【読書メモ】リーディング業界を予測するルール/池上浩一

〈第1章:ベニスの商人〉

〇日本人は天動説(=自分たちの通貨中心の考え方)をしており、世界と比較し、お金に対する危機感が薄い

⇒世界から日本を見る意識が必要

〇かつては預金で正解だが、今は資産運用の時代

・資産運用で大事なことはリーディング業界を見抜くこと

⇒見抜くためには企業・所属する業界・活動する地域や国・世界の4つの視点をもつ必要がある

・有名な格言「卵を1つのかごに盛るな」=リスク分散

・ドルコスト平均法=一度に投資するのではなく、幾度かに分けて投資する

⇒時間に縛られすぎずに投資が可能

〈第2章:債権取崩国〉

〇かつて米ドルは「ニクソンショック」時に外貨との兌換性を失ったことで、価値を大きく下げた⇒相対的に円の価値があがるきっかけに

〇経常収支(モノやサービス、資本の輸出入)が黒字であれば通貨価値が高い、赤字であれば低い

〇著者が勧める分散投資先はオーストラリア(新興国だが通貨価値が安定)とアメリカ(世界基軸通貨)

〈第3章:世界経済の中心〉

〇2050年の経済の中心はアジア、2020年の世界の中間所得層の5割はアジア

⇒アジアの成長の下支えとなっているのは、高い英語力(TOEFL1位シンガポール、2位インド(0の概念が生まれたのが早く、数字に強い⇒優秀なSE多数))と安い賃金

〇アジアには日本にとってもたくさんのビジネスチャンスがある

・インフラ⇒ユーラシア大陸という一続きの大陸にとってインフラの需要は計り知れないもの(EX:「中国人」ではなく「ユーラシア人」

・観光業⇒日本は「文化」と「自然」という二つの強みをもつ

〈第4章:人口増加〉

〇人口増加は経済成長だけではなくインフレも引き起こす

・人口増加(労働力増)によるGDPの増加は最初、GDPに占める家計の消費率を引き下げる(=はじめは成長を実感できず、投資や貯蓄にまわす人が多い)⇒その段階を経てから消費が活発になっていく。

〇インフレにはリスクだけではなく、ビジネスチャンスも多い

・インフラ⇒中国などで問題になっている水資源(シンガポールや日本に強み)やパイに限りがあるエネルギー業界

〇世界的な食糧難に備え、日本でも農業にやっとテコ入れ

・スマートアグリ(農業のICT化)=オランダをモデル

・6次産業化

〈第5章:フラット化する世界)

〇インターネットの普及のきっかけは米露間の冷戦

・米国がリスク分散のため、情報拠点の分散化を図った⇒はじめは軍事利用に制限されていたが、①国民の税金から負担されており、不満を解消するため②民間の力を借りて発展を加速させるためという二つの理由から国⇒世界へ普及されていった

〇世界のフラット化は5つのきっかけにより進んでいった

・ベルリンの壁崩壊(英語の公用語化)⇒中国・インドの門戸開放⇒オフショアリング(生産拠点を外国に)⇒インフォーミング(Googleなどによる情報の共有)⇒アウトソーシング(海外への部分的な事業委託)

・本社は田舎の方がコストが抑えられてよい場合も(製造業などはフラット化により都会に拠点を置く必要がない)⇒自治体間において、よりたくさんの企業に誘致してもらえるような競争が生まれる可能性

〈第6章:シェール革命〉

〇シェールガスの発掘により中国からアメリカに工場が移転(2012年シェール革命)

・埋蔵量だと1位中国、2位アメリカだが、埋蔵されている土地の発掘に難易度や技術力を理由に、中国は発掘がしにくく、アメリカはしやすい

・プラント業界や造船業界に大きなビジネスチャンス⇒これに関わる業界を見抜く=リーディング業界を見抜く

〈第7章:欧州の衰退〉

〇一言でギリシャ危機といっても勝ち組となった国と負け組になった国がある

・代表的な勝ち組はドイツ⇒ユーロ安により自動車業界の輸出が増加(⇔日本の自動車業界はダメージ)

・統一のユーロという貨幣を使ってはいるものの、国は別々⇒ギリシャを救済することに関する負荷はそこまで大きくない⇒ドイツやフランス、イタリアといった主要国にはそこまで痛手ではない

〇ギリシャ危機=ヨーロッパに投資するのは危ないという発想は誤りで、むしろヨーロッパの勝ち組の国(ドイツなど)やその勝ち組の主要産業はリーディング業界になりえるビジネスチャンス

〈第8章:チャイナリスク〉

〇中国は「世界の工場」としての優位性を失いつつある

・賃金が上昇⇒生産拠点を中国から他のASEAN諸国へ

〇中国の不動産業界の動きは日本の1980年代に通じる

・農村部から都市部への人の流入を受けて都市部の不動産への投資が盛んに⇒価格が上がり、供給が需要を上回る(オランダのチューリップバブルと同様)

・中国の不動産業界は外国資本の投資を規制している+中国は経済的な体力があることから、リーマンショックのような世界的な影響はでないと想定

・中間所得層に響くような事業がリーディング業界

〈第9章:成長戦略〉

〇アベノミクスの第一の矢「大胆な金融政策」で投資や消費を刺激+第二の矢「機動的な財政出動」で災害復興など公共事業の大規模な支援+第三の矢「新たな成長戦略」による民間企業主導による経済促進(観光業・医療など)

〇外国人労働力とどのように向き合っていくかが成長の一つのカギ

〈第10章:火の鳥・日本〉

〇「ロボット」に対するイメージは日本と他国で相違している

・他国は「金属の塊」というイメージでしかないが、日本は「親しみやすさ」を多少感じることができている(手塚治虫の遺産)⇒日本のロボット業界は世界トップレベル

〇「世界の工場」は中国⇒アジア⇒アフリカ⇒ロボットなのではないか

〇大事なことは「日本」と「他国」という見方ではなく、「日本の○○(業界)」という視点をもつこと

・そのためには、企業、所属する業界、国や地域、世界という冒頭の4つの視点をもち、「今」ではなく「10年後」を意識することが重要(=リーディング業界を読み取る)