ローコスト住宅革命

自由な人生設計を阻む日本の住宅コスト

 日本では住宅の購入に必要なコストが収入の30%を上回るとも言われます。
生活の基盤として重要な住宅の購入が、人生設計を圧迫し変容させてしまうということがまれではなくなっています。
 建築設計を職業とするものに住宅のコストダウンは、避けられない命題です。
 質を犠牲にせず住宅のコストを抑えることができるかについては、長年試行錯誤を重ねてきましたが、理論的によいと思われる方法も、現実は困難、というより不可能という事が殆んどです。


簡単に言えばローコスト住宅の秘訣は住宅建設のすべての過程で、複雑さを排除してシンプルさを目指すことです。
 ところが日本の現実は法律や伝統のネットがすべての過程を複雑にしていて、シンプルな住宅建設を阻んでいます。

 一方で世界的に見ればローコスト住宅の可能性を根本的に変える出来事が進行しています。


 シンプルな住宅建設の手法、それは巨大な3Dプリンターで建築を作るという手法です。

 3Dプリンターは、個人住宅だけでなく低層の住宅団地、ビル建設も実現させています。

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巨大なプリンターで壁を作る。↑

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ラテンアメリカで進行中の低所得者住宅。 ↑

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オランダの3Dプリント住宅。↑

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ドバイに建設中のオフィス。↑

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中国製の3Dプリント住宅。↑

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自由な発想を可能にする3Dプリント建築。↑

日本で建築建設のシンプルさを妨げる要因をいくつか挙げてみましょう。

1)建築基準法をはじめとする法的基準の厳しさが、建設に必要な手続きを増やし、工期と専門的な人手を増やす要因になる。更に規制をクリア出来る建材や工法が限定されることで選択の自由度が制限されコストダウンの余地が狭められる。
2)法的基準の厳しさにもよるが、一般的には工法が複雑で、多様な建材とそれらを扱う多くの職能技術者を必要とし、建材費と人件費を抑える事ができない。又スケジュールも短縮する事が難しい。
3)日本人の一般的な性向として建築の精度を気にするため、施主、施工者ともに仕上げや納まりにこだわり、職人の専門性や素材のコスト、建設時間の長期化がコストダウンを阻む。

3Dプリンター住宅は上記の問題のほとんどを解決できるといっていいでしょう。

● 人手と工期を必要としない。小規模な住宅の場合、二三人の作業員で一日か二日で建設可能。
● 工法がシンプルなので建築材料にコストがかからない。小規模な住宅の場合数十万円で可能。
● 工法がシンプルなので申請許可や工事にかかる時間も短縮でき、工事にかかわる人員も数人(小規模な場合2,3人、工期も1,2日)で可能。
● 設計の自由度が増え、意匠上の自由度も増す。(安価な工費で意匠的な試みが可能になる。)
 この工法の面白さは意匠的な自由度とローコストの両方が実現出来るということです。
またコストの可能性としては、現在日本で数千万円かかる住宅が数百万円で建設可能になるようです。
 今の日本で最も問題なのが建築基準法をはじめとする法的基準の厳しさです。
地震や台風がある日本では、法規制はその厳しさが建築の自由度を狭める一方で、建築の安全度を高めているという事実は無視できないでしょう。
 こうした基準法の趣旨を尊重するとしても、明らかに可能性を秘めた工法について、世界的にも後手を踏んでいる日本の状況の一因は、法規制の厳しさだけでなく、残念ながらデジタル化という基本的な枠組みでさえ先進各国の後塵を甘んじている、政治と行政の後進性にあることは間違いないでしょう。
 さらに言えば3Dプリンターの導入は、下請けシステムで成り立っていた建設業界の仕組みそのものを変えてしまうという革命的な側面を持っています。そのことが行政を含めて保守的な建設業界の足並みを鈍らせているのかもしれません。
 日本でも何社かの建設会社で研究は進んでいるようですが、まだ商品化には至っていないようです。

 近い将来、3Dプリンター住宅が一般的になることは確実でしょう。その時中国製や欧米製が大勢を占めるというようなことがあれば、日本が誇りとしていた?先進国としての矜持は損なわれることは間違いないでしょう。

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