木に括られた仔象6

高校を辞めたとか、そういうものの前からアタマがおかしくなり始めていたんだ。

身体と心を分離して考え始めた頃からかも知れない。

其れは初めて自分の部屋たる僅かなプライベート空間が出来始めた頃からなのだろう。

夢精はしていたけれど、射精というものが出来なくて、もどかしく感じていた中学二年生の初夏。風呂場にエッチな本を隠し持ってボディーソープの潤滑を使って自慰した時に、体幹を揺らす信じられないゾクゾクしたものだ。あれ以来、おれの身体は何処かおかしくなって仕舞った気がする。それに依って、何かのコントロールが出来なくなったとも言える。

絵を描く、物語を書くに連なって、オナニーをする(マスをかく)という三カクに支配されだしてから何かのバランスが崩れたというか、自分を正常に保つ術が解らなくなった気がする。

性行為が生活の中に組み込まれる様になってからは、生活が激変したとも言える。それまで透明だったものが不透明に、不透明だったものが透明になり世界は、まるで逆転した。隣の席に座っている女の子の自分より大きなお尻が、色っぽいお尻にみえるのである。

今、思えばセックスはしていなくても、あの瞬間から大人への仲間入りをしたのだと思う。

だけれど、その変化について行けるほど、おれの心は強くはなかった。

それを解らないままに、どれだけ迷い苦しんだ事か・・・・。

ああ、十六歳の頃に初めて見た新世紀エヴァンゲリオンの碇シンジくんがどれ程羨ましく思えた日は遠い昔・・・・。

やっていたクスリが切れて精神科に受診に行ったクリニックに新世紀エヴァンゲリオンの1巻が置いてあった事を今でも覚えているよ・・・・。

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