ぱぷりか対談企画|福名理穂のルーツvol.1 対談相手:森元隆樹さん(三鷹市芸術文化センター演劇企画員)

ぱぷりか主宰・福名理穂の演劇のルーツをさかのぼる対談企画。第1弾のお相手は、MITAKA “Next” Selectionを企画している三鷹市芸術文化センターの森元隆樹さん。福名との出会いから、選出の経緯をお話しいただきました。MITAKA “Next” Selection選出を目指す方も必見です!

―MITAKA “Next” Selection選出への経緯

森元:最初に会ったのは、劇団『はえぎわ』の三鷹公演の際に、演出助手としていらっしゃった時ですね。今よりも洗練されてないというか、オシャレとか気にしてませんって感じで、ただ、とにかくギラギラしてたよね。

福名:はい(笑)

森元:「ENBUゼミにいるんです」って。ノゾエ征爾さんの演出助手をしてたんだよね。

福名:そうですね、舞台監督の下につく演出部みたいな感じですね。

森元:演出部にいる人って本当に裏方が好きという人と、いつかは自分で作・演出をやりたいんだけど勉強のために現場にいるっていう人がいて、最初はどっちなのか分からなかった。

福名:なるほど。

森元:そしたら、以前に公演をやったって言われたのかなあ、まもなくやるって言われたのかなあ。それで、自分で舞台作りたい人なんだなというのが分かって。でもあの頃は本当に、なんて言うのかな、日々を懸命に生きてる野良猫みたいな雰囲気があったよね(笑)。

福名:(笑)あ、本当ですか。

森元:なんか必要なこと以外を話しかけると「キー」と毛を逆立てて怒られるんじゃないかっていう、そういう意味での野良猫な雰囲気(笑)。今はちゃんとこう喋れるけど、当時は敬語とかも、結構カタコトだったから(笑)。

福名:そうですね(笑)

森元:自分としては敬語を使ってるんだろうけど、福名さん独自の敬語だなって感じで(笑)。でもお芝居に対する向き合い方とかは一生懸命だと判って、公演やる時はぜひ教えてねと伝えてたら、それからしばらくして連絡が来て、それで観に行ったのが、シアターシャインでの合同公演『sora』(2015年3月)だったんだよね。

福名:あー、そうですね。合同公演。

森元:どんな作品を作ろうとしてるのかも全然知らずに行ったんだけど、いいセリフが随所にあって、嬉しく思いながら観たのを覚えてる。ただ、役者さんの動かし方とか、ストーリーの持っていき方とかに若干都合が良すぎるところがあって、そういうところを全部解消していけば、セリフの角度は面白いから、今後期待できるなあと思った。

福名:ああ、ありがとうございます。

森元:で、次は風姿花伝での『虹の後』(2016年4月)か。

福名:そうですね。

森元:やっぱり同じだね。キラキラッと光る良い角度のセリフはあるけれども、全体を通してみると、もう一息という感じで、全体を指揮する力が弱かったんだろうなあ。特に演出力ということかな。あと、こういうシーンを作りたいから、無理矢理舞台上に二人だけ残るみたいなことがあって。良いセリフがあって、面白くなってきたかなと思うと、車がノッキングするみたいに、ああブレーキがかかるなあ、揺れるなあ、乗り物酔いしそうだなあっていう感覚。

福名:あー。

森元:スーッと運んでほしいんだけど、その辺りがね。で、次はOFF・OFFシアター『こととは』(2017年3月)か。

福名:そうですね。

森元:この作品を拝見した時に頼もしかったのは、一見無駄にみえるセリフを上手に処理できるようになっていたこと。脚本って、全部が全部ストーリーの核心に触れるセリフばかりの訳はなくて、何気ない会話が実は全体を膨よかにするというのは当然ある訳だけど、福名さんの良いところ、すなわちセリフの切れ味とか角度とかは丸くせずに、上手にエンターテイメントとして出せるようになったなあと思いながら観ていた。そして演出力も、舞台全体が一つの集合体というか、筒のような感じで、切れ目なく作る力が付いてきて、最初から最後までスーッと観ることができた。だから、終演後に「三鷹での公演をお願いできますか」と、声を掛けたんです。

福名:ありがとうございます。

―今年のMITAKA “Next” Selectionについて

福名:「NEXT」感が今年は強いですよね、すごく。

森元:そうなのかなあ。まあ、あまりそういうことは考えてないんだよね、
実際。

福名:あ、そうなんですか。

森元:よく、「今年のテーマは?」とか、「今年はこういう劇団を揃えたいとかあるんですか?」とか聞かれるんだけども、そんなことは全く考えてなくて。演劇でもダンスでも、良いなと思った劇団やユニットに出会ったら、声を掛けるだけなんだよね。ある意味、シンプルに選んでる。招聘するかどうかの基準として、その時のお客さんの数とかは全く気にしてなくて、とにかく、自分の目で観て「いいな」と思った劇団にだけ、声を掛けさせていただいてきました。ただ、例えば「ぱぷりか」は偶然3回連続で観られたけど、三鷹にお呼びした劇団の公演と日程が重なっていたりするとどうしても観られないので、なかなか拝見できないという劇団も当然あって。

福名:そうですよね。タイミングもあるんですね。

森元:だから、すべての劇団を観て決めていますなんてとても言えないけど、偶然、観に行けた劇団の中から、自分の目で決めるようにしているといった感じです。観劇数としては年間100本~150本くらいかな。三鷹のホールで年間150公演くらい担当しているので、そのあたりが精一杯です。選ばせていただくにあたっては、脚本・演出・オリジナリティなどをもちろん総合的に判断させていただくのですが、私自身は、やや脚本重視かもしれないです。セリフ的な面白さがないと、大人の鑑賞には耐えきれないと思っています。例えば脚本において、このセリフが面白くないって言われて、じゃあ正解はなんですか、って思う人だと中々「伸びしろ」が難しいかもしれないなあと感じる時はあります。あとは、ストーリーにおける「都合の良い展開」を、どれだけ堪えて書ききれるか。物凄く分かりやすい例で言うと、まあ、さっきも言ったとおり、複数人が舞台上にいて、どうしても次のシーンで二人っきりのシーンが作りたくて、急に「俺トイレ」とか、「ちょっとコンビニ」とか。

福名:あーはい(笑)

森元:もちろん、人はトイレにも行くしコンビニにも行くんだけど、そういうところも安易にせずに、しっかり書ききったほうが脚本が締まるのは確かで。

福名:なるほど。

森元:まあ私がよく言う例えなんだけど、劇団もラーメン屋と同じだと。どういう味のラーメンを作ったらいいですかじゃなくて、まずは自分が本当に美味しいと思えるラーメンを作ることが基本だと。力の限り、本当に美味しいと思えるラーメンを「このラーメンを不味いって言うんならしょうがない」って位の気持ちで作ればいいと思う。店構えがどうとか、トッピングがどうとか、女性に流行るメニューがどうとか考える前に、とにかく自分が絶対に美味しいと思うラーメンを作るのが先だろうと。

福名:そうかもしれないですね。やっぱりどこか媚びちゃったり、寄せちゃいたいのかなみたいなのが見える時ありますよね。

森元:本当に美味しいラーメン屋を見つけたらね、一番自分の仲のいい人に、「三鷹駅から遠いところに美味しいラーメン屋発見!」って連絡すると思うんだよね。逆に「これ、美味しくない訳じゃないけど、どこにでもあるラーメンだよね」ってなれば、お客さんはもうその店には行かないと思う。

福名:そうですよね。私、結構町外れに住んでるんですけど、駅から15分とかかかるラーメン屋さんに行列ができてて。全然有名じゃないのに、そこのラーメンを求めていってるんで。

森元:だからよく、「どうやったらお客さん伸びますかね」とか聞かれることあるんだけど、「まずは自分が心から面白いと思う舞台を作ってください」と。自分がお客さんとして観た時に「これは面白い」と思える舞台を作り続けていれば、お客さんが増えない訳がないと。僕はそう思ってるし、僕なりにそういう良い舞台を作っているなと思える劇団やユニットを少しでも応援できればな、と思いながら ”Next” Selection をやっています。今回『ぱぷりか』が、どういう作品を作り上げてくれるかは分からないけど、とても楽しみにしています。

福名:(笑)頑張ります。

―今後、ぱぷりかに期待することは?

森元:これはもう『ぱぷりか』に、っていうよりは、とにかく良い芝居が一つでも二つでも増えればいいと思う。舞台のアベレージが上がって、面白いものがどんどん出てくれば「自分も演劇を作ろう」「自分も演じてみたい」と思う人も増えるだろうし、お客さんも「面白かったから、違う芝居も観に行ってみよう」となる。例えば、プロ野球って、お客さんがたくさんいるじゃん。

福名:いますね。

森元:マツダスタジアムとかいっぱいじゃん。

福名:カープ強いから(笑)

森元:あそこ3万人入ってるんだよ、お客さんが。東京ドームとかは5万人入ってるからね。スポーツと演劇は違うと思う人もいるだろうけど、何を嗜好して観に行こうと思うかの選択肢として、演劇を観たいというお客さんが、もっともっと増えないかなあと。その思いのうえで、面白い舞台が増えると「自分とは合わなかったけど、これはこれで有りかな」という思いを持ってくださるお客様が増えるんじゃないかなと。お客様が、自分に合う舞台以外でも、舞台の多様性を楽しんでくださるようになれば、本当の意味で膨よかな演劇シーンが生まれると。そういった意味でも、皆が皆、同じになる必要はないから、福名さんにも、まずは妥協せずに、自分が本当に面白いと思う舞台を作ってほしい。そうすれば自然に結果が付いてくると。

福名:そうですね。

森元:後は、例えば今回の『きっぽ』は2500円だけど、自分がお客さんだったら5000円出してもいいっていうものを作った時に、初めてお客さんが2500円に納得してくれると思えれば、緊張感も出てくると思う。それだけの覚悟を持って欲しい。2,500円って凄いからね。回転寿司やファミレスなら豪遊できちゃうから(笑)。まずは自分の持っている感覚、このセリフでは面白くないとか、このセリフではチープだとか、そういう感覚をどんどん研ぎ澄ませてほしい。そしてお客さんに、自分としては良いものを作ったというものを出し続けてね、気付いたらお客さんが増えていたっていうのがいいと思う。お客さんが増えるためにどうするかというようなマーケティング的なことは考えずに、「妥協せずに頑張っていたらいつのまにかお客さんが増えていた」という劇団のひとつに『ぱぷりか』もなってほしいなと思います。

福名:頑張ります。

森元:まずは、三鷹の公演よろしくお願いします。

福名:ありがとうございます。

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【公演概要】
MITAKA “Next” Selection 19th
ぱぷりか第四回公演「きっぽ」
2018年9月7日[金] - 9月17日[月・祝]
三鷹市芸術文化センター 星のホール

<作・演出>
福名理穂(ぱぷりか)

<キャスト>
瓜生和成(東京タンバリン)
川隅奈保子(青年団)
安東信助(日本のラジオ)
板橋優里
橋口勇輝(ブルドッキングヘッドロック)
石渡愛(無隣館)
岡奈穂子(ぱぷりか)
坊薗初菜(ぱぷりか・無隣館) 

▼詳細・ご予約はこちら
http://puprika.wixsite.com/papu/tugi-cm8a


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