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2022年の靴

牛床仮靴

牛床、鞄修理をするときに芯材として牛床が使えると数年前に知り値段がかなり安いこともあり靴を作るときのパターンと製甲の手順の確認とフィッティングシューズとして便利だと感じていました。夏に作ろうと思ったスリッポン、履き口を広く取ってしまいデザインとしては良いのだがフィッティングがいまいちな結果となり後付けパッドで履けるようにしたものの根本的に紐靴とは木型が違うことが原因でとりあえずこのデザインで本番の靴を作ることをやめてこの仮靴を生かそうと白のエッジペイント(鞄やベルトのコバに塗る仕上げ剤)を全体に塗ったらまた違う魅力を感じ現在製作中のUフロントの仮靴も同じ仕上げにしました。その牛床で作った仮靴の方が面白いと感じることもあり次回の靴では牛床仮靴のフルハンドを試みてみようかと思っています。あくまでも仮靴であるので底付けのディテールは簡素にしつつそれが安っぽく拙く雑にならないようにしたいと思っています。仮靴なので本番靴は作りますし本番靴あっての副産物みたいな位置付けの仮靴でそういった意味で白は似合う色かと思っています。革は食肉の副産物で作られるものであり牛床はベンズを漉いた使わない方というこれも副産物みたいなもので仮靴も本番を作る上で生まれてしまう副産物みたいなもので偶然に繋がっています。牛床仮靴に関しては最上の革や部材を使うということは全く考えていなく芯材はソール交換のときに剥がした擦り減った古い靴底を使ったりもします。発想はケチから来ているところも多分にあります。近年多くのビスポーク靴職人が出て来てブランドを作りその技術の高さを見て自分でもそれに近づこうと試みるも作る量も違いますし連続して同じ作業をすることで得られるようなこともなかなか出来ない(今年2022年ウエルト縫い付け掬い縫いや手縫い出し縫いによる底付けは一度もやっていない)ことや足についてフィッティングについて圧倒的に敵わないと思うことが多く違うことをしてそれに力を注いだ方が良いのではと思いました。おそらくCap Toe OxfordやDoverなどトラディショナルでごく当たり前にあるデザインの靴を作ることはないでしょう。技術面よりも責任感やプレッシャーや本当にこれで良いのかといった精神的な面で靴を作ることを仕事にするには厳しいと靴を作る度に痛感してしまいます。あくまでも仮靴なので本番を作ってこそ意味あるものだと考えているので二足セットでの製作を続けるつもりです。自分が履いてこそ楽しめることでもありますし木型や型紙をサイズ展開して商品にするつもりもありませんし注文を受けるつもりも今のところはありません。

よく「やらない理由は秒でいくつでも出て来る」と発破をかけているのか自業自得か自己責任みたいなことを言われますが確かにやらない理由があってやらないわけでそれを全てやらない言い訳みたいに思われるのは非常に不快でもあります。靴作りを本業にするには自分にとっては苦しみの方が勝りますし自分が楽しむことを犠牲にしてまでやることかと考えた末でもあります。

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