見出し画像

小松伊吹と二つのユニットとシンデレラガールズ劇場1178話

気づけば伊吹ちゃんの誕生日である11月17日も過ぎて、ドーム公演も終わり年末になってしまいました。今年は珍しくモバマスで伊吹ちゃんの出番が冬にありそうなので、そちらも楽しみにしている今日この頃です。

ことのはじまり

普段はtwitterで妄言を吐いている私ですが、ただでさえ貧弱な思考が止まるほどに大変な出来事が10月の末に色々ありました。

まずは[ストリートスピリット]吉岡沙紀の登場。[ストリートスパークル]小松伊吹に似た衣装で、二人のユニット衣装なのではという期待を持たせていただきました。

翌日、デレステに[フリースタイル☆ライフ]小松伊吹が登場。待望のSSRが大変すばらしいお衣装だったので、脳内が喜びに満ち溢れていました。そこにもうまともな言葉を出す能力はありません。
そんな幸せの絶頂から2日後。シンデレラガールズ劇場が更新されたわけです。1178話は沙紀ちゃん回。[ストリートスピリット]吉岡沙紀の登場に伴ったお話ですから、[ストリートスパークル]小松伊吹との類似性から、伊吹ちゃんが一緒に登場する可能性には期待はしていたのですが、ふたを開けてみると……

左側に貴女が一緒についてくるなんて予想できるわけがないわけですよ。ねぇ、奏さん。

当時は大変取り乱してしまいまして、いつも以上に浮ついていた私だったんですが、おかげでとても大切なことを忘れていたのです。

このコマ。三人の会話があまりに自然すぎて、最初見た時に何も違和感がなかったんです。少なくとも私にとっては、伊吹ちゃんについて新情報が出たわけでもないはず、だったんですが。

伊吹ちゃんの好みがこの瞬間に奏さんから沙紀ちゃんに伝わったということの意味。それを10月末の私は見落としていました。つまり一コマに三人の関係性についての情報が詰まっていたのです。

・奏さんと沙紀ちゃんは初対面というわけではなさそう
・奏さんは伊吹ちゃんが「恋愛映画好きの乙女であることをよく知って」いて、からかっている
・沙紀ちゃんは伊吹ちゃんが「乙女チックであることを知らなかった、または興味がなかった」
・伊吹ちゃんは奏さんの発言が「まったくのデタラメではない」ので否定はしていない
・沙紀ちゃんは伊吹ちゃんの乙女要素をラブロマンスではなく「少女趣味的」というテーマに寄せた
・沙紀ちゃんと奏さんの間では伊吹ちゃんに関する情報共有はされていなかった
・沙紀ちゃんと奏さんの中にある「小松伊吹」のイメージは違う

多い。とても多い。このコマを受けて沙紀ちゃんと奏さんはタッグを組んで伊吹ちゃんで遊び始めるわけですが、奏さんが来る前の沙紀ちゃんのスケッチブックには一体どんなデザインが描かれていたのか。それは明らかではないですが、4コマ目の伊吹ちゃんは少女趣味的なモチーフが追加されたデザインに対して、こう評価しています。

"いいじゃん、クールかつかわいい!"

その後、奏さんの追加オーダーで恥ずかしいもの寄りになっていきましたが、直前のテーマに追加が入っていくと仮定すると、おそらく元々はクール寄りなデザインだったのではないかと思います。そして、それが沙紀ちゃんの中にあった伊吹ちゃん、もしくは普段の伊吹ちゃんが表に出そうとしているイメージに合うスケボーデッキデザインであっただろうと考えられます。そう、伊吹ちゃんはキュートではなくクールなのです(パッションでは?)

伊吹ちゃん側にいる人から見ると、関係性が比較的強いと思われる二人の間で伊吹ちゃんに対するイメージが異なっていたように見えるのはなぜなのか。今回は過去に遡り、一つ一つ再確認していきたいと思います。もちろん私の独自解釈が大いに入っていることは先にお詫びしておきます。

◇吉岡沙紀と小松伊吹

二人のデビューは一ヵ月違い。趣味がストリートアートとストリートダンス、性格や言動も似ているようなところはありました。

一緒の仕事が入ったのは2012年9月の「アイドルサバイバル in 学園祭」でした。(伊吹ちゃんは忍ちんと呼ぶ)工藤忍ちゃんと三人で学園祭ライブを行うという内容で、特訓前では呼び込みをしたり学園内を散策している様子が見られ、特訓後はライブ衣装となっていました。

この時、二人がそれぞれ相手に対して抱いていた印象はこんな感じです。

沙紀→伊吹
 "伊吹とは気が合うって言うか、もうマブダチって感じっすね!"
 "伊吹はセンスがいいっすね!"

伊吹→沙紀
 "今日の衣装は沙紀のセレクトだよ! 本当にセンス良いんだよねー!"
 "沙紀はセンスあるよ!"

相手を褒めるポイントから、褒め方まで似ている。センスという言葉が合計で3回出てきているあたり、お互いの感性が近いと認識している様子。ただ、おそらくそれぞれの「センス」が意味する内容は別物のようにも見えます。

伊吹ちゃんは衣装のセレクトに関する、ファッションやデザインのセンス。二つ目はいつも通りのダンス脳伊吹さんであれば、ダンスのことです。一方の沙紀ちゃんにおける「センス」もう少し意味がある言葉に見えます。それについては後程ゆっくり考えてみることにして…

伊吹ちゃんの衣装は本人的にも「刺激が強かったかな?」という言葉が出るものでしたけど、衣装のセレクトは沙紀ちゃんでした。そこからも沙紀ちゃんの持つ伊吹ちゃんのイメージを窺い知ることができますね。

次に活動があったのは2015年1月の「第9回アイドルLIVEロワイヤル」でした。二人のユニットアーティスターが生まれた記念すべきイベントでもあります。その時に沙紀ちゃんの中の伊吹ちゃんがどんなイメージだったかが語られています。

沙紀:
 "アレっすか。伊吹さんは、普段から盛り場で踊りまくりみたいな?"
伊吹:
 "あ、あは…そういう場所は、ちょっと…。健全なストリート派だから!"

この辺りのイメージが学園祭の衣装に反映されていたのでしょうか。

ライブでのパフォーマンスは沙紀ちゃんの選曲に伊吹ちゃんがダンスを合わせるスタイル。今回二人に選ばれたのはそれぞれ、ロカビリーとツイスト。

伊吹:
 "さ、さすがに古かったかな? 昔のダンスも、アタシ好きなんだけど"
沙紀:
 "1周するまで、もうちょいっすかね。アートって、そんなもんす"

ライブに負けた時のセリフはこんな感じでした。あくまで自分たちが共通して持っているセンスや表現を疑うことなく、時代が来るのを待っている感じがしますね。そんな二人の気質がユニット名でも表現されています。

さて、沙紀ちゃんが「センスの良いもの」を語る時、よく一緒に出てくるワードがあります。それが感性刺激です。元々ストリートアートをなぜやっていたのか、それをアイドルになってから考え直してある結論を彼女は出しています。

"アタシは最初から自分を表現したくて絵を描いてたんだなーって"

アートとは自己表現、そしてアイドルもまた自己表現が大事。それが沙紀ちゃんのベースになっている考え方です。そして、ダンスも自己を表現するアートの一つだと考えています。

"原始的っすけど、今も進化しつづけるダンスっていうアート"
"ダンスは踊りきって初めてアートとして完成っすからね"
"動きだけのアート"
"全身を使った自己表現っすよね"

そんな沙紀ちゃんには、伊吹ちゃんのダンスバカな部分だけが強い刺激になる。ダンスに自分の全てをぶつけている部分だけを見ていてもおかしくありません。それこそが小松伊吹の強みであり、自己表現が最大化されている部分なのですから。

お互いの感性が無理なく自然にミックスされて、アートに昇華した趣味によるパフォーマンスで自己を表現しきって魅せる。それが伊吹ちゃんと沙紀ちゃんのアーティスターなのだと思います。

ただ、これ以降に二人が組んで登場することはなくなってしまいました。実は劇場での共演もなく、近しい時期に登場するようなことすらなかったので一回きりの登場だったアーティスターの知名度はなかなか厳しい状況です。

1178話での3年半ぶりの共演、しかも初めての劇場共演とユニット用かもしれないお揃いの衣装。今後の動きに期待するしかありません。

◆速水奏と小松伊吹◆

奏さんのデビューは2012年8月。学園祭で沙紀ちゃんと伊吹ちゃんが共演する直前でした。趣味が映画鑑賞ですが、あるジャンルだけは苦手だとセリフで明確に語っています。

"こう見えて恋愛映画は苦手なの。見てて恥ずかしくなるし…"

翌年、それが大好きな誰かさんと出会うことになります。
それが、2013年2月「アイドルプロデュース バレンタイン編」でした。

バレンタインのチョコを作ろうというお料理番組。それぞれ違う理由かもしれませんが、最年少の法子ちゃん以外はどこか料理との縁が薄い感じのメンバーでしたね。練習から本番、終了後までを一緒に過ごしたことになります。その中でお互いの印象をいくつかプロデューサーに向けて話しています。

伊吹→奏
 "奏のやつ、意外と手際がいいのな。こりゃ、実はやるな…"
 "奏にダンス教えたら覚え早くってさ。こりゃ負けられないよ!"
奏→伊吹
 "伊吹ちゃんノリノリだね。見てて楽しいな。ふふ"
 "伊吹ちゃんも法子ちゃんも…なんていうか、個性的ね。ふふ"

個性的見ていて楽しい伊吹ちゃんと、なんでも器用にこなす大人びた余裕のある奏さん。二人の関係性のベースは、既に出来上がっています。また、二人共通の趣味にも関わらず、最も共通しない部分についても語られています。

"奏は恋愛映画は見ないんだ…?"

おそらく「趣味:映画鑑賞」に対して「趣味:恋愛映画を見ること」が突撃していった結果ですね。ただ、ここで趣味の話を終わりにしなかったことがその後の二人の関係性に大きく影響をしていると言ってもいいと思います。

2013年11月。ウェディング関係のお仕事で再び共演をします。劇場はパーティ会場での運命の出会いについての二人の考え方の差を描いています。しっかりとバレンタインでの関係が引き継がれた上で、奏さんが恋愛映画を見ないことを知っていても、その良さを語り乙女なら憧れを持つべきだと語っていました。その後は伊吹ちゃんに訪れたアクシデントから奏さんのペースになっていくわけですが…。
それでもこの後、2018年のアイドル紹介においても「伊吹おすすめの恋愛映画を見せたいアイドル」に選ぶなど、奏さんに恋愛映画を見せるのを諦めることはないようです。

一方で2017年のアイドル紹介で奏さんは伊吹ちゃんを「奏が思う魅惑的なアイドル」に選んでいます。ダンスバカの伊吹ちゃんのことですから、奏さんの前でもダンスはしているはず。ただ、奏さんが魅惑的だと感じているのはそこではないように思えます。この二人の関係において重視されているのは身体による自己表現ではなく、映画鑑賞による感情表現にあるからです。
恋愛映画そのものはともかくとして、運命の出会いとか乙女の素直な感情表現というものについて、奏さんは伊吹ちゃんをからかっていますが、否定をしているわけではないようです。秘密の多い彼女がそれを語ってくれるのはもっと後になってからでした。

続いて二人が共演したのは2015年8月。[セレクテッド]速水奏の登場に伴う劇場でした。ところでこの時の伊吹ちゃんの衣装、いまだにカードになってない気がするんですけど、いつ出ますか?

560話は簡単に言うとエスパーの話で…はなくて、二人の年齢感の話です。制服を着ていてもJKだと思われないことがある奏さんと、奏さんに比べると言動がおよそ年上らしくない伊吹ちゃん。本人ですら年上であることをたまに忘れるということを見透かされて慌てるという内容です。
奏さんはエスパーではありませんが、他人が自分をどう思っているかを感じ取って先回りするように行動するところがあり、そこから人の思考を読むのは得意な印象を周囲に与えています。一方の伊吹ちゃんは単純明快な思考と嘘が下手な性格が合わさって奏さんに対してはまったくの無防備で、内面にある乙女な部分は何もかも知られていると考えてもいいくらいです。

ところで、デレステのアイドルコミュにおいて奏さんはこんなことも言っています。

"夜闇のように謎めいていて……
 だけど、その奥を覗きたくなるだけの魅力があって。
 私、そんなアイドルになっていきたいわ。"

奏さんからすれば伊吹ちゃんを深く奥底まで知るのは簡単なはず。その上で「魅惑的なアイドル」に選ぶというのは奏さんもなかなか恐ろしい人です。奏さんからすれば伊吹ちゃんは奥を覗きたくなるだけの魅力があったのでしょうか。

その後、こちらの二人も組んで登場することはなくなってしまいました。最後にアーティスターというユニットを残していた沙紀ちゃんと違い、奏さんとは劇場での共演は多くとも二人ユニットが存在しないという状態でさらに寂しいものとなっていましたが……

2017年のアイドル紹介を挟んで、2018年3月。ルミナスボーダーというユニット名を冠して「第28回 アイドルLIVEロワイヤル」に登場。3年ぶりの直接共演がいきなりのユニット結成でしたから、私も大変なことになってますね。その後、2018年9月の「第31回 アイドルLIVEロワイヤル お月見SP」にも登場し、一夜の夢でなかったことを証明してくれました。

二人が口にした言葉をいくつか拾っていってみましょう。

伊吹:
 "やっぱ奏って、大人びてるよねー。今のセリフ、映画のワンシーンみたい!"
奏:
 "ふふ。お望みなら、伊吹ちゃんの色気も引き出してあげようか?"

大人びた女性に憧れる無防備乙女な伊吹ちゃんと、その乙女が奥底に隠している色気を引き出し方を含めて理解している奏さんの会話。相手の表現に対する信頼感が見えます。

奏:
 "同じ月を見ていても、心に映すのは別の色…不思議なものね"
伊吹:
 "うん、実感する。だからこそ面白いんだってこともね♪"

お互いの異なる部分を理解し実感して、かつそれを楽しんでいる。そんな関係がルミナスボーダーのベースにはあるようです。

伊吹:
 "せっかくだし、この後は映画観賞会なんてどうかな?へへっ♪"
奏:
 "お付き合いするわ。ちょうど、オススメしたい1本もあるし…ふふ♪"

仲良しか!(取り乱しました)
さらにはライブ中にお互いが見たい映画のジャンルを叫んでいます。
いつも通り「やっぱり、ラブロマンス!」な伊吹ちゃんに対して、奏さんが「ミステリー、ホラー、ファンタジーもどう?」と返しています。相変わらず恋愛映画が苦手なのはそのままのようですが、「ファンタジーどう?」ではないあたりに少し感情が見え隠れしていますね。

恋愛映画との向き合い方についてもデレステのアイドルコミュで語っています。その際、純粋な夢を見られる素直な存在に対する憧れをプロデューサーに問われ、「そうかもしれないわね」と口にしています。自分はそうなれなくても、そういう存在と共に綺麗な夢を作っていきたい。奏さんのアイドルに対する考え方の一端を担うものとして、ルミナスボーダーという映画のような世界観豊かな感情表現を乗せるパフォーマンスで引き込んで魅せるユニットに出会えたのもまた、運命だったのかもしれません。

これからも楽しそうにライブをする二人の姿が見られることを望んでいます。

☆小松伊吹にとっての二人☆

小松伊吹という一人の19歳アイドルが吉岡沙紀と速水奏という二人の17歳アイドルに出会うことで、それぞれアーティスターとルミナスボーダーというユニットが出来上がりました。

アーティスターは磨き上げたセンスをぶつけ合う自己表現のユニット。
ルミナスボーダーは溢れ出る熱と想いで引付ける感情表現のユニット。

ストリートと映画。伊吹ちゃんにとってはどちらも趣味が延長したといえるユニットです。それでも色はまったく異なるものになりました。それは沙紀ちゃんと奏さんが見る伊吹ちゃんがまったく異なるものだったからなのでしょう。

沙紀ちゃんは伊吹ちゃんが普段から発している強みの部分に興味を持ってくれていると思います。だからこそ沙紀ちゃんとのアーティスターでは自分にとっての原点であり、自然と最大限の表現ができるダンスを押し出しています。
一方で、奏さんは伊吹ちゃんが普段見せることがない深みの部分に興味を持ってくれていると思います。そんな奏さんとのルミナスボーダーでは、あまり見ることのできなかった新しい魅力が引き出されていくのでしょう。

小松伊吹にとってのアーティスターは進化、ルミナスボーダーは変化をもたらしてくれるどちらも大切なユニットといえます。

そんな二つのユニット、二組の関係性が交差した1178話は最高だったんだよ、という気持ちまでに至る話を長々をさせていただきました。これからもアーティスターとルミナスボーダーをよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?