK』。KMNZ(ケモノズ)はLITAとLIZからなるバーチャルHIP-HOPガールズデュオ。この曲はアイドルラップグループのプロデュース等を行うE TICKET PRODUCTIONが手掛ける、アルバム『KMNSTREET』のリード曲。
Vtuber文脈の音楽に一通り触れて、Vtuber系女性ボーカルの特徴を持ちつつヒップホップ方面を志向するKMNZの音楽を好むようになったのがこの時期だ。KMNZは歌ってみた活動にも意欲的なユニットで、LITAを中心にヒップホップの名曲をいくつかカバーしており、スチャダラパーの『サマージャム' 95』やKICK THE CAN CREWの『クリスマス・イブ Rap』等に彼らを通じて触れることができた。

2022年9月

Liella!の『Day1』。Liella!は『ラブライブ!スーパースター!!』作品内に登場するスクールアイドルグループで、この曲は作詞・作曲をラッパーのKEN THE 390が手掛けており、本格的なラップとアイドルソングとしてのメッセージ性の調和が成されていることが特徴的だ。
この曲をきっかけにしてKEN THE 390というラッパーと出会い、彼の関わる音楽に一通り触れた。この時に初めてCreepy Nuts以外のヒップホップを本業とするアーティストに親しめたことは、後から振り返ると大きな意味を持っていた様に思う。

2022年10月

ヒプノシスマイクの『If I Follow My Heart』。ヒプマイの音楽には以前から興味を持っていたのだが、今ひとつ自分の感性に馴染んでいなかった。その大きな理由の一つが、「ディビジョン毎に分かれてラップバトルで戦う」というコンセプトの都合上、お互いを強い言葉で貶しあうような言葉遣いが多用されることだ。その点においてこの曲は、天国獄という人物の内省と独白がリリックの主体を成しており、自分にとっては非常に受け容れやすかった。自分がヒプマイの音楽を「受容」することができたきっかけはこの曲にある、と言って差し支えないだろう。

2022年11月、12月

ぼっち・ざ・ろっく!の影響で邦ロックに凝り、結束バンドやASIAN KUNG-FU GENERATIONを聞いていた。

2023年1月

水曜日のカンパネラの『赤ずきん』。水曜日のカンパネラは、トラックメイカーのケンモチヒデフミとボーカルの詩羽による音楽ユニット。
電音部のエリアミーティングというイベントでケンモチヒデフミのDJプレイを間近で目にする機会があり、この時にケンモチが掛けた曲の中に入っていたのが、当時まだ未発表だったこの曲だった。ケンモチのDJプレイはそれはそれは素晴らしく、これを機に水曜日のカンパネラの音楽にもかなり積極的に触れるようになった。水カンの音楽を一つのジャンルに収めて語るのは難しいが、ヒップホップの要素も含んでいることは確かだろう。

2023年2月

chelmicoの『Easy Breezy』。chelmicoはRachelとMamikoから成る日本の女性ラップ・デュオ。
この時期まで来ると、それなりにヒップホップの風味が前面に出されている音楽でも、特にボーカルが女性であれば問題なく「受容」できる、というか寧ろ好んで聞くようになっていた。

2023年3月

BOOGEY VOXXの『Bang!!』。BOOGEY VOXXはCiとFraによるバーチャルユニットで、フランケンシュタインのFraによるラップパートが楽曲の大きな特徴である。
実はぶぎぼには昨年12月辺りで出会っていたのだが、当時の自分にはまだFraのラップが強烈すぎて受け付けなかった。それが、暫く聞き続けることで徐々に耳に馴染むようになり、この頃には完全に「受容」することに成功したのだ。

2023年4月

TOPHAMHAT-KYOの『Princess♂』。トップハムハット狂と言えば、『ウタカタララバイ』を手掛けた日本のラッパー、トラックメイカーだ。実は、この曲に出会ったのはONE PIECE FILM REDが一斉を風靡した昨年8月頃、友人から「『ウタカタララバイ』を書いた人」の代表作としてこの曲を紹介された時のことである。当時初めて聞いた時はかなりの拒否感を覚えたこの曲を、素直にかなり良い曲であると感じて楽しむことが出来ていることに気がついた。FAKE TYPE.の音楽を「受容」できた、という体験はこの記事を書く大きな動機になったように思う。

ここまで挙げた楽曲の特徴を簡単に総括してみると、まず初めはラップを取り入れたアイドルソングから親しみ始め、それから徐々にVtuber文脈の音楽の中でヒップホップの要素を持つものに手を広げ、最終的にはヒップホップというジャンルに分類される音楽を「受容」することに成功した、という流れを語ることができるだろう。2022年、ラップを聞けるようになったという点で無駄ではなかったのかもしれない。


長い記事にお付き合いくださり、ありがとうございました。「ラップ聞けるようになったかも」の一言で済む話で4,000字も並べちゃって既に赤面モノですわ、という気もしないではないですが、書いてよかったと思う。多分。

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