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三様

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 UNIT LIVE! ~R3BIRTH R3VOLUTION~ DAY1の感想文です。

はじめに

※画像は全てインターネットから適当に拾ったものです。著作権も何もあったものではありません。申し訳ない限りです。
※筆者は虹ヶ咲にはアニメ・楽曲・一部のライブ映像でしか触れておらず、スクスタは全くプレイしていません。そもそもラブライブ!というコンテンツとの関わりがとても浅いです。そのために至らない部分、不快にさせてしまう部分もあるかと思います。お許しください。

以上の点を理解した上でお読みいただければ幸いです。


総評

考えうる限りで一番良い体験をできたと思う。ぼくの虹ヶ咲というコンテンツへの親しみ方の深さとか、演者の経験の深さとか、そういう今しかないものの巡り合わせがたまたま一番良い形で噛み合って、この体験があった。冗談みたいな言い方になってしまうけど、これまでの全てに感謝とか、そういう気分。

ファンというのは残念な生き物だから、あるコンテンツにある程度深く親しむと、ついつい過去の公演と比べて引き算をしてしまったり、どうでもいい些細なミスを見つけられるようになったりしてしまう。その段階を乗り越えて、演者自身の小さな成長とか、公演内では言及しない小さなこだわりとか、そういう部分も全部把握して愛するようになってからがファンとしての本番で、その過程をいかにして楽しむかという事はこれからの人生において大きな課題になるなんだろう。でも結局、”初めて”の感動に勝てる物なんてないとも思う。これまでを振り返っても、一番感動した配信ライブは初めて声優ライブというものに触れたシャニ2ndだし、一番感動した現地ライブは初めて現地参加したシャニ4thのDay1に決まっている。
また、”初めて”が大きな意味を持つという点は、演者についても同様だ。ライブの度に「初披露」という文言がインターネットを賑わせるように、ある曲を会場で初めて披露するということ、引いてはあるキャラクターとしてのパフォーマンスを初めて披露することは、それだけの重さを持っている。全ての体験は初回の体験との比較を免れられない。
長くなってしまったが、初めてという体験はそれだけ貴重なのだ。

今回のR3BIRTHのライブは、基本的にどの部分も初めてではなかった。もちろん初披露になる楽曲はいくつかあったが、ぼく自身が虹ヶ咲のライブを見るのは4回目くらいになるし、R3BIRTHのユニットとしてのパフォーマンスに限っても3回目。演者の三人も、虹ヶ咲としての初舞台から一年くらいは経過して、流石に初々しいという言葉は似合わなくなってきている。
しかし、それでも今回のライブは、間違いなく最高の体験だった。ぼくの方でも、stars we chaseという楽曲を知った上でToy Dollを好きになった経緯を持っていたからこそ生まれた感情とか、小泉萌香さんや法元明菜さんの前回のパフォーマンスを知っていたから見えた部分といった、今の自分だけの宝物が間違いなく存在した。演者の方でも、初舞台だったファンミーティングを経て、そこからひとつもふたつもステップアップして、思いっきり背伸びしたパフォーマンスを見せてくれたんだろう。初めてという特別に頼らずに、たまたまその時の巡り合わせがうまくはまって、最高の体験ができた。これはなかなか得難いものだったと思う。

前半

ライブの話に戻ろう。こんなに冗長性というか、余裕のないセットリストは初めて見たように思う。出演者はたったの3人だというのに。

手始めに、初披露曲三つを冒頭でかましてくる。「かます」という言葉をあえて使おう。MONSTER GIRLSのサビ冒頭で叫ばれる言葉で、個人的にはR3BIRTHというユニットを象徴する一言のように思っているから。
肝心のパフォーマンスは、まさに三位一体という素晴らしい完成度で、3曲だけで既にライブを一本見終わったかのような満足感だった。これがまだまだ幕開けにすぎなかったわけだから、凄まじいライブだったという話。


いつもの全体曲と幕間を挟んで、Eutopia。正直幕間の「生首ドラマ」はあまり文化として馴染みがなくて、そこまで良い印象はないのだけれど、それを打ち消してなお余りある法元明菜さんのパフォーマンスだった。Eutopiaという超が付く名曲をこんな風に使うのはあまりにも贅沢だとは思うけど、上手な贅沢は美味しいものだ。

ステージに立っている鐘嵐珠さんは、実際に目の前にしたらとてつもない迫力があるんだろうと想像している。本当に自分と同じ生き物なのか、思わず疑ってみたくなってしまうような。一方、法元明菜さん。独特の空気感をまとってはいるものの、どちらかというと小柄な彼女と、スクールアイドルとして圧倒的な存在感を放つ鐘嵐珠の姿は、なかなか被らない。
しかし、Eutopiaをパフォーマンスしている法元さんは、まさにその、鐘嵐珠特有の存在感を体現していた。
ひとつには、衣装の力もあるだろう。チャイナドレスに陣羽織を重ねたような不思議な構造をしているこの衣装、アニメで初めて見かけた時は軽く首を捻ったものだけれど、こうして見るとちょっとあり得ないくらいにステージ映えが良い。大ぶりな振り付けに沿ってひらひらと舞う衣装は、法元明菜さんを鐘嵐珠たらしめる大きな要素になっている。
今回の法元明菜さんのパフォーマンスを語る上で忘れてはいけないのは、ふとした時の細かい仕草のかわいらしさ。「かわいいのにかっこいい」「かっこいいのにかわいい」なんてアイドルの魅力の基本の「き」ではあるけども、基本だからこそ、強い。法元明菜さんの細かい仕草の数々から、スクールアイドルとしての鐘嵐珠の佇まいが余すことなく伝わってくる。
こうして仕草や振り付けといった細部に集中することができるのも、法元明菜さんの歌唱とダンスがあまりにもブレないから。とても自然にそこに現れて、鐘嵐珠として歌って、踊って、帰っていく。演じていることすら忘れさせる、圧倒的な完成度だった。こんなパフォーマンス、なかなか見られる物ではない。
これら全ての要素が合わさって、スクールアイドル・鐘嵐珠のステージが描き出されていた。この日ぼくは間違いなく、鐘嵐珠そのものに出会ったのだ。

Eutopiaの個人衣装



小泉萌香さんは俳優だ。別に比喩でもなんでもなく、実際に舞台に出演されたりもしているから俳優であることに違いはないんだけれども。前段で言及したように、法元明菜さんは本物そのものをやっている。内田秀さんは声優をやっている。そして、小泉萌香さんは俳優をやっている。と思った。
小泉萌香さんは背がとても高くて、四肢がほっそり長い。いわゆるモデル体型であると言えるだろう。その佇まいだけで100点満点に舞台映えするから、彼女がひとりでステージに現れると、まるで彼女が主演の歌劇でも見にきたかのような気分にさせられる。
EMOTIONのサビ終わり、心の扉か何かを開けるような印象的な振り付けで、何度も顔面を正面から抜かれる。こうやってバストアップで映された時に、こんなに表情のバリエーションが多い人はなかなかいない。一般的な声優さんが自分にキャラクターを投影した表情を何パターンか持っているとすれば、この人はキャラクターを演じたままそれを自由自在に動かしているよう。表情で、歌声の震えで、細かな所作で、精一杯に三船栞子を演じている役者さんなのである。
MCで素の笑顔を見せてくれる時、少しだけ安心している自分がいる。 画面の向こう、次元の向こうに吸い込まれてしまったような小泉萌香さんが、ちゃんとこちらと地続きな舞台に足をつけていることを再確認できるから。

翠いカナリアのパフォーマンス中に、俯いた姿勢からふっと顔を上げる振りがある。ピンマイクのズレを直そうとしたのか、口元に手を当てている。一瞬だけ演技に理性が入り込んだような、三船栞子と小泉萌香さんの中間のような表情。あれは恐らく笑顔ではなかったけど、個人的には「キラースマイル」という言葉が相応しいような、一瞬で虜にさせられるようなものだった。
三船栞子もきっと、パフォーマンス中のふとした瞬間のこうした表情が冴え渡っているんだろう。普段は少し頼りない、危ういところのある栞子が、鐘嵐珠のような圧倒的な存在感も、ミア・テイラーのような露骨な程の才能もない、時に普通の日本人の女の子のようにも見える三船栞子が、R3BIRTHの一員として二人と対等に渡り合える所以の一部分を見た気がした。

EMOTIONのサビ終わりの振り付け


前段で一度触れたが、内田秀さんは声優をやっている。精一杯ミア・テイラーを演じているところは小泉萌香さんと変わらないように見えて、この人はまた別のことをやっている。ように思える。ミア・テイラーという14歳の、虹ヶ咲の中でも飛び抜けて幼い女の子に寄り添って、彼女のパフォーマンスを意識的に表現している。ミア・テイラーならどうする、どう歌う、どう動くかを一つずつ考えて実践しているような。だからと言うか、たまに”抜け”がある。ユニット曲で自分の歌唱パートが終わって、次の自分のパートを待っている時なんかに、ミア・テイラーとしてというよりは、内田秀さん本人として、小泉萌香さんや法元明菜さんのパフォーマンスを見守り、次に備えている瞬間がある。一瞬だけ表情が抜けて、横目で二人の方に目をやっている。褒めているようには聞こえないかもしれないが、ぼくにはこの瞬間がたまらなく愛おしい。ミア・テイラーとしてのパフォーマンスと内田秀さんとしての振る舞いが見事に同居していて、これは声優として最高の仕事なのではないか。きっと声優はキャラクターに寄り添って、キャラクターの隣で歌ってみせる仕事だと思うから。

内田秀さんの話をしたから、内田秀さんを通して受け取った、ミア・テイラーの話もしておこう。stars we chaseのアニメMVの一コマ。目を軽く細めて、限りなく幸せそうに歌う女の子。天王寺璃奈に手を引かれてトラウマを乗り越えたら、そこには歌うことが大好きな天才的な14歳が立っているから、ミア・テイラーのパフォーマンスは本人が本当に楽しそう。こちらとしても、ファン冥利に尽きるという気持ちにさせられる。
Toy Dollはミア・テイラーのそんな一面にフィーチャーした一曲で、stars we chaseのサビの一番美味しいところだけで一曲できてしまったという味がする。(恐らくToy Dollの方がstars we chaseよりも先に発売されているはずだけど、ぼくはアニメを通じて虹ヶ咲に触れた人間なので、そういう感想を抱くことを許してほしい。)そういうテーマの曲だと言って仕舞えばそれまでなんだけど、Toy Dollを歌うミア・テイラーさんは、本当に楽しそうで、一緒に歌っている内田秀さんも楽しそうで、もちろんぼくたちも楽しくてたまらないから、快楽の濁流で全てが押し流していくような強さがある。
そしてA little lower, oh! Right there!の部分のズルさ。何を言ってるのかよく考えたことはないんだけど、楽しいという感情は言語を超えるということだけはわかる。ミア・テイラーと内田秀さんが楽しそうでなによりだった。本当に。

stars we chaseの一コマ

後半

ここからは先はお祭りである。お祭りの話をするのは難しい。結局その場の雰囲気以外の何者でもないから、こうした事後的な説明には起こせない要素が大きすぎる。
Toy Dollに始まった快楽の濁流を加速し、増幅するためのありとあらゆる仕掛けの数々だった。繚乱の前のダンスパートだったり、ミラクル STAY TUNEのセリフパートでちょけてみたり、動物に乗ってみたり、ノーツに合わせてみんなで踊ってみたり。何もここまでしなくても、とっくの昔に100点は超えていて、何を感じればいいのか正直よくわからなかったけど、それでいいのだろう。快楽の濁流にできるだけ全員で、できるだけ長く身を任せることができるように、あらゆる手を尽くしてくれていることだけはわかる。本当にありがとう。

シャッフルパートに関しては、誰がどれを歌うことへのエモなんかが少なからずあるんだろうけど、ぼくにはそこに言及する力がないから、ここでは割愛する。コンセントレイト!の内田秀さんとミア・テイラーが本当に楽しそうで嬉しくて、そしたら小泉萌香さんも法元明菜さんも楽しそうで、演者の幸せが一番伝わってきた瞬間だったように思う。

MONSTER GIRLSをここまで温存してみせたのは、改めて冷静に考えて、凄まじい事だ。恐らく一番パフォーマンスすることに慣れていて、観客の盛り上がりも期待できて、最もコストパフォーマンスが優れている曲。アンコールで使ってもいいし、開幕で使ってもいいし、中弛みを叩き直すのに使ってもいい、最高のワイルドカード。この曲を、Toy Dollから始まるお祭りの一番最後、もう何をやっても楽しい魔法の時間に持ってきた。この曲なしでここまで盛り上げられる楽曲のバリエーションの多彩さであり、演者の力量であり、それらを信頼してこの曲を温存した采配の妙だと言える。
実際にライブで受け取ってみれば、これが最大値であり、ベストな選択だったことはすぐにわかるけど、なかなか思いつくことではないし、実行することでもない。セットリストに本気で感心しきってしまう、なかなか珍しい例だった。

Love U my friends、トワイライト、Hurray Hurrayの3曲。歌詞割りをよくよく聞いていると、キャラクター3人の演劇を見ているようで、泣いてしまう。
楽曲単体で聴いた時にはよくわからない、ふわふわとした言葉の並列としてしか聞こえなかった歌詞が、ここまで素晴らしいライブを展開してきた栞子・嵐珠・ミアの掛け合いとして改めて提示されることで、具体的なメッセージとして心に入り込んでくる。トワイライトで「また会いましょう!」と言って観客とはお別れして、Hurray Hurrayでは最早3人の帰り道を見送っているような。
ここまでの勢いを失速させないまま、エモーショナルなのに意外とハイテンポで明るい、虹ヶ咲の全体曲B面特有の雰囲気をまとって、鮮やかに幕が引かれた。
こんなに完璧なセットリスト、完璧なライブ、なかなかないというか、初めて見たというか。たくさん貰ってしまった宝物を大事に整理して、あわよくば文章にして保存したいなとか、ライブが終わった前提の思考を回し始めていた。

こんなに完璧なライブに何を付けても蛇足だろうし、画面もライブのロゴで固まったままだし、アンコールなんてあるわけない。みんなずっと拍手してるけどアンコールはないと思う。本当にすごいライブだったから拍手くらい何時間でも付き合うけど、アンコールはないと思うよ。
「今以上に幸せのイメージ浮かばない」んだよ。もうライブ終わりだって。ほんとに。


Viki-viki-viki-viki-vika.....

嘘だぁ。

アンコール

きっとこれが、Vroom Vroomを一曲目に持ってきたもう一つの理由だったのだろう。返す返すも素晴らしい、考え抜かれたセットリストだった。

「まだまだ発展途上」という歌詞が耳に入り、はっとする。今日のライブが、R3BIRTHというユニットの現時点での最高のパフォーマンスだったことに疑いの余地はない。でも自分たちの最高点はこんなものではなくて、別にこれが最後のページでもなくて、R3BIRTHの物語はまだまだ続いていくから目を離すなと。そういうメッセージとして、このアンコールを受け取った。

本人たちも言っていたように、今回のライブは本当に限界に挑戦していたんだろう。アンコール内のMCでの小泉萌香さんには、珍しく露骨に疲労の色が見えていたし、内田秀さんも一瞬でも気を抜いたら笑顔が抜けてしまうような、ステージに立てるかどうかの瀬戸際にいるような表情だったように記憶している。
本当に精一杯、最大限に背伸びしたパフォーマンスを届けてくれたことが痛いほど伝わってきた。

そんなことを考えていたら、夢が僕らの太陽さ が流れ始める。こちらの思考を先回りするかのように、「今日もいっぱい 力を出し切ってみるよ」と歌われて。

どこまでも行けるかはわからないけど、ぼくだって、力を出し切って前に進まなきゃなぁと、三人から、そして六人から、しっかり背中を押されてしまったような気がした。

おわり

ぼくにとってはそんなライブでした。小泉萌香さん、法元明菜さん、内田秀さん、そして見る機会を作ってくれた友人たち、本当にありがとう。感謝しています。

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