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音楽日誌_2024年10月21日〜25日

10月21日月曜日くもり肌寒い

Tony Levin
Bringing It Down To The Bass
Flatiron Recordings, LLC

八十路の坂にさしかかりつつあるキング・クリムゾンそのほかで著名なベーシストの最新ソロ。ドラマーの名前を(5分弱も)連呼する「On The Drums」のようなおふざけ半分のアカペラもあるが大半はときに再結成KCを彷彿するプログレフュージョン。#music_journal〈6〉
ミュージックマンつながりで、先だって地味ながら評価の高かったピノ・パラディーノ(いまはもうスティングイレのフレットレスはあまり弾かないようだが)のソロと較べると趣味性と保守性が耳につく。もう八十路だから仕方ないとはいいたくないが。#music_journal〈6〉

10月22日火曜日晴れ昨日から一転汗ばむ陽気

Warren Burt
Mr. Burt His Memory​.​.​.
Holiday Maker Records

ナイマンの『実験音楽』の最後のほうに顔を出す英国の作曲家でカーデュー門下のジョン・ホワイトとクリスファー・ホッブスによる中世〜ルネサンス期を代表する作曲家、ジョン・ダンスタブル作品の演奏に想を得たという在豪州の作曲家による1974年のライブ録音。#music_journal〈7〉
ところがダンスタブルのものと思っていた楽曲はじっさいはトマス・タリスの手になるもので、それがいかな影響を与えるかははかりかねるが、下に掲載するジャケットにみえる囲いの内側から聞こえていたバートの演奏は素朴さと酩酊感が折り重なる無時間的なサウンドだったよう。聞くほどやみつきに。#music_journal
〈7〉

10月23日水曜日くもりのち雨

faust
Blickwinkel(curated by Zappi Diermaier)
Bureau B

各メンバーの別働隊が指のごとく分岐しうごめく現在のファウスト(独語で「拳」の意)よりドラマー主導の班の新作。やはりオリジナルメンバーでサックス奏者のグンター・ヴュストフの参加で、ザッピのビートもその呪術性を遺憾なく発揮している。#music_journal〈8〉

10月24日木曜日くもり

crys cole
Making Conversation
Black Truffle

微細で持続的な音響による作品が得意なカナダのサウンドアーティストの新作で、タイトル曲は昨年発表したサウンドインスタレーションのステレオ版。2018〜19年のバリ島での聴取体験の再現を目したものだが、フィールド録音は未使用。#music_journal〈9〉
楽器、電子音、声とライブラリー音源(鳥の声とか)による構成で、数年前のバリの音響空間の録音物への転写(トランスクリプト)を試みる。完全な再現はむろん不可能だが、そのことがかえって音楽という行為の底知れなさをしめすかのよう。#music_journal〈9〉
概要から鳥の声を曲にしたメシアンを想起するが、構えはケージ寄りで、ボーリングのボールなど、物音による2曲目とそれをMIDIパーカッションに「転写」したら和風になってしまった3曲目など、自己言及/循環的なアプローチはアルヴィン・ルシエ的かも。#music_journal〈9〉

10月25日金曜日くもり時々雨

Various Artists
Why Don't You Smile Now: Lou Reed at Pickwick Records 1964-65
Light In The Attic

パートナー、ローリー・アンダーソンおよびルー・リード・アーカイブと共同で過去音源の編纂〜発表をつづけるレーベルの第三弾はレーベル専属作家だったころの集成。冒頭の「The Ostrich」はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの前身、ザ・プリミティブスの唯一のシングルのA面。#music_journal〈10〉
バンドはこれと9曲目の「Sneaky Pete」の吹き込みのためにレーベル側が集めたものらしく、録音後にルー以外のメンバーはジョン・ケール、トニー・コンラッド、ウォルター・デ・マリアというなんかすごいメンツにチェンジしやがてVUになっていくという、歴史の結節点のような録音物。#music_journal〈10〉
ガレージ、ガールポップ、ティーンポップにわたる曲調はルーのペンの多彩さを物語るが、レコーディングにもときおり参加していたらしく、それっぽいギターのカッティングが聞こえるとハッとする。1960年代前半という時代もあいまって、全体的にガレージ的なのもかっこいい。#music_journal〈10〉


I hope we could be good friends.