ポンコツ女は真人間の夢を見るか
スマホがない。
今日の分の記事を書こうと、お昼ご飯を食べに入ったフードコートでスマホを出そうとしたが、見当たらない。
今までも何度か同じようなことがあった。
スマホが黒で、カバンも黒だからよく見失うのだ。
落ち着いて探そう。カバンの中身を一通り出してみる。ない。
記憶を辿ると、宿泊先のホテルで使ったのが最後だ。宿泊カードを書く時に、カウンターに置いた覚えがある。
私のバカめ。なんですぐにカバンに片付けないの!
とりあえず、スマホが無事に保護されているか確認しなければならない。
こちとらドジ歴30うん年。ドジのリカバリーはお手のものである。
さっきお昼ご飯を注文したつけ麺屋の優しそうなお姉さんに、お客様がいない時間を見計らって声をかける。
「あのーすみません、この辺りって公衆電話ないですよねえ、」
お姉さんの顔にはてなマークが浮かぶ。
「いや、あの、スマホをホテルに忘れちゃったかもしれなくて。ホテルにあるか確認したいんです」
優しいお姉さんは、同じく人の良さそうな店長さんに「どこかありましたっけ?」と聞いてくれる。
結局近くには無さそうだったが、商品を渡す時に
「もしかしたら下のバスセンターならあるかもしれません」とお姉さんが教えてくれた。
申し訳ない。お姉さんにお礼をして、急いでつけ麺をお腹に納め、下のバスセンターに行ってみようと思って、ふと気づく。
ホテルの電話番号わからなくね?
ちょっと本当にしっかりしてくれ。番号わからなかったらかけらんないじゃん。
あんたは本当にぼーっとしてるから、と実家の母の声が蘇る。
お母さんごめんよ、娘は相変わらずやらかしているよ。
スマホは無事にフロントに届けられていて、私は事の顛末を今こうして書いている。
今のは一例として、私は基本的に何かしらやらかす。
運転すれば車をぶつけ、お出かけすれば、物を忘れる。
よくもここまで大した怪我なく生きてるもんだ。
いつかドジで身を滅ぼすのではないか。
さっきも映画を見た帰り、スタッフさんに名前を呼ばれた。
私の本名は、苗字にも下の名前にもありえるというちょっと紛らわしい名前なのだ。
「ヨシノさーん(仮名)」
苗字の方のヨシノさんだと思うけど、体が反応してしまう。
お客さんは立ち止まらない。
「ヨシノさーん、いらっしゃいませんかー」
もう一人のヨシノさん、名乗り出てくれ。私なんだかソワソワしてきた。
しかし、誰も立ちどまらず、ほぼ全てのお客さんがシアタールームから出てきてしまった。
この場所にいるヨシノは、どうやら私だけらしい。
ありえないとは思うけど、もしや私か?
絶対違うと思いつつ、おそるおそるスタッフさんに声をかける。
「あの、下の名前じゃなくて、苗字の方ですよね?」
もちろんスタッフさんは、ハテナ顔である。
ああもう、やっぱり違うじゃん。恥ずかしいけどもう引き返せない。
「私、下の名前ヨシノなので。違いますよね、すみませんでした!」
突然自己紹介されて、スタッフさんもさぞ戸惑ったことだろう。
あまりに恥ずかしすぎて、私はそそくさと映画館を後にする。映画の余韻もなにもあったもんじゃない。
もう嫌だ。どうして私は間違った方へ突き進むのか。自らドジる方を選んでどうする。
最近あまりにやらかしすぎて、年齢を言うのが恥ずかしい。
ちょっと前までは、若く見られて嬉しいなと思っていたけど、見た目じゃなくて中身が幼いだけなのでは。これ以上はやめよう。心が折れる。
同級生は子育てしたり、会社で責任のある立場を任されたりして頑張っているのに、私は未だにスマホを無くして右往左往している。
そういや、職場の若い子が、「ドジっ子で許されるのって、10代とか20代前半くらいまでですよね」と言っていた。
もちろん、私に向けた言葉では無い。
だけど、近くで偶然耳にした私は、流れ弾をくらってかすり傷どころか致命傷を負った。
そうだよな、だんだん、ごめーん!じゃ済まされない年齢になってきている。
いい加減しっかりしなければ、と思う反面、ドジをする度に、能天気なもう一人の私が「ラッキー!話のネタゲット!」とニヤついている。
全然反省してないじゃん。だからいい歳してドジばかりするのだ。
もうすぐ干支3周するんだから、いい加減ドジを減らしたい。
私は変わる。今から真人間への道を進むんだから。ノーモアドジだ。
まずは、明日の朝、大事な傘を忘れないようにこれを書いたらリマインドをセットしよう。
それから今度はスマホも忘れない。絶対だ。
今日の一曲
ハッピーポンコツ キュウソネコカミ
一ヶ月書くチャレンジ
四日目「今一番変えたいこと」
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