ぱぷりか対談企画|福名理穂のルーツvol.3 対談相手:成島秀和さん(こゆび侍)

ぱぷりか主宰・福名理穂の演劇のルーツをさかのぼる対談企画。第3弾のお相手は、ENBUゼミナール時代の恩師・成島秀和さん。上京したてで演劇を学ぶ福名は、成島さんの目にどう写っていたのか。

―出会った頃の印象はどうですか?

成島:ENBUの説明会に来た時のこと覚えてます。

福名:あ、ほんとですか!?

成島:覚えてます、覚えてます。広島からわざわざ来てくれたっていうのも結構印象に残ってましたね。東京なんぼのもんじゃっていう勢い。でも結構びびってる感じもあったかな。

福名:そうですそうです(笑)

成島:東京が怖いからなのか、じっと機会を伺っているからなのかわからないんだけど、じっと見てるなって印象でした。最初の入ってすぐくらいから頼り方とか甘え方がすごく上手だった。「なんとかこの子を伸ばしてあげたいな」と思わせる力があるんだなと思いました。

福名:ありがとうございます。初めて知りました(笑)

成島:それはでも、「どうしたらいいですかね?」とかちゃんと聞いてくれるから。

福名:でもそれはおいおいで、最初は尖ってたと思います。誰にも頼らない、と思って3ヶ月くらいを過ごしてましたから(笑)

成島:初期の頃に、作品作ってみなよって言って、それがあんまりうまくいかなかった企画があったよね?ウゥッ・・っていう記憶があるんですけど。

福名:そうですねえ、ウゥッ〜。

成島:もうちょっと面白いものを観られるのかなと思ったら、まだそこまで形になってなくて。借り物の何かをやろうとしてるところがまだあった。自分を良く見せたい、というか。

福名:そうですそうです・・・。

成島:そういうものもちゃんと作った上で、でもそれが評価されずに、次に繋がっていくのが・・お母さんの・・。

福名:ああ、一人芝居ですか。

成島:落ち葉を踏みしめるやつ。それがとっても良かった。

福名:あれはそうですね。よく褒められる作品です。

成島:自分のパーソナルなちゃんと部分を出す、ということにきちんとシフトできた作品だったよね。

福名:同期のオカダっていう女の子が人に気さくに頼れていて、それがいい事のように見えていたんです。その子が結構パーソナルな部分を書く子だったというのもあって影響されたのかな。お題が、3分間の一人芝居だったので、1シチュエーションの作品にしました。当時の、一人暮らしする自分と家族の距離みたいなものをなんとな〜く書きました。「すごく恥ずかしいな」って初めて思いながら書いたのを覚えています。

成島:あれはみんなすごいなって言ってましたよね。

福名:すごく褒めてもらいましたね。なので、そこまでやらなきゃいけないんだなと、その時にすごく感じた作品でした。

成島:ちっちゃな挫折とかはあったんですか?

福名:ちっちゃい挫折は・・・たくさんありましたね(笑)。

成島:福名さんはなにくそ!みたいな感じでちゃんと言うからね。一人で勝手にどよ〜んと落ち込まずに。

福名:そうですね、それが嫌な子もいたでしょうけど。でも若さですかね、顔に出ちゃう(笑)。

―演出家としての福名は?

成島:パーソナルな生っぽい作品に急に切り替えて、それを同じクラスの子にとにかく求めてたじゃないですか。「それは演技が嘘だ、嘘だ」って言って。

福名:やってましたねえ、はい。

成島:それを求めるかぁ・・・と思って。

福名:今でも、変わらず(笑)劇団員の坊薗さんも「りほちゃんはすごく難しいことをやってるよ」って言われます。でもあれがやってて一番楽しかったですね。やっぱ大変そうに見えました?

成島:すっごい大変そうだった(笑)でもやり終わった後に「あ、これ伝わったんだ。報われたな」っていう達成感みたいなものが役者にはあったと思う。他の作品よりもそれが強い。俳優の方々も得難い経験をしてたんじゃないかな。いや〜ただもう本当にずっと一緒のこと言うじゃないですか。

福名:部屋暗くして(笑)誰も入って来て欲しくないオーラ出して(笑)

成島:そうそうそう(笑)でもそれを今でも続けられてるっていうのは、ちょっとずつ演出家としての言葉を獲得してる証だと思う。

福名:そうだといいんですけどね。

成島:一緒にやっている俳優さんも、きっと共通言語がある方なんだろうけど、本当にすごいキャスティングするよね。

福名:本当に、本当にありがたい。皆々様の力、ってのがすっごくあるキャスティングです、今回。

成島:好きな俳優さんがちゃんといて、その俳優さんもちゃんと福名さんの作品が好きっていうのが見える。

福名:そうなんです!本当にありがたいなと思ってます。両思いだと信じて頑張ります(笑)

成島:それと、いいものをちゃんといいって思うフィルターがあるよね。

福名:あ、本当ですか。昔から、ですか?

成島:昔から。逆を言うと嫌いなものを嫌いってちゃんと言える。

福名:確かにそうですね。恥ずかしいものが嫌いなんです。

成島:演劇は基本恥ずかしいもの、っていうスタンスでした?

福名:いや、そうでもないです。楽しんでやるものみたいな印象がずっとありました。でも、入ろうした高校の演劇部は恥ずかしかったんです。アニメのキャラクターのコスプレして、自分がやってみたい役をやるようなところで。ちょっときついなって思っちゃった。でも中学校の時にやっていたのはずっと楽しかったからそれがベースにある。なので、単純に恥ずかしいな、なんか印象に残らないな、って思っちゃったものはもういいかなって。

成島:結構ズバって言うよね。怖い子だよ(笑)。

福名:上京したてのときは、結構舞台観に行きました。なんで印象に残らないんだろうっていう思いだけがあったけど、今思えばつまらなかっただけなんですよね。それも分かってなかったので、本当に手当たり次第観てました。あれは成島さんが言ってくれたからなんですけど。

成島:いやいや、言っても行かない人はたくさんいるから。福名さんが上京したばかりの内にたくさん作品を観たことは今に繋がる大きいことだと思う。当時観たもので印象に残っているものはあるんですか?ノゾエ征爾さん(劇団はえぎわ)のことはとにかく好きなんだなって印象はあったけど(笑)

福名:そうです、とにかく、とことん(笑)。観た後に、演劇やりたい!って思えるんですよね。そこは揺るぎないです。当時印象に残ったもの・・・(笑)

成島:(笑)

福名:それこそ、他の舞台観に行くよりも同期のオカダの作品観る方が楽しかったですね。オカダの作品は内側からじゃないと発散できない感情、っていうものを重視してたと思います。近いような作風の売れてる劇団とかを観に行って、どうしたらこんなことできるんだろうって思ってました。

成島:意外とオカダの存在が大きかかったんですね。

福名:だいぶデカかったですね。今やってないんですけど。

―余談・・・

成島:あと、ENBU時代で覚えたのは、とにかく小田和正が好きなんだってこと。

福名:そうそうそう(笑)

成島:こんなに尖ってるのに小田和正が好きなんだっていうギャップは本当にみんな覚えていたと思います。

福名:一番好き。揺るぎなく。観に来て欲しいんです、本当に(笑)。どうしたら観に来てくれるだろう。

成島:事務所の人に手紙を送り続けるしかないですね。

福名:そうですね。劇団員に言ったら「うるせぇ。ふくなりほとして動いてください」って言われました(笑)

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【ゲスト情報】
成島秀和さんが主宰する劇団の公演情報です。
こゆび侍
第15回本公演「さよならはここにいる」
2018年11月7日[水] - 11月18日[日]
花まる学習会 王子小劇場

▼詳細は劇団HPにて
http://koyubizamurai.wixsite.com/koyubi
【公演概要】
MITAKA “Next” Selection 19th
ぱぷりか第四回公演「きっぽ」
2018年9月7日[金] - 9月17日[月・祝]
三鷹市芸術文化センター 星のホール

<作・演出>
福名理穂(ぱぷりか)

<キャスト>
瓜生和成(東京タンバリン)
川隅奈保子(青年団)
安東信助(日本のラジオ)
板橋優里
橋口勇輝(ブルドッキングヘッドロック)
石渡愛(無隣館)
岡奈穂子(ぱぷりか)
坊薗初菜(ぱぷりか・無隣館) 

▼詳細・ご予約はこちら
http://puprika.wixsite.com/papu/tugi-cm8a

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