沈黙が続いたイヤフォン

物語のなかで曲を流してみるというテーマのアカウント。理屈っぽい主人公が多いようです。

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  • NiziU/Make you happy

    NiziU Pre-Debut Digital Mini Album『Make you happy』が、小説のなかで流れたら

  • ヨルシカ/盗作 が、小説のなかで流れたら

    ヨルシカのアルバム『盗作』が、小説のなかで流れたら

記事一覧

NiziU/Boom Boom Boom が、小説のなかで流れたら

体をふるわせる低音が、2発ずつで倍速になっていく。すでにこの音が、タイトルのとおり「Boom」と鳴っているようにきこえる。 上昇していく効果音にさそわれ、4つ打ちの…

菅田将暉/まちがいさがし が、小説のなかで流れたら

サイゼリヤの「まちがいさがし」の「間違いの方」はどっちだろう。 ビートルズの「レット・イット・ビー」でも歌えそうなピアノ。歌いだしたのは、太さと爽やかさをあわせ…

ヨルシカ/爆弾魔(Re-Recording) が、小説のなかで流れたら

《死んだ眼》《爆弾》と、のっけから物騒な言葉を投げつける。ギタリストにタイミングをあわせるドラマー。ハイハットは細かく細かくきざんでいく。 《さよならだ人類》《…

King Gnu/白日 が、小説のなかで流れたら

かすれた倍音、呼吸までもがマイクにひろわれたファルセット。分散されたピアノの和音がかたまりになっていき、デジタル処理されたビートが入ってくる。 生感のあるフィル…

NiziU/Baby I'm a star が、小説のなかで流れたら

歪んだギターのリフと呼応する、ストロングなかけ声。飲み会のコールのようでもありながら、他人へではなく、《もっと もっと 光るよ》《全部 全部 魅せるよ》と「自分…

ヨルシカ/春ひさぎ が、小説のなかで流れたら

前曲のハードさを引きつぎながら、ギターの存在感はピアノにチェンジ。脇役となったギタリストは、裏拍にカッティングを入れる。 2回しめからは、ピアノも裏に和音をかさ…

瑛人/香水 が、小説のなかで流れたら

アコースティックなギターが爪弾かれ、木製のボディを叩くビートが歌声のノリをささえる。エクストリームの「モア・ザン・ワーズ」がよみがえったかのようだ。ギター1本と…

TWICE/MORE&MORE が、小説のなかで流れたら

揺れるシンセサイザーの和音のうえ、耳なれない声は韓国語だろうか。その国のメンバーがいたような、という先入観はあった。 本格派に聴こえていたところに、かわいらしさ…

嵐/Love so sweet が、小説のなかで流れたら

ハイハットの合図で、ひとり演奏しはじめるピアニスト。支えるバスドラムにリムショットがくわわり、お手本のように8小節でフィルインへ。 《Wow oh oh》のコーラスに、…

ヨルシカ/昼鳶 が、小説のなかで流れたら

ファンキーなギタープレイは、サムライギタリストことMIYAVIがプレイしているかのような切れ味で、いよいよアルバムの本番かと、僕らの意識を引きこむ。 生々しいリ…

back number/高嶺の花子さん が、小説のなかで流れたら

厚みのあるストリングスが、悲しげなメロディを奏でる。B'zの「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」に似たなつかしさ。 バンドサウンドになると、エフェクトを…

DAOKO×米津玄師/打上花火 が、小説のなかで流れたら

和風のアルペジオに、白玉でコードを動かしていく伴奏。ピアノが上手なクラスメイトのあの子を思い出す。きっとかんたんに音を聴きとって、両手で弾きこなしてみせそうだ。…

NiziU/Make you happy が、小説のなかで流れたら

テンポとリズムパターン、空白をいかしたアレンジ、さらにその歌声から、映画『SING/シング』を思いだす。踊りながら歌っていた母豚ロジータ。デュエットをしていた相手の…

BTS/Stay Gold が、小説のなかで流れたら

まるで発声練習のように、ピアノのうえで自由に舞うファルセット。地声でノリをつくり、喉を絞めたラップが後を継ぐ。子守唄も歌えそうな伴奏に、《今宵も眠らない》という…

DISH///猫 が、小説のなかで流れたら

イルカの「なごり雪」でもはじまりそうなピアノとストリングスから、甘い歌声が聴こえてくる。《夕焼けが燃えて この街ごと飲み込んでしまいそう》という鮮やかなイメージ…

ヨルシカ/音楽泥棒の自白 が、小説のなかで流れたら

カチャリ、というスイッチ音から、ジリジリとノイズが流れる。アナログレコードを模した演出だろうか――いや、同時に鳴っている音は、フィルムを回す映写機のように聴こえ…

NiziU/Boom Boom Boom が、小説のなかで流れたら

NiziU/Boom Boom Boom が、小説のなかで流れたら

体をふるわせる低音が、2発ずつで倍速になっていく。すでにこの音が、タイトルのとおり「Boom」と鳴っているようにきこえる。

上昇していく効果音にさそわれ、4つ打ちのベーシックなAメロへ。《欲しい 大音量の》と歌っていながら、その声は淡々としている。

業を煮やしたかのように切りこんでくるハードなラップ。だんだんと喉をしめていき、半ばシャウトのような《WOW!》へたどりつく。

「まあ落ちつけよ」

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菅田将暉/まちがいさがし が、小説のなかで流れたら

菅田将暉/まちがいさがし が、小説のなかで流れたら

サイゼリヤの「まちがいさがし」の「間違いの方」はどっちだろう。

ビートルズの「レット・イット・ビー」でも歌えそうなピアノ。歌いだしたのは、太さと爽やかさをあわせもった声だ。

フォークソング的なメロディのつながりは、そうした時代のチャゲアスの曲のようでもあるが、あれは何というタイトルだったか——。

ああ、「男と女」だ、と思いだすのとほぼ同時に、《けど》の2文字が低音におちる。こうくると、202

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ヨルシカ/爆弾魔(Re-Recording) が、小説のなかで流れたら

ヨルシカ/爆弾魔(Re-Recording) が、小説のなかで流れたら

《死んだ眼》《爆弾》と、のっけから物騒な言葉を投げつける。ギタリストにタイミングをあわせるドラマー。ハイハットは細かく細かくきざんでいく。

《さよならだ人類》《みんな吹き飛んじまえ》と、さらに物騒な言葉がつづくけれど、「さよなら人類」の【たま】を思いだしてファニーな気持ちにもなれる。

ツインギターがひらひらと、和風にハモるメインフレーズ。疾走するリズムにシンプルな3コード。この曲をキラーチュー

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King Gnu/白日 が、小説のなかで流れたら

King Gnu/白日 が、小説のなかで流れたら

かすれた倍音、呼吸までもがマイクにひろわれたファルセット。分散されたピアノの和音がかたまりになっていき、デジタル処理されたビートが入ってくる。

生感のあるフィルインで、バンドサウンドへ。ギタリストがワウをきかせて浮遊感をだす。ヴォーカルのファルセットはユニゾンで支えられ、ギターのフレーズもメロディをガイドする。

サビになるとそのメロディは、オクターヴの上下でサンドウィッチされる。聴きかたによっ

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NiziU/Baby I'm a star が、小説のなかで流れたら

NiziU/Baby I'm a star が、小説のなかで流れたら

歪んだギターのリフと呼応する、ストロングなかけ声。飲み会のコールのようでもありながら、他人へではなく、《もっと もっと 光るよ》《全部 全部 魅せるよ》と「自分」を鼓舞する。「ライク・ア・スター・イン・ザ・ナイト」と、聴きとりやすいカタカナ英語。ギターの音づかいは、ももいろクローバーZのうしろで弾かれていた布袋寅泰のフレーズを彷彿とさせる。

イントロからの独特なリズムパターンにのるAメロ。4つ打

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ヨルシカ/春ひさぎ が、小説のなかで流れたら

ヨルシカ/春ひさぎ が、小説のなかで流れたら

前曲のハードさを引きつぎながら、ギターの存在感はピアノにチェンジ。脇役となったギタリストは、裏拍にカッティングを入れる。

2回しめからは、ピアノも裏に和音をかさねる。ドラムはスネアのゴーストノートやハイハットのきざみで3連のグルーヴに。

高音から低音までワンフレーズで行き来するAメロ。《どうしたんだいそんな顔してさぁ》に《別にどうともないよ》と一人二役。楽器隊はイントロのプレイを淡々とつづけて

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瑛人/香水 が、小説のなかで流れたら

瑛人/香水 が、小説のなかで流れたら

アコースティックなギターが爪弾かれ、木製のボディを叩くビートが歌声のノリをささえる。エクストリームの「モア・ザン・ワーズ」がよみがえったかのようだ。ギター1本と歌のみのチャレンジ。

《あの頃》と過去をふり返り、《でも見てよ今の僕を》と相対化する主人公は、すでに3年後にいる。《空っぽな僕》と自虐的になるのは、思い出のうつくしさがあるからだ。

サビで耳にとびこむ《ドルチェ&ガッバーナ》。振りきった

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TWICE/MORE&MORE が、小説のなかで流れたら

TWICE/MORE&MORE が、小説のなかで流れたら

揺れるシンセサイザーの和音のうえ、耳なれない声は韓国語だろうか。その国のメンバーがいたような、という先入観はあった。

本格派に聴こえていたところに、かわいらしさのある声が「HEY!」と煽り、アイドルソングの文脈であることを主張する。

ソロの歌い手に引きつがれていくメロディ。日本語でないおかげで、本格派に聴こえていたのかもしれない。

タイトルを連呼するサビは、意味のとおりに「もっともっと」と積

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嵐/Love so sweet が、小説のなかで流れたら

嵐/Love so sweet が、小説のなかで流れたら

ハイハットの合図で、ひとり演奏しはじめるピアニスト。支えるバスドラムにリムショットがくわわり、お手本のように8小節でフィルインへ。

《Wow oh oh》のコーラスに、重なりながら追いかける《yeah》。そこに重なりながら追いぬきかえす《Wow oh oh》。その連続から昇る《Wow oh oh》がAメロを呼びだす。

《輝いたのは鏡でも 太陽でもなくて 君》といういきなりのキラーフレーズ。《涙

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ヨルシカ/昼鳶 が、小説のなかで流れたら

ヨルシカ/昼鳶 が、小説のなかで流れたら

ファンキーなギタープレイは、サムライギタリストことMIYAVIがプレイしているかのような切れ味で、いよいよアルバムの本番かと、僕らの意識を引きこむ。

生々しいリズムセクションが加わり、ベーシストがスラップ奏法でギターに重なる。メロディアスなギターにくらべ、ベースは音の存在感に重きをおいているようだ。

Aメロがはじまればそのベースが消え、ギターリフが全体をリードしていく。女性ヴォーカルとしては低

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back number/高嶺の花子さん が、小説のなかで流れたら

back number/高嶺の花子さん が、小説のなかで流れたら

厚みのあるストリングスが、悲しげなメロディを奏でる。B'zの「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」に似たなつかしさ。

バンドサウンドになると、エフェクトをきかせたギターが空間を満たす。ドラマーがタムを交えて勢いをつけると、ストリングスも加わり4発のキメ。

Aメロでは、ギタリストが淡々と8分音符を刻んでいく。《たかが知人Bにむけられた 笑顔があれならもう 恐ろしい人だ》とは、恐ろしい発想

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DAOKO×米津玄師/打上花火 が、小説のなかで流れたら

DAOKO×米津玄師/打上花火 が、小説のなかで流れたら

和風のアルペジオに、白玉でコードを動かしていく伴奏。ピアノが上手なクラスメイトのあの子を思い出す。きっとかんたんに音を聴きとって、両手で弾きこなしてみせそうだ。

フィードバックから入るギター。寄せてかえす波のように、ボリュームノブが操作される。8分音符が8つずつ並ぶフレーズも、浜辺の情景をあらわしているのだろうか。

《あの日見渡した渚を 今も思い出すんだ》と、過去を思い出すことで見つめかえす、

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NiziU/Make you happy が、小説のなかで流れたら

NiziU/Make you happy が、小説のなかで流れたら

テンポとリズムパターン、空白をいかしたアレンジ、さらにその歌声から、映画『SING/シング』を思いだす。踊りながら歌っていた母豚ロジータ。デュエットをしていた相手の声は、トレンディエンジェルの斎藤司だった(ロジータの声は坂本真綾だ)。かれらの歌と同じワクワク感。

《Nothing》と《Something》の耳なれない「th」。ネイティブの発音なのかどうか、生まれも育ちも九州の僕にはわからない。《

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BTS/Stay Gold が、小説のなかで流れたら

BTS/Stay Gold が、小説のなかで流れたら

まるで発声練習のように、ピアノのうえで自由に舞うファルセット。地声でノリをつくり、喉を絞めたラップが後を継ぐ。子守唄も歌えそうな伴奏に、《今宵も眠らない》というリリック。

よりオーソドックスな男声のトーンでフロウが続く。3回し目になると、ドラムマシンは休憩タイム。ここで、それこそ子守唄のようなファルセットのメロディ。

太く響くタム音をきっかけに、タイトルを歌いあげるサビへ。繰りかえす毎にキーが

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DISH///猫 が、小説のなかで流れたら

DISH///猫 が、小説のなかで流れたら

イルカの「なごり雪」でもはじまりそうなピアノとストリングスから、甘い歌声が聴こえてくる。《夕焼けが燃えて この街ごと飲み込んでしまいそう》という鮮やかなイメージ。《この僕も一緒に飲み込んでしまえよ夕焼け》と、比喩は続いていく。《明日ってウザいほど来るよな》も攻めたワードだ。

Bメロでは一転、《家まで帰ろう》と、懐かしい日本の風景が漂う。だけど、夕焼けのシーンで語られていたのは、主人公の別れのスト

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ヨルシカ/音楽泥棒の自白 が、小説のなかで流れたら

ヨルシカ/音楽泥棒の自白 が、小説のなかで流れたら

カチャリ、というスイッチ音から、ジリジリとノイズが流れる。アナログレコードを模した演出だろうか――いや、同時に鳴っている音は、フィルムを回す映写機のように聴こえる。音だけでなく映像まで含んだ物語を、これからはじめるのだという意志が伝わる。

もちろん僕が味わっているのは、あくまでも「音」にすぎない。映像にまで思いを馳せるのは、その昔、余計な「音」を発生させながら映像を流していた時代があってくれたお

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