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オゾンとオゾン発生器

オゾンとはオゾン層のオゾンのことですが、それが自然界にどのように存在し、また私たちの暮らしのなかでオゾンがどのように衛生に貢献しているかなど。本記事では、学術的なことや技術的なことをあまり深堀りせず、オゾンやオゾン発生器に詳しくない人がオゾンのことをざっくり知ることができる読みやすい記事構成になっています。「オゾンってなんだろう」というあなたの疑問に少しでもお役に立つことができれば嬉しく思います。

1.オゾンとは

オゾンは、酸素分子(O2)からなる天然の物質で、特有の臭気があります。大気中にも存在し、特に成層圏にはオゾン層があり、地球を紫外線から守っています。

1-1.オゾンの特徴

オゾンには次の3つの特徴があります。

特徴①残留性がない
オゾンは、酸化力が強く、脱臭や除菌作用がありますが、反応後は短時間で酸素に戻ります。そのため、残留性がなく、安全性が高いことから厚生労働省が定める食品添加物にもリストされています。
*厚生労働省は、食品安全委員会を設置しており、食品添加物の安全性に関する評価や規制基準の策定を行っています。

特徴②特有臭気(オゾン臭)がある
オゾンは、独特の臭気を持っており、これを「オゾン臭」と呼びます。
人がこのオゾン臭を嗅覚で感じとるのは、個人差にもよりますが一般的には0.02ppm〜0.05ppm程度のオゾン濃度であるとされています。
オゾン臭がどのようなニオイなのかについても、個人の感覚の差があり、一概には言えませんが、「プール消毒のニオイ」「漂白剤のニオイ」「湯沸かし器周辺にうっすら漂うあのニオイ」などと感じる人が多いようです。

特徴③オゾンは耐性菌をつくらない
細菌は、殺菌剤や除菌剤によって消滅の危機にさらされると、知恵を使って生き残ろうとします。その答えが耐性菌です。オゾンは、細菌やウイルスの構造を破壊することにより、耐性菌が発生するをスキを与えません。実際、オゾンに殺菌作用がある細菌に対して、オゾンが効果を示さなくなる事例は存在しません。

1-2.オゾンの効果

オゾンの特徴とは別にオゾンの効果を5つ紹介します。

オゾンの効果①脱臭効果
オゾンは、有機物や悪臭成分を分解し、無臭の物質へ変換することで、優れた脱臭効果を発揮します。タバコの臭いやペットの臭いなど、生活臭の軽減などに効果てきめんです。

オゾンの効果②除菌・ウイルス除去効果
菌とウイルスはまったく別物になりますが、オゾンは菌を除菌し、ウイルスを除去(正確には不活化または不活性化)します。
ここではその効果の範囲をすべて紹介はしませんが、強いエビデンスがある代表的なものは、菌であればサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、赤痢菌、結核菌などがあります。
対ウイルスは、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、肝炎ウイルス、HIV、コロナウイルス(SARS-CoV)、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などが挙げられます。コロナ禍には奈良県立医科大学によって、オゾンが新型コロナウイルスを不活化することを証明という研究が発表され、話題になりました。今では業界内でその研究は「強いエビデンス」として認識されています。

オゾンの効果③害虫忌避効果
オゾンは、害虫の感覚器官に刺激を与えたり、害虫が出すフェロモン物質などを分解することで、害虫が生存しづらい環境をつくります。害虫は、生存しづらい環境にいると、より生存しやすい環境を求めるため、害虫を見かける機会が激減します。これが一般的にオゾンの害虫忌避効果と呼ばれるものです。ハエ、蚊、ダニ、ゴキブリなどの害虫に対し効果があることが証明されています。

オゾンの効果④漂白・脱色効果
オゾンは、色素分子を分解することで漂白効果を発揮します。食品工場や水処理施設での消毒・漂白剤として利用されています。

オゾンの効果⑤鮮度保持効果
オゾンは、食品の鮮度を保つ効果があります。特に果物や野菜の表面に付着した細菌やカビを除去することで、鮮度の持続に役立ちます。たとえば、気体のオゾンを水に溶存させたオゾン水は殺菌効果が高く、残留性もないためカット野菜の洗浄などにも利用されています。オゾン水で野菜や果物を洗浄すると葉物野菜はシャキシャキになり、野菜や果物本来の色鮮やかさも出すことができます。

2.オゾン発生器

オゾン発生器は、空気中の酸素分子(O2)をオゾン(O3)に変換する装置です。オゾン発生器は、脱臭や除菌、ウイルス除去などの効果を利用して、室内環境を快適に保つために使われます。
オゾン発生器は、医療施設、学校などの教育機関、介護施設、宿泊施設業、自動車関連業、不動産業、清掃業、一般家庭やオフィスなどで利用されており、お住まいの地域によってゴミ収集場の設備にオゾンが活用されているケースも増えてきています。
また、最近では、オゾン発生器と空気清浄機2つの利点を合わせたオゾン発生機能付きの空気清浄機なども発売されており、需要は年々高まっています。

2-1.オゾン発生器の仕組み

オゾン発生器は、主にコロナ放電方式と光化学方式の2種類の方法でオゾンを生成します。
コロナ放電方式では、高電圧がかかった電極間に空気を通すことで、酸素分子がオゾンに変換されます。光化学方式では、紫外線ランプを使用して、酸素分子に光を当てることでオゾンが生成されます。

2-2.オゾン発生器には主に2つの種類がある

オゾン発生器には、家庭用と業務用の2種類があります。
家庭用オゾン発生器は、人や動物がいる環境下で使用されます。オゾン発生量は少量で、対象空間のオゾン濃度が低濃度になるように設計されています。
業務用オゾン発生器は、人や動物がいない環境下で使用します。オゾン発生量は多量で、対象空間のオゾン濃度を高濃度にして一気に短時間で脱臭除菌作業を効率的に行うための機器です。

3.オゾンのメリット・デメリット

オゾンは、その特性を活かして様々な場面で使用されていますが、メリットとデメリットが存在します。以下でそれぞれを説明します。

【メリット】

  1. 強力な脱臭・除菌効果があることから、悪臭や細菌・ウイルスの対策に効果的

  2. 残留性がなく、酸素に戻るため環境にやさしく、また安全性が高い

  3. 害虫忌避効果があるため、害虫対策にも役立つ

  4. 漂白効果があり、食品工場や水処理施設、クリーニングなどのシーンでは特に役立つ

  5. 鮮度保持効果があることから、食品の品質維持に貢献する

【デメリット】

  1. 高濃度のオゾンは、人体に悪影響を及ぼす可能性があるため、特に業務用オゾン発生器は正しく理解し、使う必要がある

  2. 特有の臭気(オゾン臭)があり、一部の人には不快感を与えることがある

  3. オゾンは濃度によっては、ゴムやプラスチックなどオゾン耐性が低いものに対して劣化を促進する作用がある

  4. オゾン発生器の購入費用や維持費がかかるため、コスト面を考慮する必要がある

4.オゾンの危険性・毒性・人体への影響などについて

オゾンは適切な濃度で使用されると、多くのメリットがありますが、一定の濃度以上では危険性や毒性が懸念されます。ここでは、オゾンの人体への影響や注意点について解説します。

4-1.オゾン濃度について

日本産業衛生学会では作業環境基準としてのオゾン許容濃度を0.1ppm・8時間滞在と定めています。
ただし、これは人がそこで作業を行う場合です。
つまり、オゾン濃度が0.1ppmの環境に人がいても、8時間以内であれば何ら健康に影響はなく安全であることを示しています。
しかし、オゾン濃度や滞在時間についてそれを超過すると、次第にオゾン臭は刺激臭となり、目の痛みや頭痛を引き起こすなど、健康被害を受ける可能性があります。

4-2.オゾン濃度管理と安全性の確保はどのように行われているのか

オゾン濃度管理と安全性の確保は主に、1) 人やペットにとって安全なオゾン濃度 2) 有人or無人 この2つの要素でなされています。

1) 人やペットにとって安全なオゾン濃度
先に、日本産業衛生学会では作業環境基準としてのオゾン許容濃度を0.1ppm・8時間滞在と定めていると書きましたが、これは、そのオゾン濃度環境で人がそこに滞在する必要性があった場合の安全上の話です。
特に必要性がないのであれば、人や動物が100%安心・安全に、かつ不快な思いをしないオゾン濃度は0.05ppm程度と言われています。
「言われています」と表現が曖昧なのは、個人差があることに加え、基準や決まりがないからです。
ただ、0.05ppmというと自然界では森林の中と同程度のオゾン濃度なので、多くの人たちにとって快適に感じるオゾン濃度だと言えるでしょう。
また、大手家電メーカーやオゾン専業メーカーでも、有人環境で使用するオゾン関連製品についてはオゾン濃度0.05ppmを超過しないように設計(または適用範囲)されています。
ですから、0.05ppm以下は人や動物がいても無条件(滞在時間など)に安全であると考えてまず問題はないでしょう。
逆に、それ以上のオゾン濃度環境であれば、(たとえ日本産業衛生学会が示す0.1ppm以下であっても)人や動物がいないほうがいいということになります。

2) 有人 or 無人
では、その有人・無人の境界線をどのように管理して安全を確保しているのかというと、以下になります。

家庭用オゾン発生器
家庭用オゾン発生器は人やペットがいる環境下で使用します。
適用範囲を厳守することを前提に、空間オゾン濃度が0.05ppmを超過しないように設計されているため、確実に安全が確保されます。

業務用オゾン発生器
業務用オゾン発生器は家庭用とは異なり、多量のオゾンを生成するため、高濃度オゾン環境になります。先に書いたように、0.05ppm以上のオゾン濃度では人や動物がいるべきではありません。
一般的に、業務レベルでは0.3以上0.8ppm未満で除菌、0.8ppm以上で殺菌レベルとされています。
このように、業務オゾン発生器では高濃度環境になるため、作業は必ず無人で行われます。
作業者がそこにいないため、オゾン濃度にかかわらず絶対的な安全が確保されます。

オゾン発生器を使用した際の安全確保はこのように行われています。

オゾンは、適切な濃度・正しい使方で使用すれば多くのメリットがあります。この記事を通じて、オゾンに関する知識や注意点を理解し、安全にオゾンを活用するための基本を身につけていただければと思います。今後も、オゾンの正しい知識やより効果的な使い方などについて皆様に共有できればと思っています。


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