もぎゅもぎゅ

私は白くてやわらかいものを食べている。

それは口いっぱいに頬張ると、もぎゅもぎゅと音を立てる。

餅のようによく伸びるが、餅より軽くて味が薄い。白い粉がかかっている。実際のところ、私はこれが何なのかを知らない。家の食卓に置いてあったので、口に含んでみたのだ。見かけは安い四角いまんじゅうのようだった。そいつはほんのり甘くて、美味だったので私はいくつも食べた。しばらくするとそいつでお腹が膨れたので、ソファに横になった。いくつかあったうちの半分以上食べてしまったが、大丈夫だっただろうか。やつはきっと和菓子である。それは間違いないのだが、中にあんこも入っていないしなんと呼べばいいのやら。とりあえずネットで検索してみる。

「まんじゅう　あんこ入ってない」と打ち込んでエンターキーを押す。画像検索で見てみたがやつと同じ形状のものはなかった。形に囚われているから分からないのかもしれない。さっきまで口の中に感じた食感を思い返してみる。

無難に「やわらかい　白い」で検索してみる。当然、検索結果は的はずれなものばかりで、もはや食べ物でないものも多かった。セーフサーチを中にしているにも関わらず、最初に検索でに引っかかった結果は「ウェイトレスのやわらかい白い肌」という動画だった。モニターの前で思わず失笑した。世の中はエロスで満ち溢れている……。

気を取り直して「もぎゅもぎゅ」で調べてみる。やっぱり見つからない。ため息をついて携帯に目を落とすと、新着メールが一件。彼氏からだった。メールの内容は他愛のないもので私はそのメールの返事と一緒にやつのことも尋ねてみることにした。

「餅みたいな白い粉のかかってる和菓子ってない？」と売って送信。すぐに返信は来た。「牛皮」の一文。
え、牛の皮？わからん、わからんぞ貴君。「うしのかわ？」と返信すると「うん」と短い返事で返ってきた。半信半疑で「牛皮　和菓子」で検索してみる。出てきた。「求肥」というお菓子らしい。餅の一種であの雪見だいふくの外側でもあるらしい。なんと、家で餅粉があれば作れる。得体のしれない白いもぎゅもぎゅは意外と身近であった。