国民年金保険料の学生納付特例制度~猶予分は追納した方がいい?

 国民年金保険料は20歳到達月から納付が義務付けられるが,学生の場合は学生納付特例制度で納付を猶予してもらうことができる。ここで,

  「減免」ではなく「猶予」

なので,卒業(修了)後は,社会人としての保険料納付の義務が復活する事に加えて,猶予期間中の保険料の追納が求められることになる。追納できるのは猶予承認年月から10年目の当該月より前までで,猶予承認期間の翌年度から3年度を超えると加算金も払わなければならない。従って,3月卒業(修了)後3年以内に追納を申請・開始・完了すれば,加算金を払うことなく将来の国民基礎年金を満額受給できる資格を得るのだが,新社会人の給与では,学生分(追納)と社会人分(本納)の二つの年金保険料の支払いが厳しい負担になることは想像するに難くない。また,概して,学部卒であれば猶予期間は2年だが,大学院博士課程まで進学すれば7年となり,浪人や留年,海外留学などで更に長くなれば,3年以上の猶予分を3年以内で追納するのは更に厳しい負担になるだろう。
 このため,追納は義務ではないことから,減額受給になる事を承知の上で追納しない選択があるが,この選択をした場合,追納保険料は受給減額(差額)分何年分になるかを超概算してみた。

  ①実質年追納保険料:約16万円
    →追納年保険料:約20万円から社会保険料控除で約4万円税還付
  ②年受給減額(差額)分:猶予期間(未納)1年ごとに約△2万円
    →40年間(20歳~60歳)完納で年受給満額:約80万円の年数割

   ⇒【①実質年追納保険料】÷【②年受給減額(差額)】=約8年

 従って,現状の受給開始年齢は65歳なので,生々しい書き方をすれば,

  約73歳以上長生きしなければ追納保険料は回収できない

ということになる。当然,将来的に受給開始年齢が更に繰り下がることになったら,その分さらに長生きしないと回収できないということになる。

 日本人の平均寿命は80歳以上なので,追納したほうがいい(お得)ということが一般論として言えるが,約73歳以降の「お得」額は猶予1年ごとに約2万円なので,例えば,
  学卒(猶予2年):月額約3400円
  修士修了(猶予4年):月額約6700円
  博士修了(猶予7年):月額約12000円程度
となり,この「お得」のために,卒業(修了)後3年目までに新社会人とっては決して安くない追納保険料を納付するかは,懐具合(給与)をみて一考してもいいのではないかと思う。

 なお,国民年金保険料の納付は,世帯所得に応じた減免制度(全免,1/4,1/2,3/4減額)があるが,学生はその該当世帯の一員(生計を一にしている構成員)であっても利用できず,学生特例制度による猶予しか認められていない。すなわち,親は減免を受けているのに子(学生)は受けれず,減免を受けてる親が子(学生)の保険料全額を立替払いできる訳もなく,結局,子(学生)は猶予申請し,将来に「ツケ」を回さざるを得ない,というおかしな制度となっていると思う。そもそも,学生は無収入で,親が扶養しているのが一般的なのに,学生自身に保険料納付を義務付けているのはおかしな話で,全免にするのが相当ではないだろうか。最近,社会人の奨学金返済負担を免除・軽減すべきとの話が聞こえてくるが,国民年金保険料の学生納付免除,学生特例制度の追納免除を先にすべきではないかと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?