水彩世界から始まる四字熟語曲における「103期スリーズブーケ」の一貫性について

僕「(大きめの声)」

(大きめの声)「僕」

今年も隣人からの16ビートの壁ドンが来ました。

前回、眩耀夜行について気の狂った文章を書いたのですが、一通り考察し終えてから水彩世界、謳歌爛漫、そして千変万華の歌詞を見直しました。すると1つの一貫したスリーズブーケの主張を感じ取ったので、情報整理と情報共有をしたいと思います。そんなに長い文章にしないつもりです。リリース順ではなく、個人的に話しやすい順番で書いていきますので、そこはご容赦ください。


1. 眩耀夜行

細かいお話は前回記事をご参照ください。

ここで触れたのは加賀友禅灯ろう流しとの結びつき。それに起因する時間的な接続、『生者と故人』についてお話です。灯ろう流しは故人を弔い、海を超えてあの世へと送り出す儀式です。眩耀夜行ではこの儀式を使って何を弔っていたのか、に焦点を当てました。簡単にこの記事の結論を述べますと、『生者は未来・現在の自分、故人は現在・過去の自分。未来へと歩みを進めるためには、現在・過去の自分と別れを告げ、変化していく必要がある。けれど、現在・過去の自分を捨てた訳じゃない。大事にしているんだ。』です。この「未来・現在のために、現在・過去を大事にする。」というのは四字熟語曲のテーマの1つであり、『103期 スリーズブーケ』のスクールアイドル活動における1つの軸である、と私は感じました。この先は「未来・現在のために、現在・過去を大事にする。」を軸に、水彩世界、謳歌爛漫、千変万華について考えていきたいと思います。

2. 水彩世界

さて、水彩世界の時点から時間的接続の話はちらほら垣間見えております。言いがかりをつけていきましょう。

(1A)
筆先を濡らした水が
バケツの中濁るように
ひとりで悩んでいた 放課後のこと
下手くそすぎる未来図と
タイトルのない感情と
未完成な自由を 描いていた
(1B)
不思議ね、今ならわかるの
ひとりじゃないんだ
信じてみたい True heart

水彩世界 1A-1B

まず、1Aについてですが、よくよく読むと『未完成な自由を 描いていた』と過去形で書かれております。過去の自分は先の将来や自身の感情などを上手に考えることができていなかった。けれど今なら大丈夫と思えている。『ひとりじゃないんだ』と読むことができます。私はこの『ひとりじゃないんだ』を穿った視点で見ています。これはスリーズブーケのお互いを指して『ひとりじゃないんだ』と言っているのではなく、過去の自分たちもついているから『ひとりじゃないんだ』と言っていると感じております。『下手くそすぎる未来図』や『タイトルのない感情』、『未完成な自由』はどこに保存されているのか。そう心です。だからこそ『信じてみたい True heart』と自分の心に聞いているのかなと感じています。崩れそうなとき、落ち込みそうなとき、彼女は彼女たちは自分の出発点(過去)を見直しているのではないでしょうか。

(2A)
余白だらけの一日も
ただ過ぎて行く一秒も
宝物になるんだ 君となら

水彩世界 2A

どんな瞬間でも大事にするんだという強い意志を感じますね。
で、水彩世界の振付を眺めていた時に思ったのですが、ここの『君となら』で、乙宗梢さんが日野下花帆さんの肩をトンってします。この『君』というのは純粋に花帆さんを指していると捉えてもよいのですが、花帆さんの「蓮ノ空で花咲きたい」という気持ちと「幼いころのスクールアイドルに憧れた自分」を重ね合わせているのではないかと感じました。大きな舞台で花咲くんだという根っこの部分は同じでそれを無垢に表現できる日野下花帆さんに対して乙宗梢さんは憧憬の念があるのではないでしょうか。花帆さんに幼い頃の自分を重ね合わせるという時間の接続ですね。

3. 謳歌爛漫

(Intro)
ひらひらと舞い散るのは
幾千の刻の欠片たち
願いよ今こそ花となれ
この季節と共に

謳歌爛漫

はっきりとは明示されておりませんが、おそらく桜や桃などのなにかしらの春の樹木とその花びらを刻の欠片と呼んでいますね。ここでも水彩世界の『一秒』や『一日』ように『刻』という時間の単位を使って人生においての刹那的な描写とその儚さを歌っております。またその儚さを花になぞらえて一瞬でも自分の思いが花となって実を結んでほしい、そんな願いが含まれております。また願いとは使い捨てのものではなく、ある時々において繰り返し希い、希ったからこそ生まれた想いの結晶(花)という考えもあるのでしょう。

(1B)
探そう 探そう 自分だけの音を
咲かそう 咲かそう 声なき声も
枯れない想いに嘘をつかずに
生きよう いろは歌のように

謳歌爛漫 1B

いろいろ眺めてますと、自分の想いのことを『声なき声も』のように描写しているのがちらほら見られますね。
さて、このセクションでのミソは『生きよう いろは歌のように』です。

『色は匂へど 散りぬるを』
『我が世誰ぞ 常ならん』
『有為の奥山 今日超えて』
『浅き夢見し 酔ひもぜず』

いろは歌

『花は咲いても散ってしまうのに。永遠に同じ姿でこの世に生き続ける人もいない。つらく・きびしく・険しい人生という山を今日も一つ乗り越えて 酔っ払っているかのように、真理から目を背け、はかない夢を見ないように』生きようとしています。眩耀夜行でも話した、「成長による現在の自分との別れ」もここにリンクしてくると感じております。またおそらくですが、花帆さんの『ここ(蓮ノ空)で花咲きたい』に対する警告も明示されているのかなと感じております。『娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。』とはよく言ったもので、ここで花咲いた後のあなたはどうしたいの?という疑問提起をしているように感じました。しかし、別に問題提起で終わらずに、こうも思っているのでしょう。

お大師様の残された『いろは歌』には、無常である人生を一生懸命生きて、年を取ってもそれぞれの色がついた「自分の花」を咲かせて、喜びにあふれた満開の人生を送ってほしいという願いが込められているのです。

いろは歌 解説

現にこの歌のラストもこのように締められております。

駆け出すその先にあるのは
涙じゃない 信じてみたい
淡い色に染まる そんな日々を
満開の空の下 私の夢を

謳歌爛漫 3C

濃い色ではなく淡い色というのが、年越しそばの細く長くという言葉遊びのような慎ましさを感じますね。

4. 千変万華

こちらの曲は謳歌爛漫そしてなにより水彩世界とかなり密接な関係があるように感じますね。

千の花閉じ込めた 万華鏡に
重ねて見えたそれは 愛おしい日々

千変万華 1A

謳歌爛漫の頃は花びらだったものが、今回は花になっています。大小さまざまあれど、過去が積み重なりだんだんと結果に結びつき始めているという風に感じます。
そして一段と目を引くのはここです。

放課後の教室で 描いた未来
タイトルも決まった 「新しい私」

千変万華 1A

そうですね。水彩世界では『ひとりで悩んでいた 放課後』で『タイトルのない感情』を描いていたんですね。私、この曲聴いた瞬間に「スリーズブーケの最終回か?」と思ったのが記憶に新しいですね。

次に時間的接続のお話。

雨と太陽 どちらかだけじゃ 
虹は出ない
笑いあって 泣いてきたから
輝いているんだよね

千変万華 1B

「え????????????????????????????????スリーズブーケ最終回???????????????????????」
(大き目の声)

時に笑って、時に泣いてきたから””輝いて””いるんですね。

また別作品にはなりますが個人的には「1・2・3」の好きなフレーズがあって、

レッツゴー
雨上がりでなくちゃ
レッツゴー
晴れ間に虹はない
あの日から気づいている

1・2・3 2C

これかなりあたり前の因果関係のことを書いている歌詞なんですが、この「当たり前を言語化」「詩に起こす」という行為がいかに難しいことか。日々そういうところにアンテナ張っていないと言葉にすることも難しいんですよね。そして103期スリーズブーケはそれができているんですよね。これができているのは、水彩世界に始まり、日々の小さなところに重きを置いて、日々を慈しんで生きてきているからだと思っております。

線を引いたその前に 立ち止まって
正しいと読むなんて もう思わない
春夏秋冬 変わり続ける それと同じ
悩んだって 乗り越えたから
違う景色があるんだね

千変万華 2A-2B

2サビがないことに喜びを感じがちなここのセクションですが(2サビない曲は良曲とされているので)、ここでも時間的な接続、未来と現在と過去の接続が垣間見えます。悩んで乗り越えてきた過去があるから、現在または未来で違う景色が待っているんですね。またキーワード「変わり続ける」が出てきましたね。スリーズブーケは変化を望んでいるんです。しかし、水彩世界で悩んだ過去があったからこそ、千変万華がある。謳歌爛漫で過去を慈しんだからこそ、千変万華がある。眩耀夜行で過去を思いやったからこそ、千変万華がある。彼女たちは過去を見捨てずに向き合っているのです。だからこそ、ラスサビに繋がります。

ほらまた一つ 花が咲いた
小さな 夢が咲いた
花束みたいな世界の中で
その彩りが 心(ここ)にあれば
隣に 君がいれば
頑張れる気がしてる また

千変万華 3C

私はこの『君』というフレーズは過去の自分を指しているのではないか、と改めて感じました。

App. 素顔のピクセル

さて、公式でスリーズブーケ伝統曲を明言されているのは現状(2024/1/10時点)「素顔のピクセル」のみと認識しています(間違ってたらごめんなさい)。なぜ、ラブライブ!地区大会の前振りであるFES×LIVEでこの曲を選択したのか。しかし、この記事を一通り読んだ危篤な皆様には自明でしょう。やはり時間的接続と過去の一瞬を永遠にしようというマインドからですね。歴代スリーズブーケがどのような考えの持ち主でいたのか、そのようなことを考えるとまた記事が書けそうですね。でも、無垢に楽しみたいのでまた続報を待ちたいと思います。

結び

おそらく四字熟語曲で一番難解なのが眩耀夜行の扱いだと思います。いかんせん時間的接続が一番難しく描かれているような気がしますので。
103期スリーズブーケに残された時間は後3か月。昨年の結果を踏まえて、最後にどんな曲を産み出してくれるのでしょう。とても楽しみですね。


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